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インドへの進出事例―M&A事例- 一覧に戻る

1991年の経済自由化以降の外資規制緩和により、多国籍企業のインド進出が拡大してきました。ここでは主に日系企業のインド進出事例と、そこから見える進出のポイントを整理しています。

 

近年のインドにおけるM&Aの動向

活発なM&A ~外資規制緩和に伴うインド進出とインド大手企業の海外進出

  • 1991年の経済自由化に伴い外資規制が大幅に緩和された結果、インドの国内産業は多国籍企業によるインド進出が増加したことで活性化し、国内企業も事業拡大を進めることで生き残りを図ってきました
  • 経済自由化以前でも、例えば自動車業界では、スズキと政府の合弁企業が設立されたことを契機に規制緩和の動きが進み、多国籍企業と国内企業との業務提携等が拡がり始めていましたが、経済自由化以降はIT・通信業界を中心にM&Aが拡大してきています
  • 2000年代になると、IT・通信業界だけではなく様々な業界において、国内競争で鍛えられたインド企業による対海外向けのM&Aが本格化しています

M&A成功/失敗のポイント

進出検討時のポイント

  • インドで実施されたM&Aの過去事例を踏まえ、進出時の検討ポイントや、インド進出後の事業運営におけるポイントの一部を整理しました
    • 進出環境要件の把握及び対策検討(外資規制の法制度、現地政府からの要求等)
    • 買収先企業の企業文化・価値観・業務の事前調査、買収後の親和性やシナジー効果の検討
    • 統合段階における現場重視・主導での統合準備
  • また、M&Aを実施した企業の事業発展や提携解消などの事例から想定される、事業開始後の事業運営におけるポイントの一部を整理しました
    • インド市場・ニーズの動向把握
    • 現地インド人経営者主導による管理・経営体制の実施
    • 企業価値・経営方針の擦り合わせ
    • コンプライアンスの遵守
    • 国内での生産体制の構築

 

業種毎の近年のインド進出事例

近年のインド進出事例に見るM&Aのポイント

  • 現地法人を設立するよりもM&Aのほうが経営資源や販売網を活用できる点で有益ですが、事前調査の段階で相手企業の企業風土や経営方針、経営実態を十分に調査・把握することが欠かせません
  • また統合作業時やその後の事業運営の際に大切なポイントの一つとして、日本文化を一方的に押し付けるよりは日本企業が持つ組織運営ノウハウを活用しつつ、現地文化や習慣、国民性を尊重した組織づくりを協力して進められるかどうかが挙げられます

 

プラント建設

  • インドでは、政府規制により、電力会社が発電設備を発注する際、インドに製造拠点を持つメーカーのみに限定されています。今後のインドでの電力設備需要の増加を見込んだ東芝は、上記の規制に対応するために、インドJSW(Jindal South West)Groupと蒸気タービン・発電機を製造する合弁会社Toshiba JSW Turbine and Generator Pvt. Ltdを2008年に設立しました

 

自動車製造業

  • 日本の自動車メーカーであるスズキは、1983年インドの自動車メーカーTVS Groupと合併しましたが、両者の間で株式保有割合や補助金等における方針の違いや不明瞭な所有権等、経営管理方針の違いが表面化し、関係が悪化したことで2001年に合併会社を解消しました
  • 本田技研工業とHero Cycles Limitedとの合弁会社Hero Honda Motors Limitedは、インド二輪車市場にて最大手まで成長しましたが、インド国内でのシェア拡大を目指すホンダと、積極的にインド国外進出を狙うHeroの間で経営方針の行き違いが生じ、2014年をもって合弁形態を解消することを発表しました(2010年12月時点)

 

電気機器製造業

  • 日本の大手電機メーカーであるパナソニック電工は、縮小する国内市場から市場規模が大きいインドへの進出を図るためにインドのAnchor Electricals Ltdの買収に成功し、インド現地に適した製品群や販売ネットワークを獲得しました。買収が成功した主な要因として下記の点が指摘されています五十嵐電機製作所は海外向けモーターを製作するための拠点として、米国商社やインドCrompton Greavesと合弁企業を設立しました。設立当時の海外生産拠点は中国のみでしたが、リスク分散とインドの将来性を考え、進出に至った。現地インド人社長に経営を任せることで現地の価値観や文化に即した経営を行うことで生産性が向上し、また現地パートナーにも恵まれたことで事業立ち上げが順調に進みました

    • 現地レベルでの共同統合作業の実施により、高い当事者意識の共有に成功したこと
    • 技術やノウハウを積極的に移管したこと
    • 過去進出時に工場の立ち上げに関ったOBを巻き込む等、人材活用・育成を行ったこと
    • 技経営方針や業績動向に関して社員の経営への関心を高める施策を実施したこと
    • 国籍・文化・習慣を尊重する施策を実施したこと
    今後の課題としては、これまで創始者一族による家族経営を行ってきたAnchor Electricals Ltdを組織経営に変革できるかどうかが問われています

 

消費財製造業

  • インドの消費財メーカーMarico Industriesは国内の食品(ビスケット)製造会社Unibic Biscuits Indiaを買収する取引を進めていたが、成立せず終了しました。終了したことに対するUnibic側のコメントは、協議を通じて双方の企業価値や自社商品のこだわりに固執したためと伝えています
  • アメリカのGE Appliancesはインドでのブランド向上と大型家電市場への参入を狙い、1993年家電製品の製造技術を持つインドのGodrej & Boyce MfgとJVを設立しました(出資比率40:60)。しかし、インド国内の大型家電の需要が少なく予想売上げを大幅に下回る状態が続き、2001年に売却となりました

