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みんなでインドダンス(真の価値の創造への喜び)

コラム「インドビジネスの原点を考える中で団塊世代が次世代に残したいもの」 vol.3 

 みんなでインドダンス(真の価値の創造への喜び)
 中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長
 加納 恭夫
 2015年1月15日

 

 米国に駐在していたとき、ソフトウエア開発の会社と付き合っていました。びっくりしました。なぜかというと田植えのようにみんなが一列に並んで頑張っていたからです。アメリカも日本と同じようにチームワークで仕事をしているのかと思いました。しかし、よく見てみるとリーダーがそれぞれの人に指示を出し、結果として一列に並んでいたのでした。

 アメリカはJob Descriptionというのがあり、それぞれの仕事の内容が決まっています。したがって 「It is not my job. It is your job」 と言って自分のJob Descriptionと関係ないものは一切触らないというのが 彼らのルールです。一つの例としてアメリカンフットボールを見ると、球を投げる人、受け取る人、タックルする人とそれぞれ役割が明確に分かれており、リーダーがそれぞれに指示等をしてリードし結果として一列に並んでいるように見えます。

 それに比べ日本は、一列に並んだそれぞれの人が、肩で何かを感じちょっと早すぎるよ、ちょっと遅いよと言いながら一列に並びリーダーはいません。

 私はその世界しか知らなかったものですからアメリカの部下に、“It’s our job”と叫び、チームワークというのがわかるかと説教したものでした。日本的なチームワークのココロを理解してもらうのにかなり時間を要しました。

 

 インドで大きなチャレンジをしました。鉄の壁材の売り切りではなく、材工一式の商売を日本のゼネコンの下請けとして行いました。

 鉄骨の枠組みに鉄製の壁材を張り付ける工事です。パイプの四段階ぐらいある作業台を鉄骨の外側に設置し、その上にのって作業を行います。壁材の日本のメーカーの技術者の方そして通訳も兼ねた商社の担当者も同じく作業台にのって施工業者の職人に指示を出していくといったものでした。

 また、単に鉄の壁材を鉄骨に張り付けるだけでなく、壁材の裏側に雨水を受け止め排水するように部材を配置し壁材の隙間を張り合わせるなどそれこそ日本の匠の心が要求される工事でした。

 

 ある日のことです。部材が地面に落ちた時、誰も拾おうとしませんでした。地面に落ちていたものをどうして拾って作業台の上にいる人に渡さないのだと叫びました。でもそれを拾うことはしませんでした。あとで話を聞くとカーストではそうしたものを拾うという行為は一定の階級の人しかやらないという暗黙のルールがあったそうです。

 壁材の日本のメーカーの技術の方が日本語で商社の担当者に種々技術的アドバイスをします。彼女はそれを英語で現場の職人に指示します。一生懸命説明するのですが誰も理解した様子ではありません。そうこうしているうちにゼネコンの現場の所長が来て種々チェックし、これができていないあれができていないと日本の職人に注文を付ける感じで叱ります。インドの職人はますますわからない顔をしています。

 また、明日の工事のため何が必要かという観点もなく仕事が始まるとあれがない、これがないと騒ぎ出し探し回ります。つまり日本で言う段取りができないのです。汗も涙も切れてしまいました。

 それでも一つ一つ愛情をこめて何のためにこのことをやるのかを説明し、段取りをきちっとやって、帰る前に明日の用意を行うという仕組みを理解させることができるようになってきました。そうですねそのレベルに達するのに約3週間はかかったように記憶しています。

 一か月半掛かって工事が完成しました。現場の所長が「なんか日本にいるみたい」と言ってくれました。日本の関係者は涙が出ました。そうこうしているうちにインド人の皆が集まりました。そして写真にあるようにみんな 「やったー」という喜びを表現し、インドダンスを踊りだしました。

 後で現場の材工一式の工事の責任者が、「頑張って自分たちが行ったことの意味が分かった。ただ言われた通りやっただけでなく何のためにこの作業が必要だったのか皆が理解してくれた。次の工事はもう叫ばなくても行うことができる。」と胸を張って言ってくれました。

 

 
喜びの分かち合い 

 確かにカースト等暗黙のルールがある等、独特の文化があるので外国人である我々が現場で指示を出して工事を行うことはたいへんむつかしいとインド人そしてインドを知っている日本人からアドバイスをもらっていましたが、それでもひとつひとつ作業の意味を理解してもらい動いてもらうといった考えを曲げずに汗と涙と愛をもって物事に臨み、実行した結果であると思いました。

 文化が違っても、環境が違っても、「真の価値の創造」というものは最終的には理解を得られるものだ。その為に努力を続けあきらめることなく頑張るといったことが万民に通じるものだとの確信を得た瞬間でした。

 種々のファクターを分析し、これは可能性があるないなどをコメントすることが最近多くなってきています。確かに大切な分析であり否定するものはありません。しかし人間としての喜びとは、無限の努力によって真の価値を創出することにあるという点は万民共通のものであり、真の価値を求める努力なく分析だけで物事を判断することは本質を見失うと思います。この事例がそれを表していると思います。

          

以上 

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 

 

加納 恭夫
中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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