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転職を繰り返す、インド求職者市場

コラム 「「就業観」から紐解く、インド市場とは」vol.1

「転職を繰り返す、インド求職者市場」
 JAC Recruitment India Pvt. Ltd. 代表取締役社長
 早瀬 恭
 2015年4月30   

「入社当日に姿を現さなかった」、「数日したら音信不通となった」、「気づいたら競合で働いていた」

 ともすれば、「のっぴきならないファミリープロブレムが発生した」などなど、インドの採用市場では日本で到底予想もつかない事態が発生する。弊社(JACインド)は、インドグルガオンにおいて人材紹介サービスを事業として行っているが、上記のような相談は日を追うごとに加速しており、やはり、インドにおいて「就職、就業」に対する考え方は、日本と大きな乖離があるように見受けられる。

 例えば、日本での30歳時点での平均転職回数は1回であるのに対し、インドでは、4~5回が普通である。このように、インドにおいて転職は本人にとっても、周りの人達にとっても、それは極めて普通の出来事であり、長期就業を美徳の一つとし、社員教育、文化の熟成を重んじる日系企業としては、頭の痛い問題となっている。

 本コラムでは、インドと日本の採用市場の違いを紐解き、これからインドに進出する方、及び既にインドに進出している皆さんのインドビジネス成功において、「人材」という切り口から少しでも貢献出来る内容を記述出来ればと思う。

 

さて、先ず何故、インドでは日本と比較すると転職頻度が非常に高いのだろうか。
1、給与向上における考え方
2、滅私奉公、体育会系、終身雇用といった考え方がなく、極めて個人フォーカスな考え方

 これまでの経験を踏まえると、上記2つに大きな差があるように映る。尚、これは他のアジアでも同じような事が言えるかもしれないが、上記について、インドの実例に基づいて考察を深めていきたい。

 マクロ的な視点からの考察から始めると、インドの現在の失業率は、4.9%と言われており、アジア各国と比較をすると平均か、少し高めの率となっており、2010年時の10%台から下降し、またここから上昇トレンドにあるという見方がある。この背景には、就業者にとって選択肢が減少しているということ、採用側の企業が個人の成長に目が向くようになっていること、そして転職へのマインドが強まりつつある傾向が挙げられる。

 

image1※Source: Trading Economics

 

譲れない条件、「給与向上」

 どの国の採用事情においても、日本と最も異なるものに、「転職理由」が挙げられる。これは皆さんご存知の通りですが、「給与向上」というのは、転職の理由の代名詞とさえなっている。これは、勿論インドでも例外ではなく、むしろこだわりすら感じる。

 例えば、「通勤距離が長いので、もっと近場で職場を探したい」という転職希望者が弊社に相談に来たとする。何とか自宅の近くの会社から内定をもらい、これで無事、転職活動終了かと思いきや、「給与向上は15%上昇を希望します」と言い出す。通勤距離を短くしたい!というのが転職理由であるのは間違いないが、給与向上をしたい!というのも転職理由、というか転職する上での譲れない条件となっているのだ。

 この背景には、インドにおける年次昇給率が約10%程度であり、それに対し、弊社昨年のデータから引用すると、転職の際の給与上昇率は約23%となり、明らかに転職をした方が、たくさんお金をもらえる環境下となることが大きく起因している。

 年次昇給直後を狙って、転職活動をする転職希望者もおり、その場合、10%上昇した給与から、さらに20%程度の上乗せを要求してくるケースも散見される。そんな虫の良い話があるかと思いきや、これがインドでは普通の出来事の1つとなってしまっている。

 

image2

 

隣に座る彼も、潜在転職検討者? 

 上記のため、インドでは転職に対する抵抗がほとんどない。それに加えて、個人情報保護といった概念等も極めて希薄である。LinkedInという在籍企業等を提示するソーシャルネットワークサービスでは、インドは登録者が発祥国のアメリカに次いで、世界で2番目に多い国である。また、インド最大の転職サイトでは、総登録者数が4,500万人以上という話もあり、そのほとんどがあまり管理される事なく、サイト上に個人情報と共に溢れてしまっているのが現状となっている。

 我々もそうだが、人材エージェントが電話をして、転職を検討しているか?と持ちかけると、ほとんどの人が「If there is better opportunity…」と回答する。ここでいう、opportunityとはやはり給与向上であり、加えて仕事内容や福利厚生などである。

 採用後の離職防止策等については、次回以降にて記述したいと思うが、採用時の注意点としては、転職回数は日本基準ではなく、インド基準に設けて選考される事も一つの選択肢かと思う。

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 (お問い合わせ先:jacindia@jac-recruitment.in

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著者プロフィール

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早瀬 恭
JAC Recruitment India Pvt. Ltd. 代表取締役社長
www.jac-recruitment.in/index-jp.html

 

過去10年近く一貫して人材ビジネスに携わり、これまで500社以上の企業の採用課題解決に従事。 
特に製造業での知見が深く、大阪・京都・東京・名古屋と、日本各地の製造業への紹介実績がある。 
アジア各国への出張経験、及び駐在経験を経て、2014年よりアジア最大級の日系人材紹介会社である、 
ジェイエイシーリクルートメント、インド事業責任者。

 

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