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インド人の本音

コラム「インドのビジネスを構築するにあたって」 vol.1

 インド人の本音
 元アメリカ住商シアトル支店長
 加納 恭夫
 2015年4月23日


始めに

本ポータルサイトに”インドビジネスの原点を考える中で団塊の世代が次世代に残したいもの“にて6話執筆しましたが、今回は観点を変えてお話を進めたいと思います。中近東、台湾、アメリカやインドでの駐在、及び計65か国への訪問経験を総合的に勘案し、インドとのビジネス展開の参考になるお話を書かせて頂きます。

最近、久しぶりにバングラディシュの首都ダッカに行きましたが、次のような感動的な体験をしました。

滞在していたホテルの前に、公園がありました。毎朝5時過ぎると公園のスピーカーからアッラーアクバール(神は偉大なり)のお祈りが聞こえてきます。ホテルの部屋から下を見てみるとお祈りの後皆で体操を行っていました。せっかくなので、二日目の朝は私も下に降り体操に参加してみました。
皆で右足を挙げるところになり、頑張ってあげようとしたのですが、私はひっくり返ってしまいました。それを見た周りの皆からは、笑い声が聞こえてきました。次に同じような場面がやってきました。今度は転ばず右足をあげることができました。そうすると皆が声をあげて“やったね”と言いながら拍手をしてくれました。
この時私は、心の底から文化の違いを超えて心が通じ合ったという感動を覚えました。

今度は40年前、サウジアラビアのアルコバールに長期滞在をしていた時のことです。大きな財閥グループの息子さんと次のような体験をしました。

彼は、アメリカの大学で勉強していた時、アメリカの女性と結婚するために父親に相談したそうです。しかし父親は、もしそのままアメリカで生活するなら自分の気持ちを確かめたうえで結婚しなさい。でもサウジアラビアに帰ってきて一緒に生活するのであれば反対である。このサウジアラビアの文化の中、特に親戚とのお付き合いが大切なこの国で、愛する伴侶が本当に生活できると思うのか、言葉を換えれば本当に彼女を愛しているのかと父親から説教されたそうです。そして考えに考えた結果、地元のサウジアラビアの女性と結婚したと言っていました。
このような経緯を聞いた後、今晩その奥さんの夕食にご招待したいとの申し出を受けました。そして、最後に冗談とも受け取れないような様子で、あまりおいしくないけれど「おいしい」と言って食べてください、と言ってきました。何か物事の本質を教えてもらったような感慨を覚えました。

この二つのお話からも分かるように文化を乗り越えて心が触れ合うということが如何に素晴らしく、そしてビジネスを構築するための基本になるかということを感じた次第です。

こうしたインド以外での経験も踏まえてインドとのビジネス構築の基本となるところを経験談をベースに論述していきたいと思います。 


第一話 インド人の本音

インドのあるメーカーのオーナーの息子さんと、ピンクシティと呼ばれる美しい街、ジャイプールに出かけた時の話です。
仕事が終わり、お土産屋さんに行くことになったのですが、彼は何とそのお土産屋さんで売っていた女性のアクセサリーを5個も購入しました。

このお土産は誰に渡すのかと聞いたところ、ガールフレンドへのプレゼントであると説明してきました。色々話を聞いているうちに写真を見せてくれたのですが、なんと5人ともヨーロッパの白人の女性でした。

彼の会社は日本の自動車メーカーが販売先で、日頃日本の商品の良さや、日本の匠の心への理解、そして日本の女性の素晴らしさをよく語っていました。しかし、自分のガールフレンドになると白人のヨーロッパの人だったのです。
この時ばかりは彼もごまかせず、本当はヨーロッパ人の女性に憧れているのだ、という本音を語ってくれました。(ちなみに、自分が所有している車もイタリヤ製でした)

これは日常的な一例に過ぎないが、インドでビジネスを生み出すためには、このような建前と本音のギャップを理解し心の底にあるものを理解したうえで物事を判断していくことはかなり重要になります。この会社は日本とのビジネスの関係が長いので日本のことをよく理解してくれるはずだ、といったありがちな思い込みから話を始めると、最後の詰めの段階で本当にわかってくれているのかなとの疑念が湧いてきます。もちろん日本との関係が長ければ長いほど判断材料にその歴史の積み重ねが入ってくるわけですが、当然その他の要素、特に今回の例のような憧れの気持ちといった感性的な要素も考慮する必要があると思われます。

さらにこのような例もあります。ある日本の企業のオーナーは、インドから原料を買っています。極端に言うと、購入の契約書がなく、かつ現金で前払いしていました。そんなことしていて本当にまともな原料が出荷されますか、何をもって信用しているのですかと聞いてみると、先方のオーナーの目を見て信じることにしました、との返答が帰ってきました。でもこの会社とは現地で生産する合弁会社のパートナーにはできないとのコメントがありました。きっと自分の材料のみの購入を合弁会社に要求してくることは火を見るより明らかであるとのことでした。
本当に相手の心の底までつかんで商売を行っていることを改めて感じました。

このようにインドの歴史も含めた背景を十分に把握し、相手の心をつかみそして商売、事業の本質を考えたうえで商売の相手先を選択することが何にもまして重要であることを痛感した次第です。 

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 


加納 恭夫
元アメリカ住商シアトル支店長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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