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山の神様への感謝(Mottainai)

コラム「インドビジネスの原点を考える中で団塊世代が次世代に残したいもの」 vol.1 

 山の神様への感謝(Mottainai)
 中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長
 加納 恭夫
 2014年12月4日

  

(初めに)

 インドビジネスを模索する日本企業に対して、私の経験を共有していたただきたいとの依頼を受けて、こちらのコラムに、六回にわたって執筆させていただくことになりました。我々日本人にとって不可解な国、同時に巨大なビジネスポテンシャルを秘めた国インド。この国とのビジネスを成功させるためのものの見方等について、私の世界65か国の訪問、中近東への長期出張、台湾、米国、インドでの駐在経験をベースに、多面的に論じていきたいと思います。

 最近の日本企業のビジネス手法を見ると、結果論だけで物事を判断するとか、他人に責任転嫁するばかりでビジネスの本質を見極め協調して物事を成し遂げるといった我々の世代が築き上げた精神が失われつつあるのではと強く思う次第です。

こうした傾向に疑問を持つ団塊世代の一人として、次代の人たちに我々の世代の精神を見直して頂き、新しい時代を切り開いていって欲しいとの想いから、筆を執ることにいたしました。 

 六回にわたるコラムのベースになるものは、“汗と涙と愛”です。旺盛な問題意識を携えながら、物事を本質から捉え、自らの考えをもって実行していくこと。これこそが、新しいビジネスを構築するに当たっての必須条件です。

 つまり、どんな批判を受けようが、それを汗と涙で肥やしとし、物事を解決し前進させること。さらには、関係者全員が、この汗と涙の原点を理解しあい、愛をもって協調しあい完成させるという日本人の本質を、再認識していかねばならないということです。

 第一回は“山の神様への感謝(MOTTAINAI)”をテーマに、インド精神の根底にある心について述べたいと思います。

 

 第一回 ”山の神様への感謝(Mottainai)“

 インド・コルカタに拠点を置くパトナー企業を訪問したときのことです。オーナーの息子(三十歳半ば)から、山の神を祀る祭事に招待され、「山の神の教え」を学びました。遠く離れたコルカタで聞いた教えは、日本人の美学に通ずるものでした。

その「山の神の教え」とは… 

“山があるから雲ができ、雲があるから雨が降り、雨が降るから川ができ、川があるから農作物を育てることができる。山の神様、ありがとう” 

 驚きと感動を覚えました。なぜなら、我々日本人が持つ大自然への畏敬の念と、まさに共通する精神であり、子供のころから教えられた自然の恵みへの感謝と同じものだったからです。

 小さい頃、お茶椀に一粒でも残したら、もったいないと母から叱られました。母の言わんとすることは、お米が無駄になるということだけではありません。「大自然の恩恵に感謝を捧げながら、一生懸命お米を育ててくれたお百姓さんの努力の結晶がこの米粒だ」ということを伝えようとしていたわけです。

 ご存じの方も多いと思いますが、“Mottainai”という言葉が世界中に広がったのは、ケニアのマータイ女史(ノーベル平和賞受賞者)の功績です。彼女が訪日した際、もっとも感動した言葉として、世界に向けてその精神を発信してくれました。

 


コルカタ州の寺院にて入浴の様子

 一方、昨今「エコ」という言葉がもてはやされています。
しかしそれは、発展途上国の視点から見てみると、先進国がさんざんエネルギー消費を経て発展していった事実を脇に置き、発展途上国に「エコ」という言葉でもってエネルギーの節約を強要するという、身勝手な発想なのかもしれません。

 この“Mottainai”はそもそも、自然の恵みに感謝し、モノを大切するという原点をあらわしていると私は思います。そして全人類にとって共有できる考え方だと信じています。マータイ女史もきっと、この日本人の美学に感動を覚えたのでしょう。

 山の神への感謝から、“Mottainai”精神へと話は展開しましたが、こうした原点に立ち返ってビジネスを考えていくこと、つまりビジネスを背後から支えるインドの精神文化を大切にしたいところです。

 インドという国は、こうした生きる原点を、太古の時代から育んできた国であり、モノを大切にする、すなわち、日本人の得意とする、長持ちのする品質、保守メンテナンスの重要性(小松製作所様の保守メンテナンス等の経営戦略について諸先生と論じた書籍があります。“アフターマーケット戦略”(白桃書房)の第六章(倉重光宏先生と私にて担当)をご参照ください)を理解出来る精神土壌を持っていると、私は確信しています。

 インド市場を表面的に見れば、モノの安い高いだけの判断で取引するように見受けられます。しかしその一方で、歴史的に見てモノを大切にする文化であり、目を覚ました人たちが「安物買いの銭失い」だったと気づき始めているのも事実です。

 日本の精神が産んだ「日本ブランド・日本品質」がインドで花開くのも、そう遠くないことは間違いありません。


インドの祝祭「ホーリー」ではプージャ(お祈り)の前後に
無礼講で「色水・色粉」をかけてお祝いする伝統があります。
上記の写真は「光のお祭り」と呼ばれる「ディワリ」にて、
著者が子どもたちに色粉をかけられた様子。

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 

 

加納 恭夫
中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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