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Make in India(メイク・イン・インディア)

コラム「Make in India(メイク・イン・インディア)」vol.2

 Make in India(メイク・イン・インディア)
 株式会社チェンジ プリンシパル・コンサルタント
 Saurabh Srivastava 
 2015年5月14日   

   

 

make in india


「Come, Make in India!(インドに来て、インドで作ってほしい)」

 これは、過去数十年の歴代の首相が発表した宣言の中でおそらく最も重要なものだろう。2014年8月15日のインド独立記念日にモディ首相が行ったインドの変革の必要性に関する演説の中で、産業界、投資家、さらにはもっとも重要なインド国民たちが長年求めていたことを話した。

 モディ首相が2014年9月24日に正式に”Make in India(メイク・イン・インディア)”政策を発表した際に、世界中がインドに対してこれまで持っていた “官僚主義”的なイメージを、”赤じゅうたん(外国資本からの投資を盛大に歓迎という意味)”的なイメージに変える必要性とともに、競争や公平な取引を促すような環境を世界の投資家や企業に提供することを強調した。モディ首相は「投資家は、短期的な投資インセンティブではなく、継続的な成長環境や安全性を重要視して投資判断を行うだろう。我々は投資家の投資を無駄にせず、そのための安定的な政権運営を保証する。」とモディ首相は付け加えた。

 

“Make in India”とは

 Make in Indiaとは 国内外の企業からの投資を促進し、インドを世界の魅力的な製造ハブに発展させることで、インドの高い経済成長率と雇用創出を目指すために、簡易的で効率的な行政を実現することを目的とした政策である。インド政府はこの”Make in India”政策によって、インドの製造業によるGDPシェアを現在の15-25%から60%に向上させることを目標としている。

 この国家政策は、投資促進、イノベーション育成、人材育成、知的財産保護、高品質の製造インフラ構築を実現させる取組みである。この政策には、外国企業による拠点設立を促し、インドを重要な製造拠点に位置付けるためのプロジェクトが含まれている。

 中国で様々なコストやリスクが上昇し、世界の製造拠点としての注目を失いつつあり、多くの大企業が中国の代わりとなる拠点を探しているという状況のなか、”Make in India”政策はインドの製造業を変革させ、従来のサービス産業によるインド成長ストーリーを書き換え、インド経済を成長軌道に戻すことが期待されている。

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photo by Narenda Modi Official

 

新しい投資促進政策

a. インドにおける事業開始手続きの簡素化

“Make in India”政策では、インドで新たにビジネスを実施運営する際の複雑な手続きを簡素化し、事業開始のスピードと透明性を提供するための下記のような施策が含まれている。

 ・従来、法人設立の際にインド企業省に提出していた申請書を8枚から1枚に簡素化
 ・産業ライセンスや産業起業家覚書(IEM)のオンライン申請が可能
 ・産業ライセンスの有効期間を3年に延長
 ・中央政府のすべての部門の行政サービスの窓口をeBizというポータルサイトに統合
 ・環境クリアランス取得のオンライン化

 

b. 新しいインドのための新しいインフラ構築
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スマートシティ、産業大動脈、低価格住宅、鉄道– 

 2014-2015年のインド国家予算において、インド政府は大都市周辺の中規模都市を都市化させる取組みとして、“100のスマートシティ”構想を発表した。今期、このプロジェクトに対して、706億ルピー(約1,400億円)を予算化した。この“スマートシティ”構想では、新中間層向け住宅の提供も見込んでおり、これらのプロジェクトを促進させるために、最低建設面積と最低出資額に関するFDI規制がそれぞれ50,000㎡から20,000㎡、1,000万ドルから500万ドルに緩和された。さらに、プロジェクト費用の30%以上が低所得者層向け住宅の建設に充てられる場合、上記の最低建設面積および最低出資額に関する条件は免除される。

