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【FMCG】FMCG企業、インド農村部市場を攻める

Hindustan Unilever (HUL)社の前Managing Director、Nitin Paranjpe氏にとって、それは非常に驚く体験であった。Paranjpe氏はタミル・ナドゥ州の農村のある家庭で柔軟剤を発見したのだが、彼はその家庭の女性がシャンプーと間違えて購入したと勝手に察した。しかし、Paranjpe氏が「これを何に使っているのか」と尋ねたところ、その女性は「衣服用です」と答えた。これは、彼にとって思いがけない回答であった。農村部の消費者はローエンドの製品しか購入しないという通説が覆されたのだ。

このような話はインド各地の農村部で見受けられている。Coca-Cola社、Dabur社、Godrej社、Marico社やEmami社等の大手FMCG企業によると、購買力の向上に伴い、インドの農村部ではこれまで使用されていなかった高価格の製品カテゴリーの消費が近年急増している。
このような消費行動の変化は、インド全土で約170,000以上存在する、平均年間世帯所得が10万ルピー以上の村を中心に生じている。これらの村の約三分の一が人口3,000人以上の村であり、多くの大手FMCG企業はこれらの村において既に独自の流通網を構築している。市場専門家によると、人口3,000人を超える村におけるFMCG商品の需要はインドの農村部市場全体の約43%を占めているとのことだ。

Dabur India社は、以前は都市部のみで展開していたジュースブランド”Real”(25ルピー)や漂白剤ブランド“Fem”(35ルピー)等の商品を農村部に展開し始めた。また、パック飲料市場を開拓するために、同社は125mlのパックジュース”Real”を10ルピーで発売した。この販売戦略により、今や“Real”シリーズの売上全体に占める農村部市場のシェアは、2年前の2.5%から5.5%へと上昇した。さらに、農村部市場のみで見ると、漂白剤の売上は今期中で10倍増加している。
Dabur社営業部門のExecutive Director、 George Angelo氏によると、農村部消費者の購買行動の変化により、同社の農村部市場における営業利益は3%上昇したとのことだ。

また、Coca-Cola社もインドの農村部の消費行動の変異に注目している。かつて消費者にとって重要な購買決定要因であった価格設定も、現在では優先順位が下がってきているようだ。同社Marketing & Commercial部門のVP、Debabrata Mukherjee氏によると、従来の農村部市場における戦略は、消費者の購買力が乏しかったため「安かろう悪かろう」の商品戦略が主流だった。しかし近年は商品の価格より商品価値が重視され、価値のあるものにはお金を払うという消費者意識が定着しているようだ。

Mukherjee氏は、この購買行動の変化には、所得向上の他に二つの理由があると言う。一つ目は、農村部でテレビを保有する約8,000万の家庭がテレビ番組や広告を見て新しい商品に対する関心が高まっていること。二つ目は、Coca-Cola社などの企業が、農村の集まりや娯楽イベントなどで大規模なサンプリングを行っていること。これは消費者に対し高品質な商品を体験する機会を提供することにより需要創出に貢献している。Coca-Cola社は毎年、同社が流通展開している農村部の10%以上の村で商品のサンプリングを実施している。同社が持つ220万の小売販売店舗の内、農村地域は約25%を占めている。

インドの農村部におけるFMCG市場は、2008から2011年にわたり約16.5%で成長している。インド全土に存在する800万に及ぶ小売店舗の内、農村部には約540万店舗存在し、全体の約67.5%を占めている。また、農村部全体の消費支出額は3兆7,500億ルピーであり、都市部の2兆9,900億ルピーを上回っている。農村部の世帯所得における農業収入は以前の70%から40%まで縮小しており、農業収入への依存緩和に伴い、近年では購買活動が収穫時期のみではなく年中に安定化している。また、インドの農村部市場は各FMCG企業にとって非常に重要な市場として発展しており、売上全体の内、農村部の売上が占める割合はMarico社で約35%、Dabur社で47%、そしてGodrej社で30%である。

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