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新予算にみるモディ政権の経済運営

 コラム「インドのマクロ状況」vol.1

 新予算にみるモディ政権の経済運営
 国際基督教大学教養学部上級准教授
 近藤正規
 2015年4月16日   

  モディ政権が昨年5月に発足してから一年近くが経ち、ハネムーン期間もそろそろ終わりつつあるが、原油価格の低下の影響も幸いして経済は回復基調にある。これまで大きな改革は行っていないという批判もある中、モディ政権は2月28日、2015年度予算を発表した。予算規模を見ると、歳入見込みは14年度予算見通し1%増の11兆4,157億ルピー、歳出見込みは同6%増の17兆7,747億ルピーとなっている。

法人税の引き下げ

 歳入面でまず注目されたのは法人税の引き下げで、今後4年間に現行の30%から25%へ引き下げるとした。これは日本企業にとっても大きなメリットである。ただし、来年度から毎年具体的にどう引き下げられていくのかロードマップはまだ明らかにされていない。

 所得税については今回変更がなかったが、富裕税が廃止され、代わりに1千万ルピー以上の所得のある超富裕層に対して12%の特別付加料金を導入することが提案された。また、今回の予算では脱税・マネーロンダリングなどへの対策がかなり示された。税率を下げた分、税の捕捉率を上げることを目指していることは明確である。

サービス税の増税

 他方、今回の予算で引き上げとなったのはサービス税である。サービス税の基本税率は12.36%から14%へと引き上げられ、さらに「クリーン・インディア」キャンペーンのための2%のサーチャージを加えると実効税率は16%になる。伸び悩んでいる製造業育成のための財政基盤の確保を、依然好調な産業別にみると、サービス産業に求めている感がある。


間接税

 物品税については、昨年2月から12月まで続いた自動車に対する物品税削減の継続はなされず、小型車、商用車両、バイクなどの消費税が12%から12.5%へ引き上げられた。日系企業の進出の多い自動車業界にとってはネガティブである。

 関税も税率に大きな改定はなかったが、国外で100%生産された商用車には関税20%をかけるとしたほか、22品目の機械部品の輸入関税が引き下げられており、当該部品を輸入してインドで組み立てている日系企業にとってはメリットとなるであろう。

 懸案となっていた物品・サービス税(GST)については、16年4月から実施予定と発表された。これが実施されると日系企業にとってもメリットは少なくない。なお、今回のサービス税の実効税率16%への引き上げはGSTを念頭に置いたもので、GSTがこの16%に設定されるのではないかという見方もある。


インフラ予算の拡大

 歳出面では、インフラ整備への大幅支出拡大が注目された。インフラ関連の予算は前年度比28%増の6兆1,300億ルピーへ大幅に増やすとしており、具体的には、道路と港湾に公共事業の支出拡大、4千メガワットの発電所5ヵ所の設置、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギー関連の予算拡大に加え、インフラ事業の入札に関して土地収用などの諸手続きが終わってから行うとしたことやタックス・フリーのインフラ関連ファンドを設立するとしたことなどが注目される。

 インフラ整備と並んで大きな伸びを見せたのは国防予算で、前年度比7.9%増の2兆4672億ルピーが計上された。国防費の拡大は、外資の導入などによる国内生産の拡大と輸入の削減につながるとしているが、増大する中国の影響力に対抗する備えともみられる。

 今回の予算では、教育、保健、農業関連にはさほど重点が置かれていない印象があるものの、農村雇用スキーム(MNREGA)向けの予算の大きな削減はされなかった。それ以外にもGDPの1.5%に及ぶ補助金として、食糧・肥料・エネルギー向けの補助金があるが、エネルギー補助金以外は改革の遅れが指摘されている。一方で今回の予算案では、今後5年間に1.96兆ルピーを投じて、1億以上の家庭にトイレを設置するという提案もなされた。これは昨年の総選挙でBJPの公約にもあったことである。


財政赤字目標の見直し

 以上の税率変更による歳入と歳出の伸びを考慮した結果、これまでにインド政府がコミットしてきた2年後に財政赤字をGDPの3.0%に下げるという目標は、3年後に延ばされた。上に述べた税収の伸びの伸び悩みからして、この目標達成の繰り延べは現実的で妥当なところであろう。また、予算では州政府への所得移転も増額され、州政府の財政基盤の強化が、インドの国全体で見た財政状況の改善に寄与するとことも期待されている。

 次に、国家予算に先だって2月26日に発表された鉄道予算では、今後5年間で国内の鉄道向けの投資を8兆5,000億ルピーに拡大し、乗客数のキャパシティを2,100万人から3,000万人に増加させ、鉄道距離も11万4千キロから13万8千キロへと2割拡張する方針が明らかにされた。拡大予算であるにもかかわらず、鉄道運賃の値上げはなされておらず、予算の18%が市場借入、6%が官民協調(PPP)によるとなっているため、ポピュリスト的ではないかという懸念も出されている。


金利の引き下げ

 最後に、3月4日、2月28日の予算発表からわずか4日後、インド準備銀行(RBI)はレポ金利 を7.75%から7.5%に引き下げた。予算を見るまでは追加利下げは予算をできないと事前にコメントしていたラジャン総裁にとって、今回の予算は合格点だったようである。利下げ発表を受けてインド株式市場は大きな上昇を示し、翌日の取引開始直後に史上初の 3万ポイントをつけた。昨年5月に発足したモディ政権は最初の本格的な予算というハードルを無事に乗り越え、今後のインド経済のさらなる成長加速に期待を持たせたといえる。

 

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著者プロフィール

Masanori Kondo

 

近藤正規
国際基督教大学教養学部 上級准教授

 

アジア開発銀行、世界銀行等にて勤務後、98年より国際基督教大学助教授、07年より現職。
06 年よりインド経済研究所客員研究員、日印協会理事を兼任。スタンフォード大学博士。
専門は開発経済学、インド経済。

 

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