 また、国家産業回廊局(National Industrial Corridor Authority)の本部がプネに設置され、製造業の発展や都市化の促進に欠かせないスマートシティ間の輸送効率の向上を目指し、産業大動脈の開発を進めている。現在、パンジャブ州、ハリヤナ州、ウッタルプラデーシュ州、ウッタラカンド州、ビハール州、ジャールカンド州、西ベンガル州の7つの州にまたがる産業スマートシティの開発を進めるためにアムリトサル-コルカタ産業大動脈のマスタープランが作成されている。

 同様に、デリー・ムンバイ産業大動脈の一部として、Dlolera、Shendra-Bidkin、Greater Noida、Ujjain、Gurgaonですでに5つのスマートシティプロジェクトが開始されており、チェンナイ・バンガロール産業大動脈については、Ponneri、Tumkur、Krishnapatnamの3つの新しい産業集積地のマスタープランの作成が進んでいる。修正版産業インフラ改善スキーム(Modified Industrial Infrastructure Up-gradation Scheme)では、さらに21の産業プロジェクトが承認された。

 低価格住宅プロジェクトに対して、国家住宅銀行(National Housing Bank)から400億ルピー(約800億円)の予算が割り当てられた。また、LucknowとAhmedabadのメトロ建設プロジェクトの開発に10億ルピー(約20億円)が割り当てられている。

 上記のインフラプロジェクトの他、政府は労働力不足が経済成長を阻害しないよう人材のスキル開発にも積極的に取り組んでいる。

 

各産業に対する投資規制緩和

 インド政府は様々な政策レベルにおいて改正を行い、防衛産業、建設業、鉄道等のインドにおける高付加価値産業に対する投資額の上限や規制を緩和し、グローバル企業によるこれらの産業への参入を歓迎している。

 ・防衛産業分野では、FDI上限出資比率が25%から49%に引き上げられた。防衛産業に
  対するポートフォリオ投資では24%までの投資が自動認可ルートで可能となった。
  さらに、最新技術の導入を条件とした場合は100%の出資が場合によっては許可される。
 
 ・鉄道インフラ分野では、PPPによる郊外大動脈のプロジェクト、高速鉄道、貨物専用線、
  鉄道の電源設備や大量高速輸送システム(Mass Rapid Transport Systems)の建設、
  運営及び維持管理について、100%のFDIが自動認可ルートで許可された。

 ・医薬品部門のFDI規制が見直され、医療機器の製造において100%までのFDIが自動認可
  ルートで許可された。

 ・保険・年金分野では、FDIの出資上限が26%から49%に引き上げられた。
 
 ・通信分野と単一ブランド小売分野においても、グローバル企業からの資本参加を促進させる
  ためにFDIの投資上限額が緩和された。

 

投資機会

 2015年度国家予算では、最優先プロジェクトの調達額として240億ドルの予算が割り当てられている。(その半分はPPP(官民連携)によるものではあるが。)また、今後5年間で実行予定の主要プロジェクトにも340億ドルの予算が確保されている。

 製造業においては、下記の25分野が特別重点分野として指定されている。 

  ・自動車             ・自動車部品
  ・航空              ・バイオテクノロジー
  ・化学              ・建設
  ・防衛              ・電子機器
  ・電子システム          ・食品加工
  ・IT&BPM            ・皮革
  ・メディア・エンターテイメント  ・鉱業
  ・石油&ガス           ・製薬
  ・港湾              ・鉄道
  ・再生可能エネルギー       ・道路・高速道路
  ・宇宙工業            ・繊維・衣類
  ・火力発電            ・観光・ホスピタリティ
  ・ウェルネス

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インド大使館では、MAKE IN INDIAに関する詳細を日本語で公開している。
くわしくは、インド大使館のMAKE IN INDIAのページ
画像:MAKE IN INDIAの日本語版紹介資料より

各国の反応と今後の展望

 2014年9月24日に”Make in India”政策が発表されて以来、インドへのFDI流入額は56%増加した。2014年10月から2015年2月までの期間におけるインドへのFDI流入額は、前年同期間の135億ドルに対して、212億ドルに増加した。製造業のみに関しても、FDI流入額は前年の48億ドルから45%の増加にあたる69億ドルに達した。

