インドの最新業界ニュース、2500社のインド企業情報を提供するポータルサイト

インド最大手EC企業創業者も注目する電動スクーターベンチャー

コラム「起業家が見た、巨大インド市場を狙う新ビジネス」 vol.4

 インド最大手EC企業創業者も注目する電動スクーターベンチャー
 インド事業開発・事業投資専門
 “パミット”
 2015年2月3日

 

 基本情報 
 会社名 Ather Energy社
http://www.atherenergy.com
 設立 2013年
 本社 チェンナイ
 事業内容 電動スクーター開発

 

電動スクーター革命

 ガソリンで動く自動車に比べて電気自動車は構造が簡単で、モーターと電池とそれらを制御する装置を組み合わせれば比較的簡単に開発することができると言われています。沢山の系列部品メーカーを抱え、自社で多くの技術者を揃えて幾多のすり合わせをしながら開発する体制を整えた高コスト構造の既存自動車メーカーに比べて、新しいメーカーが外部から部品調達し全く新しい自動車を低コスト開発できるため自動車業界に革命が起きるのではないかと期待されています。アメリカのテスラモーターズがその代表例です。二輪車は更に構造が簡単なため既に多くの新しい電動バイクメーカーが誕生しています。日本では、テラモーターズが出井・ソニー元会長から出資を受けるなどして注目されています。テラモーターズは海外にも積極的に事業展開しており、インドでも高級電動バイクを今年発売しています。そのテラモーターズと非常に似た会社がインドで2013年に誕生しました。

 

インドのプレミアム電気スクーター

 Ather Energy社が開発中の電動スクーターは、非常に軽い構造になっておりガソリン車より加速度がよく、通常6-8時間かかる充電が1.5時間で終わる事ができることも特徴です。また、アンドロイド端末がダッシュボードについており道案内や盗難防止機能、残り何キロ走れるかを表示する機能などが付けられる予定になっています。前回の記事で紹介したIoT(Internet of Things)のコンセプトから、スクーターにつけられたセンサーから情報を収集・分析し更なる製品の改善につなげたり、情報提供を行うことも検討されています。

 値段は85000ルピー(約16万円)を想定しており、平均的一般的なスクーターの価格が平均約5万ルピー(約10万円)であることを考えると相当のプレミアムセグメントを狙った製品と言えます。これまでにもインドでは電気スクーターはあったものの、加速度・充電速度・走行距離といった基本的性能が足りず普及していませんでした。いないが、しかし、基本的性能を満たせばそれなりの価格を払ってでも環境にやさしい乗り物を選ぶインドの消費者が存在するという調査結果を踏まえて、同社は現在製品開発を行っています。来年を目処に製品開発を完了して発表できる見込みで、更に10年後には、ガソリン・スクーターよりも電気スクーターを選ぶのが普通になっている事をAther Energy社は目指しています。

 

 

インド最大のECサイトFlipkart創業者が出資

 創業者の一人、Tarun Mehta氏はトラックなどの商業用自動車のインド大手、Ashok Leylandに勤めており、いました。もう一人のSwapnil Jain氏はGeneral Motorに勤めていました。他の多くのベンチャーの始まりのように、二人は同じIIT(インドの国立技術系大学の名門)Madras校出身で一度自動車会社に就職しましたが、起業の夢が捨てられず1年もたたないうちにAther Energy社を設立しました。そしてその後、母校の教授が数十万ルピーの起業資金を二人に提供して電気スクーターの開発が始まりました。

 その後は、オンラインショップ最大手のFlipkartの創業者から100万ドルの出資を受けたことで大きく取り上げられています。Flipkartは2007年に創業し現在では時価総額110億ドル以上となっており、同じように新しい技術によって破壊的な革新を起こす可能性のあるAther Energy社への投資をしています。25歳の二人の若手創業者が1年前に創業し、他十数名の仲間の技術者とともにゼロから開発を進めて、ここまで資金調達して来ているのは十分注目に値します。

 

世界一のインド大気汚染に貢献

 2014年WHO発表のPM2.5で見る世界都市別大気汚染ランキングによると、ワースト1はデリーで、ワースト20都市の内、13都市はインドの都市が入っているであるほど、インドは深刻な大気汚染問題を抱えています。自動車の排ガスは大気汚染物質の主要な発生源でもあり、インド政府はNational Mission for Electric Mobilityを発表して2020年までに電気自動車を普及させようとしていますが、実態は財源も乏しくメーカーを大きく支援するような施策にはなっていないようです。Ather Energy社のような新しいメーカーが製品としての魅力を前提として需要を掘り起こして電気スクーターを普及させることができれば、結果としてインドの環境問題へも大きく貢献することになりそうです。

 

 ———————————————————————————————————————————

コラム記事に関するご意見・ご感想はこちらからお問い合わせください(メーラーが起動します)

 

バックナンバー

 

vol.1 インド各地の地元ガイド紹介ビジネス 2014年12月9日
インドは、その人口の多さや国土の広さからアジアの大国の一つであり、経済的には今まで成長
期と停滞期を繰り返しながらも将来大きく成長するだろうと期待されている国です。 インドの…

 

vol.2 インドのランチ事情に変化が?
新鮮なサラダ宅配サービスが登場 2014年12月22日

インドでは、家族での食事はお母さんが作ってくれるインド料理を自宅で家族一緒に食べる
ことが普通でした。しかし少しずつ所得が上がってくるにつれて、記念日など特別なときに…

 

vol.3 IoT先進国インド発!
靴の中からランナーの悩みを解決 2015年1月20日

パソコンや携帯がインターネットに当たり前につながるようになった今、次の革新が起こる
分野として期待されるのは、車・家電・日用品など全ての“もの”がインターネットにつなが…

 

>>インドビジネスコラム一覧へ

 

著者プロフィール


 “パミット”
 インド事業開発・事業投資専門

 Eコマース事業で起業・資金調達・事業開発を経てエグジット後、戦略コンサルティングファームにて
 消費財マーケティングに関わる。現在は、インド企業を対象としたM&A及び買収後の経営に従事。
 インドにて、日本の強さが活かせる革新的な事業を各パートナーとともに構築中。デリー在住。

 


一覧に戻る