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インドBOPビジネスのエコシステムに参加しよう

コラム「BOPビジネスの現場に見る、インドビジネスのこれから」 vol.6

「インドBOPビジネスのエコシステムに参加しよう」
 Arc Finance プロジェクトマネージャー
 藤田 周子
 2015年3月5日

 

  最終回は、BOPビジネスを取り巻くエコシステムを考えたいと思います。残念ながらインドのBOPビジネスシーンで今のところ日本企業の存在感は全くと言っていいほどありません。(個別に取り組んでいる企業はあると思いますが。)

 多くの企業にとってBOPビジネスは新規市場に新製品で参入することを意味します。中長期的視点に立てば避けられない動きだとわかっていても、リスクや不確実性を前に二の足を踏むことも多いでしょう。リスクヘッジの意味でもお薦めしたいのが、BOPビジネスを取り巻くエコシステムへの積極的な参画です。

  

公的機関とのパートナーシップ

 幸いインドにはBOPビジネスに関連するプレーヤーがたくさん存在します。事業会社・NGOだけでなく、官民問わず支援機関も多数あります。日本企業の場合、まず日本政府機関の支援制度利用を考えると思いますが、さらに国際機関や海外の機関・企業・団体にまで視野を広げてはいかがでしょうか。  

 例えば、エネルギーアクセス分野だと、国際機関であれば、世界銀行・IFC、アジア開発銀行などが活発です。資金援助だけでなく、市場調査等リサーチ結果の共有、事業化ノウハウの提供・人的支援などのテクニカル・アシスタンスを行っています。IFCはLighting Asia/Indiaプログラムを通して製品の品質保証や、地方住民への啓蒙活動を展開していることで有名です。アジア開発銀行はベンチャー企業への出資もしています。

 他国の政府系援助機関であれば、USAID(アメリカ)、GIZ(ドイツ)、DFID(イギリス)などがあります。私は今USAIDのプロジェクトに関わっていますが、貧困層のエネルギーアクセス改善に寄与するファイナンスの仕組みを4年かけて実証実験しています。複数の手法を複数の現地パートナーで試して、どれが有効に機能するか、事業として成立するかを検証します。USAIDの支援には市場調査や事業開発等に関する専門家派遣、シードマネーの提供等が含まれます。

 

  

Simpa NetworksのPay-As-You-Goソーラーホームシステム。
同社は2010年設立、2013年にはアジア開発銀行から200万ドルの出資を受けた。

民間セクターからの資金調達

 同じくエネルギー分野からの事例になりますが、シェル財団ロックフェラー財団など欧米の財団も積極的に資金援助を行っています。シェル財団はEnvirofitDharma Lifeといったスタートアップに早くから資金提供しています。

 最近では民間企業のCRS予算も資金源として注目されています。というのも、2014年4月に法改正があり、売上100億ルピー以上(または純利益500万ルピー以上、時価総額50億ルピー以上)の企業は、純利益の2%をCSRに充てるよう義務化されたからです。実際私たちが支援している団体の中にもインド企業のCSR予算を得て、ソーラーマイクログリッドを建設・運営している事例があります。さらには、複数企業からのCSR予算をプールし、オフグリッド・ファンドを作ろうという業界レベルの動きもあります。

 ビジネスモデルの検証が終わって事業として動き出せば、インパクト投資ファンド(アキュメンなど)から融資・出資を受けられる可能性があります。彼らは社会的インパクトを重視する分、通常の銀行や投資家よりも低リターンで長期の回収期間を設定します。他にも(必ずしもインパクト投資とは銘打っていませんが)特定の社会課題解決にフォーカスした欧米系のファンドもいくつかあります。また、ドイツなどの政府系開発金融機関は民間企業にファンドの運用を委託しています。

 日本企業として考える場合、自社が直接こうした助成や投融資を受ける可能性は低いと言えるかもしれません。しかし、過去にアキュメンが住友化学のオリセットネットの現地パートナー(タンザニアの工場)に対して融資したように、現地パートナーの資金調達ルートとしては大いに可能性があるでしょう。

 

 国際NGO Greenpeaceによる資金提供で建設されたソーラーマイクログリッド。

巻き込みながらつくる

 BOPビジネスでは誰もが手探り状態です。これが正解、これが間違っている、という明確な境界はありません。やってみてうまくいけば正解、言い方を変えれば、やらなければいつまでたっても正解にはたどり着かない。あまり人に言いふらさずにコツコツ努力をして、うまくいってからお披露目するのも一つのやり方(日本的?)ですが、作る過程から周りを巻き込んで、周りにサポートしてもらいながら作るアプローチこそ、ぜひ日本企業・日本人の方々にお薦めしたいのです。事業化していようが、まだパイロット段階だろうが、プレーヤーとして認知されることで、情報が集まるようになります。フォーマル、インフォーマル問わず意見を求められるようになります。業界を、あるいは資金提供者たちを、自社にとって有利な方向へ促す影響力が生まれます。特に大企業は当然どこの国・マーケットにいてもやっていることだと思いますが、ぜひBOPビジネスのマーケットでも存在感を示してほしいと思います。

 そして最後に、BOPビジネスに関心のある方々へ。企業の社員としてBOPビジネスに取り組むのももちろん結構ですが、ぜひ起業もオプションとして考えてみてください。私の周りにはアメリカ人、カナダ人、オランダ人など、インド人以外でもインドでBOPビジネスを立ち上げた人たちが何人もいます。インドは失敗のコストが低い国だと思います。うまくいかなかったらどうしよう?と心配せずに、まずはやってみよう!という気持ちで行動を起こしてみてください。

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著者プロフィール


 

    藤田周子(ふじた ちかこ)
    Arc Finance プロジェクトマネージャー

 

 外資系コンサルティング会社、国内電機メーカー勤務後、NPO法人にてインド無電化農村地域へのソーラーランタン普及支援。その後、アメリカ・インド・アフガニスタンのインパクト投資・BOPビジネスの最先端で現場経験を積む。2012年より米国法人アーク・ファイナンス所属。貧困層のエネルギーアクセス向上に、ファイナンスの仕組みを活用する。現在は、主にマイクロファイナンス機関が、ソーラーランタン等クリーンエネルギー製品目的の貧困層向け小口ローンを開発・展開するのを、農村調査から事業設計、テスト販売まで幅広くサポートしている。デリー在住。

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