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インド企業とスムーズに商談を進めるためには

コラム「インドのビジネスを構築するにあたって」 vol.3

 インド企業とスムーズに商談を進めるためには
 元アメリカ住商シアトル支店長
 加納 恭夫
 2015年6月25日

 

 インドで商談を行っていた時のことです。ふと台湾での駐在時代の経験を思い出したことがありました。

 もう28年前になりますが、台湾では日本語が堪能な人がたくさんいました。日本から出張に来たビジネスマンは日本語で会話がスムーズに成り立つことから、彼らの語る日本語をベースに話し合い、その結果、彼らの思い通りに交渉が進んだと思い込むことがありました。ところが、話は思っていた通りに進まず、いつも騙されたという気持ちに襲われてしまいます。

 たとえ日本語が通じて話がスムーズに伝わっても、その後、両社にはどうしてもギャップが生まれることがあります。そのギャップを埋め、真の相互理解を生み出すのが商社の務めであり、最後は解決するのですが、そのために以下のようなことをしたのを思い出しました。

 日本と台湾の会社の言っていることを日本語と英語で黒板に書き、それぞれの主張の中で明確になっていない箇所に括弧を作り、この点がクリアでないので括弧の中に文章を入れてもらうよう、お願いしました。
括弧の中に自分で文章を書かなければならないとなると、前後の文章をよく読み、その意味を理解するための質問が相互に出てきてそして括弧の中を書き上げていきました。
そして最後に、両社が本当に納得したということでサインをしてもらうことにしました。

 さて日本の方が帰国した後、“言った、言わない”の議論になったことはありましたが、黒板に書いた文章に戻り、すでにその問題点は解決していますね、と話を運ぶことで最終契約にたどり着きました。

 MOM(Minutes of Meeting)という概念をアメリカ駐在の時も勉強しました。日本でいう議事録のようなものです。文化の違う人々が一つの国の中で一定のルールに従って物事を遂行するアメリカでは、必ずMOMを作りお互い議論したことを文章で残すという習慣が徹底されています。まさに台湾の黒板で書いたことが当たり前のビジネス習慣として行われていました。

 インドで商談を行っている際、こんな経験が頭によみがえってきたのです。

 余談になりますが、インド人は「OK、了解です」と英語で言いながら頭を横に振ります。日本の文化あるいは他の国の文化でも、頭を横に振るのは「NO」と感じるのが当たり前です。そうした文化の人が頭を横に振って「OK」と言われてみても本当に「YES」なのか疑いたくなります。こと左様に、インド人はあいまいな表現をすることが多く、議論した後で違うことを言い出すこともよくあります。それに対して前回そんなこと言わなかったじゃないかと反論しても、何とも納得性の高い表現でなぜ違うかのexcuse(言い訳)をしてきます。

 そうなってくると多くの日本人は話をどう進めていけばよいのか、相手の話をどこまで信用してよいものか、わからなくなってきます。この商談中もそうでした。
そこで黒板の話、MOMの話を思い出し、自分で議論した内容を書き出して、これであなたの言うことは間違いないですね、と確認のサインをもらうことにしました。

 最初、先方は嫌がりました。日本人こそ明確に表現せず、あいまいな話で終わってしまうくせして、こんなことを要求するなんて、という気持ちではないかと思われましたが、私がお願いした通り、文章をよく読み、わからない部分は質問し、一部訂正し、そのうえでサインをしてくれました。

 その後も、話が異なることも多々ありましたが、MOMに戻ってこの時点でこういう理解をしていましたね、と話を進めることで真の相互理解が生まれてきました。

 インドでビジネスを作る中での最も基本となることを経験の中から抽出してみました。

 確かにインド人はその場限りのごまかしが多い、そして日本人は明確にものを表現せず、曖昧である(上司の確認を取らないとYES.NOをはっきり言えない)、といったそれぞれの問題点をかかるやり方で防ぐことができるようになります。上述したものは、これからインドの方々とビジネスを構築される方々に最初にアドバイスすることです。

 この文章を書きながら入社二年目のころの体験談を思い出しました。セメントの輸出事業を担当していた時のことです。

 セメントの輸出は船をチャーターする用船契約が必要であり、いろんなポジションの船をうまく用船して無駄のない船積みを行うことが商社の勤めでした。また、オファーの有効期限が一日から三日ぐらいが当時の常識で、その期限内に商売を決めかつLC(信用状)を開設させなければなりません。この時も、時差が6時間あるドバイのお客さんと商売を一日で決めなければなりませんでした。

 普段、外国とコミュニケーションを取る際は、今のメールと同じように、出したものに返事が返ってくるというやり方でテレックスを出電、入電をしていたのですが(電報から変わったところでした)、この時は時間がない、電話では証拠が残らないという問題があったのでKDD(国際電信電話株式会社)まで行き、そこでテレックスというタイプライターを使ったライブ電報のような仕組みを使い会話をしました。(このおかげで今でもタイピングの早さには自信があります)テレックスでは会話した内容が全て紙(テープ)に残るので、それこそ“言った、言わない”の議論にならないよう会話の内容を残しておくことができました。また、別途稟議書を書いていると時間が間に合わないのでその会話の証拠書類を、翌朝上司に見せ承認をとることにも使えることを考えだし、お金はかかりましたが、短時間ですべてを解決する方法としてかかるやり方を多用しました。

 その中でお客さんが言ってきた言葉が今でも思い出します。“Let’s make hay while the sun shines” 太陽が照っている間に全部刈り取ってしまおうという意味です。先方も私がとったやり方を理解し、もっとも効率の良い買い方ができたわけです。上述した話につながるものがあります。年寄りの自慢話として聞くだけではなく時代時代に応じて工夫をしていたことをご認識ください。

 

以上

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 


加納 恭夫
元アメリカ住商シアトル支店長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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