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デリーの市場(マーケット)にてBOPビジネスを思う

コラム「インドビジネスの原点を考える中で団塊世代が次世代に残したいもの」 vol.5

 デリーの市場(マーケット)にてBOPビジネスを思う
 中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長
 加納 恭夫
 2015年2月20日

 

デリー市内に単身で住んでいた頃の話です。

すぐ近くの市場(マーケット)によく買い物に行きました。素敵なTシャツ、ズボン等がお店の中だけでなく、外側に立てかけ陳列されており、パン等の食料品もお店の外、内側、そして地面に座って売られています。

たばこや生理用品などは1本ずつ、1個ずつ小分けで売られています。(なるほど、その日の手持ちの現金で買えるという工夫をしているのだと感じました。)

このようなマーケットの中には、マクドナルド、携帯電話販売店(リライアンス)、コーヒー店、スパゲティー屋などの有名ブランドのお店もバラバラと存在しています。

まだ開店していない早朝に出かけてみると、市場全体が大きなゴミ箱と言っても過言ではない状態となっています。一応、ゴミ箱のようなものが何か所にも置いてあるのですが、まだごみを捨てるスペースがあるにも関わらず、外側にゴミが散らかっています。第一話に述べたような基本的なところで日本とつながるインドの精神文化や、日本の方々や知人のインドの人たちにお話ししていたインドの特徴と、この光景は整合性が取れず、ちょっと悔しい思いをしていました。

まだ赴任したばかりで、かかる光景に出くわしたのですが、その中でもっと衝撃的なことに出くわしました。

市場の中を歩いていると、必ず6-7歳くらいの子供たちが“チャパテ”と言って寄ってきます。
インドの人に聞くと、日本で言う乞食が“ご飯をください”と言っている意味だとの説明をしてくれました。ただ最後に、絶対に無視することとのアドバイスがありました。

ある日のことです。一人で市場を歩いていたところ、一人の可愛い女の子が“チャパテ”と言って寄ってきました。何とも言えない表情をしながら付きまとってきます。ダメだよと対応するのも煩わしく、10ルピー(当時のレートで16円)の紙幣を渡してしまいました。

その女の子が離れた瞬間に、10人程の子供たちが私の周りを囲み、“チャパテ”と言いながら腕や肩にぶら下がってきます。

周りにいたインドの人たちも、私がどんな対応をするのか見ているような気がしました。
そんな目線を感じながらも、日本語と英語で子供たちにこう話しかけました。

我々が今いるこの辺りをきれいにしましょう。あのゴミ箱がわかりますか。そこら中に捨ててあるゴミを、あの箱の中に入れましょう。そうすると、このあたりがきれいになりますね。みんなの力でやってみましょう。おじさんも一緒にやるからね。

と言って、一人ひとりに10ルピー渡しました。

みんなお利口にゴミを拾ってゴミ箱に入れてくれました。でも一回きりでそれ以上やろうとしません。この辺りをきれいにしましょうという概念が果たして通じていたのか、そもそもそうしたことが理解されていないのではとも思い、子供たちを責める気になれませんでした。(むしろ周りの大人たちに大声で叫びたい気持ちでした。)

次の日から、私が市場に行くと必ず子供たちが寄ってきます。市場の有名人になってしまいました。インドの友達が絶対に“チャパテ ガール”に対応したらダメだとアドバイスしてくれた意味が、その時になってわかりました。

先日、アーシャというNPOの10周年記念の会合に出席しました。現在、日本米の原産地であるインドの北東部で、日本人のボランティアが日本のお米の栽培方法を指導し、両国の歴史や文化の再確認を通して、日印関係の強化や貧しい農民の所得の増加を図る、(ここで作ったお米はインドの既存のお米の値段の三倍で売れるとのこと)というミッションを持った活動に触れることができました。

そして、このように経済活動を通じて貧困問題の解決を図るビジネスをBOPビジネス(Base of the Economic Pyramid)と呼ぶことを学びました。

 

さて、最初の“チャパテ ガール“の話に戻りましょう。
例えば、次のような仕事を与えることによって、インドの中間層のさらなる拡大を図ることに、日本が貢献できるのではないかと思うようになりました。

1) 日本の最新技術を使ったモーターを利用した人力発電
  子供たちが一時間でもよいから自転車のようなものを漕いで発電する。

2) ゴミの焼却発電やリサイクル
  子供たちが生ゴミの分離を行うことによる焼却炉発電の材料の確保、プラスチック等のゴミから目的をもって峻別し、リサイクルに活用する。

あの私の腕、肩にぶら下がってきた子供たちが、笑顔でかかる仕事に取り組んでいる姿を想像すると熱いものを感じます。インドでも、次の世代の方々はいろんなところでボランティア活動を行っていることを知りました。そして、そうした活動を通して母国の在り様を感じ、頑張っていることを確信することができました。

                                以上

 

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 

 

加納 恭夫
中堅鉄鋼商社オーミインダストリー 元デリー駐在員事務所長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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