 

文房具製造業

  • 日本の文房具メーカーであるコクヨS&Tは、インド国内での販売網・ブランド力向上を狙いCamlin Limitedを買収しました。Camlinとしても欧州企業参入による競争の激化から開発力の獲得を望んでおり、コクヨS&T側も販売業務で提携していたため、組織風土を理解したうえでの買収でした。しかし、Kokuyo Camlin Limitedの株価が取得原価の半分以下になったことを受け、コクヨは約49億円の特別損失を計上するに至りました。買収時の価格が適正であったかどうか疑問が残るものの、コクヨ側としてはインド株式市場の低迷による一過性のものと認識しており、今後の方針の変更はないと伝えています

 

食品製造業

  • フランスDanoneとインドJindal South Westの合弁会社としてBritanniaに出資を行いビスケットの製造を行っていましたが、他のインド企業に投資を行おうとしたDanoneに対しWadiaが提訴し、こう着状態に陥りました。そこに知的財産に関する問題も重なり対立が続いた結果、2009年に合弁を解消するに至りました。なおBritanniaは合弁解消後も成長を続けており、2011年のBusinessworld誌”インドでもっとも尊敬を集める企業”の日用消費財部門で第一位に選ばれています

 

製薬品製造業

  • インド製薬業界の最大手Sun Pharmaceuticalは、イスラエル最大手のTaro Pharmaceuticalに対して2007年5月に買収取引を行いました。2008年にTaroがSunを裁判で訴える等取引は難航しましたが、2010年にイスラエル最高裁がSun側に有利な判決を下したことで買収が成功(約350億円)しました
  • 日本の製薬メーカーである第一三共によるインドの製薬大手Ranbaxyに対する買収は買収総額4,000億円前後となりましたが、買収後Ranbaxyの工場における安定性試験の結果に関する虚偽記載が発覚しました。その結果、Ranbaxyは米国への製品輸出禁止措置を受け株価の下落を招き、第一三共は調査の甘さから損失を被る結果となりました。また、買収したRanbaxyの企業規模が大きく、インド市場や為替変動の影響が日本本社自体にも及ぼしています

 

電気通信サービス

  • インド最大の電気通信サービスのBharti Airtelは南アフリカのMTNを約2,000億円で合併する交渉を重ねていましたが、南アフリカ政府によるインド政府に対する法整備への要求等交渉が難航し取引を取り消しました。なお、成立した場合は合併企業は世界3位の規模になる予定でした
  • 海外市場への展開を狙うNTTドコモは、携帯電話市場でのシェア拡大を狙うTataグループと資本提携しました。新たに「タタ・ドコモ」というブランドを立ち上げ、競合の多いインド携帯電話市場において独自の地位を獲得しています。しかし、2G免許獲得の際に不正が行われたとして2012年2月に最高裁より免許停止の処分を受けるなど、今後の先行きは不透明な状況です
  • プロアシストはTata Elxsiと業務提携しました。Tata Elxsiは世界的技術力を持ちながらも日本の大手企業とのコネクション作りに難航していましたが、プロアシストに日本国内での販売網を求め提携を打診したところ、プロアシストからTata Elxsiに共同開発が申し込まれ業務提携を行うに至りました。両社の提携による効果は当初の狙いであった販路拡大だけでなく、互いの得意分野をあわせることで新たな組み込みシステムを開発することが可能となるなど、業務の範囲を広げることに成功しています
  • 技術力・営業力の確保を求めたJR九州のITシステム子会社(JR九州システムソリューションズ)と、日本進出を狙っていたインド大手サービスプロバイダPatni Computer Systems Limitedが2010年6月に合弁会社を設立しました。2009年に日本で開催された”ものづくりフェア2009”を機に設立されました

 

ITサービス

  • 国際化が進む顧客のニーズに対応するために、日立製作所の情報・通信グループは、米Intelligroup社ならびにインドSatyam Computer Services社と2005年提携し、開発や維持・保守サービス、運用支援などのサービスを行うアウトソース拠点をインドに設立しました。しかしSatyamは2009年に粉飾決算が発覚し、インド版エンロン事件と呼ばれるほどの騒動に発展しており、今後の事業運営に与える影響は無視できない状況です

 

物流

  • 日本通運は2007年、それまで航空・海運業務の代理店として起用していたJayem Impex Private Limitedを買収しました。全土をカバーする自社拠点網と充実した日本人スタッフを生かし顧客の物流支援を行っています。日本企業のインド進出が進んでいることと、インドから国外への輸出拡大の影響も重なり、業績は好調です

 

空運業

  • インドの大手航空会社Kingfisher Redが格安航空業界への参入を試みるために、2005年に同国の格安航空会社Air Deccan(2003年設立)に資本参加、買収に至りましたが、経営不振が続き2011年9月に運行停止の発表に至りました。失敗の理由としては、競合他社の優位性による市場獲得の失敗や、石油高騰による膨大な損失も指摘されています

(各社ニュースリリースやインド大手新聞記事等を元に弊社作成)]