 モディ首相やその他の各大臣は、インドが投資家にとって魅力的な投資先であることをアピールするために他国を積極的に訪問しており、商談や単なる関心から実際のアクションへとつなげることに成功していると言えるだろう。米国のオバマ大統領はインドの建国記念日に訪印し、インドに対する政府主導の投資や融資のために40億ドル規模(約4,800億円)の予算を確保し、同国の経済関係の強化を図ると発表した。

 また、モディ首相がフランスを訪問した際に、オランド大統領はインドに対して20億ユーロ(約2,700億円)の投資を行うとともに、PuducherryやNagpurを含む3拠点のスマートシティの建設計画を支援することを約束した。フランスの航空機製造大手Airbus社も、モディ首相の訪問時にインドからの部品調達を20億ドルに拡大させると発表した。

 2015年4月30日、インド政府と日本政府は日本からインド企業に対する投資を今後5年間で2倍に増加させるための共同声明を発表した。この計画は、特定地域におけるタウンシップの開発、投資やインフラ開発の促進、IT技術のさらなる発展や協力、戦略セクターにおける協力促進、そしてアジア太平洋における経済統合の5つの主要カテゴリーに分類される。

 2015年4月にドイツで開催された国際産業技術見本市のHannover Messeにおいて、インド州営の工具製造会社HMT社は、ドイツのEnit GmbH社とMoUを提携し、トータル・エンジニアリング・ソリューションを展開すると発表した。さらに同社は、スイスのNum Controls社との提携によるCNC制御装置やシステム、ドライブの製造に関するMoU、及びドイツのFT Machine Tools社との提携によるインドでのしごきスピニング加工機の製造に関するMoUを締結した。その他、REIL社やInstrumentations社もインド国内での製造委託に関するMoUを締結している。

PM Modi's visit to Germany
ドイツ国際産業技術見本市Hannover Messeを訪問するモディ首相
photo by Narenda Modi Official

 中国の通信機器最大手Huawei Technologies社は、インドにおける製造能力の拡充により、法人向け事業を拡大させる計画を掲げている。さらに、米国のネットワーク・ソリューション企業Brocade社は、New IPイノベーションをサポートする新たな拠点として、今後5年間でインドに3億ドルを投資すると発表している。米国でジェネリック医薬品を製造するMylan社も同様に、アンドラ・プラデシュ州での事業展開を拡大させるために50億ドルの追加投資を行うと発表した。ドイツの自動車大手Volkswagenグループ傘下のScania社は、現在バンガロールで運営している30億ルピー規模のバス製造工場に対して、今後5年間で生産能力及び投資を2倍に拡大させる見通しだ。さらに、ドイツの化粧品大手Beiersdorf AG社が展開しているパーソナルケアのNivea India社は、第1拠点目となるグジャラート州のSanand工場の調達を開始した。

 モディ首相によるドイツや米国、オーストラリアやカナダなどへの訪問は、海外の投資家において非常に好感な反応を生み出している。様々な政策レベルにおける改正、規制の緩和や産業セクターの開放などにより、投資はさらに促進される見通しである。既にいくつかの種が芽を出し始めているが、今後さらなる効果が見込まれている。

 

 次回のコラムでは、産業分野別に投資機会と魅力について見ていきたい。第1段として、自動車、自動車部品、航空、バイオテクノロジー、化学、建設分野を取り上げる予定である。

 

 

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著者プロフィール

Saurabh

 

Saurabh Srivastava
株式会社チェンジ  
プリンシパル・コンサルタント

 

これまで数多くの民間企業や国際機関に対し、新興国市場における事業戦略の策定やマーケット主導型の製品開発を支援。3年前から東京に在住し、日本企業がインドやその他各国で事業展開する際の戦略策定支援や現地調査の設計・実施などの幅広いサポートを行っている。

 

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