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12億人市場ってどこにありますか?

コラム「違いは前向きに考えてみる」vol.1

 12億人市場ってどこにありますか?
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2015年4月14日   

 

私が初めてインドを訪れたのは今から6年前の2010年のことでした。その時は日本の人材会社に所属し、インドに支社を立ち上げるための赴任前の視察でした。インターネットや本でインドについて事前知識を持っていたつもりですが、実際のインドに到着してから想像と違いすぎていて、色々困惑したことを今でも鮮明に覚えています。そして、本赴任となり、今では大きな反省なのですが、(自分の持っているインドのイメージに合わせようと)事前知識との共通部分ばかりを探そうとしていて、本当のインドを素直に観る心構えができていませんでした。その後、支社を立ち上げるまで多くの企業を回り、(日系企業がターゲット顧客でしたので)インドでビジネスをしている多くの日本人と出会いましたが、その時に苦笑いしながら私の話を聞いてくださった方々の気持ちが分かるようになったのは、インドで1年を体験し、生活にも慣れてきた2年目に初めてインドに来た日本人と会って話をした時でした。

 

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出国前とイメージがだいぶ違っていたインド

時は流れ、小さい会社ながら日本人がインドで起業し、会社を設立経営していると、同じように起業を志す方や弊社をパートナーとして考えている方からビジネスのご相談を受けることが良くあります。

その方々は「人口が12億人を超える超巨大市場」とか、「毎年GDPが○%ずつ成長している将来性のある市場」とか、「世界でも有数のIT立国」とか、私にインドが日本でどのように紹介されているかをお教えくださいます。

そこで、最近はインドでビジネスをしようとしている方にこういう質問をしています。

「なぜ、インドなのですか?」

それは私自身にも言えることで、私が今の会社を立ち上げ、日本人の生活支援をしようと思ったのは、単純に当時の私がインドに暮らす外国人としてとても生活で苦労していたからです。これは日本に来たインドの方も同じ経験をしているのではと思います。言葉や文化、習慣が違う国で暮らすのは楽なことではありません。もちろん、せっかく海外にきたのですからその国の文化に触れるのもとても良いことです。ですが、そこで長く暮らすとなると、たまには気を使わないで落ち着ける、日本的な環境に身を置くのも大事なことです。和食レストランに日本人が集まってくるのも、和食を食べる以外にそういった理由もあると思います。そんな顧客の要望があるからこそ、弊社のビジネスも続いているのだと思います。もしも、私が2010年にアメリカに赴任していたらどうでしょうか?多分、起業すらしていなかったと思います。

 

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首都デリーの隣のハリアナ州にある日本人向けのホテルでは、
日本式銭湯があり、仕事で疲れた日本人の疲れを癒やしてくれます

 

先ほどインドは12億人市場という言葉を書きましたが、これを見つけるのはとても難しいなと常々思っています。揚げ足取りではありませんが、赤子なども含めてインドの人口は12億人規模ですので、赤ちゃんから老人まで需要があるビジネスとは何かと考えると、「”飲料水”かな?」とふと思いましたが、首都のデリーでも井戸水で生活している方々も多いので、どうでしょうか。しかし、インドは日本と違い水道水をそのまま飲むと危険なので、濾過水(フィルタリングウォーター)は道端でよく売られていて日本よりも需要があるようにも見えます。食べ物はどうでしょう?北はパン文化(小麦粉)で、南部は米文化だったりします。ベジタリアンや宗教上の理由で食べ物が制限されている方々も多数います(むしろ、日本人並に制限がない人を探す方が難しいでしょう)。ミルクはなかなか良い線だと思いますが、そういった市場はすでにインド国内の大手が独占していますので、割って入るのはなかなか難しいです。

私はインドの市場についてこう説明します。

インドの市場は都市部と農村部、所得の違い、出身州(言語や民族)、学歴、所属する宗教(ヴァルナ・ジャーティ=カースト)、内陸部と沿岸部などの要因が複雑に絡み合って、いくつにも分割されており、まずは自身のビジネスがそのどの顧客層にマッチするかを見つけ出すのが大切です。ジャンルによっては納税で必要なコードも州毎に取らなければならなかったり、他の州で商品を売る場合は州毎に越州税率が違うなど、州を超えてビジネスをしようとすると色々大変です。

逆に考えると見えてくることもあります。12億人の10%の人が興味を示すだけで、日本の人口と同じ規模の潜在的な市場が発生する。州がビジネスエリアの基準であるならば、ひとつの州だけでも主導的なシェアを獲得できれば、他州からのライバル参入がより難しくなる。日本の最新情報を最近日系企業が増えてきているタミル・ナドゥ州の会社オーナー達にタミル語で発信したらどうだろうか?

同じくインドで起業し、インテリア関係のビジネスをしている先輩日本人起業家の言葉で忘れられないものがあります。「僕はただ、インテリアを売りたいのではなくて、僕が良いと思った商品を良いと思ったお客様に買ってもらいたいんだ。それができないなら、お店を続ける意味が無い」

個性的な12億の人々が集まる国です。逆に日本だと一人も共感してくれないビジネスが、1万人ぐらい簡単に共感してくれるかもしれません。

例えば、日本の新宿の高島屋にはイスラム教徒向けの”祈祷室”があります。ほぼ日本人には不要のものですが、イスラム教徒の海外旅行者にとっては、安心して礼拝ができる唯一の百貨店です。この情報を知っているイスラム教徒の観光客なら、日本観光での買い物は高島屋でしたいと思うでしょう。

インドでは私が購入した洗濯機の自動洗濯プログラムに”サリー”というのがありました。サリーといえば、インドの伝統的な衣装で今でも日常で着用している方も多くいらっしゃいます。気に入ったサリーを長く着続けたいというインド人女性の気持ちをがっちりとつかみ、大変売れているとか。

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インドで売られている洗濯機にはサリー専用の洗濯プログラムがあるものも

 

日本だったら「サリー?魔法少女のコスプレ用?」とかなりそうですよね(日本なら”着物モード”?)。

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著者プロフィール

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佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

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