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Make in India:航空&航空機産業

コラム「Make in India(メイク・イン・インディア)」vol.4

 Make in India:航空&航空機産業
 株式会社チェンジ プリンシパル・コンサルタント
 Saurabh Srivastava 
 2015年7月16日   

   

 

make in india

 今回は、世界で最も急速に成長していると言われるインドの航空産業および航空機産業について、分野別で見ていきたい。

 

航空産業

航空産業の概要

 現在、インドの航空産業(民需)は約160億ドル規模と推定されており、世界第9位である。今後もこの急速な成長が続く見通しであり、2020年までには世界第3位、及び2030年までには世界最大の航空市場になると予測されている。また、総旅客数は2013年度の時点で米国、中国及び日本の次に多い1億3,930万人であった。

 近年のインドの航空産業では、格安航空会社(LLC)の台頭や空港の近代化、国内航空会社への外国直接投資(FDI)の拡大、最先端IT技術の活用、地域間の接続性向上に対する関心の高まりなどの要因が成長を牽引している。また、航空旅行の利用が急増している中間層の拡大も成長を促進させると予測されている。航空産業の活発化に伴い、航空旅客輸送(エアライン)や航空貨物輸送、空港インフラ、MROビジネス(航空機の整備、修理、オーバーホール)などが成長分野になる見通しだ。

 インドの航空産業では長年、エア・インディアやインディアン・エアライン、インド空港局(Airport Authority of India)などの国営プレイヤーによる独占状態が続いていた。しかしながら、近年は航空業の民営化や規制緩和が進み、民間セクターの拡大が加速している。インドの航空産業における民間投資額は2012年末の時点で55億ドルであるが、2017年までには93億ドルに拡大すると予測されている。

 

分野別の市場


◆航空旅客輸送(エアライン)

 国民の所得の向上やLLCの台頭に伴い、インドでは航空旅客需要が急増している。航空による総旅客数は2007年度から2014年度の間に年平均7%の成長率で伸びており、2013年度末の時点では1億3,930万人であった。2013年度以降も年平均16%増の急成長が続き、2019年度には4億2,100万人に到達すると予測されている。

 航空旅行の需要は国内旅行及び国外旅行共に成長傾向にある。国内線の航空旅客数は2007年度の8,700万人から2014年度に1億4,000万人へ増加、そして国際線の航空旅客数も同様に2007年度の3,000万人から2014年度に5,100万人へ増加した。

インドにおける航空旅客数

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(出所:インド空港局)

◆航空貨物輸送

 インドでは航空による貨物輸送の需要も増えており、航空貨物輸送量は2007年度から2014年度までの間で年平均6%増の成長を遂げた。2032年までには現在の輸送量の約5倍に及ぶ1,140万トンに増加すると予測されている。その内、海外貨物輸送は全体の60%以上を占めており、輸出入の拡大がさらに市場成長を牽引する見通しだ。

インドにおける航空貨物輸送量

  image 2
(出所:インド空港局)

◆空港インフラ

 これまでインドでは、国営のインド空港局にのみ空港の建設および運営が認められていた。しかしながら、2008年の新空港政策により空港の民間運営が認められ、新規空港の開発や既存空港の改修工事、空港運営などが民間セクターに移行している。

  インド空港局 は、2020 年までにインド 全土で250の操業可能空港を建設する計画を発表している。また、空港の近代化やアップグレードに向けて2013年から2017年の間に13億ドルの投資を行う予定である。

 現在インドにある449の空港およびその他の航空保安施設の内、インド空港局は125を運営している。その内、国際空港は11つ、税関施設は8つ、そして国内空港は81つである。主要都市であるデリー、ハイデラバード、ハイデラバード、コーチン、およびムンバイの空港運営は民間企業に委託されている。また、主要空港6つ(デリー、コルカタ、ハイデラバード、チェンナイ、バンガロールおよびムンバイ)が国内の航空総旅客数の約60%を占めている。

 

◆MRO(航空機の整備、修理、オーバーホール)

 インドのMRO分野は発展が遅れており、国内エアライン会社の航空機の整備はほとんどが海外企業に委託されている。インド最大のLLCキャリアであるインディゴ(IndiGo)はスリランカ航空と航空機メンテナンスの委託契約を締結し、スリランカ航空が保有するコロンボの航空機整備施設で自社のエア・バスA320型機の整備を行っている。また、同じくジェット・エアウェイズ(Jet Airways)やエア・インディア(Air India)も海外のMRO企業に自社の航空機のメンテナンスを委託している。

  現在5億ドル規模と推定されているインドのMRO市場は、航空業の拡大に伴い2020年までに15億ドルに到達すると予測されている。航空産業の発展に伴うMRO需要を見込み、近年カルナタカ州やマハラシュトラ州などの各州政府は、国内のMRO分野の発展を促進させる税制優遇制度の政策に取り組み始めている。

 

産業政策

 インド政府は航空産業の発展に向けて、特に空港インフラの開発に重点を置き新規空港の建設や既存空港の近代化を推進している。同政府は2020年までにインド全土で500の空港が必要になると予測しており、官民連携(PPP)方式を通じた民間セクターの促進に注力する見通しだ。また、同方針に伴い各州政府も資金調達や用地分譲、タックス・ホリデー(免税期間)などの優遇制度の提供に取り組んでいる。

  • インド政府は2008 年の新空港政策により民間セクターによる新規空港建設を認め、官民連携(PPP)政策による空港への投資を奨励している。
  • インド政府は、ナヴィ・ムンバイ、モパ(ゴア)における新規空港やインド空港局が運営する数か所の既存空港、低コストモデルの計 50 の空港(PPPを含む)を建設すると発表している。
  • インド航空局は 2013年から2017 年の間に空港の近代化とアップグレードに重点を置いた、非都市部への13 億ドルの投資を予定している。
  • インド政府は、国営航空会社エア・インディアの民営化に向け、近年特別委員会を設置した。
  • インド政府が打ち出している地域間航空接続性政策では、非都市部の指定空港に乗り入れている航空会社に対し、着陸、駐機、ナビゲーションにかかる費用の免除を認めている。同政策により、2015年度から5つの地方空港の建設が開始する予定だ。
  • インド政府は、定期航空サービスに使用される航空機の修理や、保全に使用される航空機エンジン・部品に対して関税を免除している。

 

FDI規制

現在インドの航空産業では、下記のFDI規制が定められている。

新規空港プロジェクト
・100%の FDI が自動承認ルートで認められている。

既存空港プロジェクト
・74%までのFDIが自動承認ルートで認められている。
・74%以上 100%までのFDI に関しては、政府ルートによる認可が必要となる。

ヘリコプターサービスや水上飛行機
・100%までのFDIが自動承認ルートで認められている。

グランドハンドリング・サービス
・49%までのFDIが自動承認ルートで認められている。
・49%以上74%までのFDIに関しては、政府の特別認可が必要となる。
・非居住インド人 (NRI) による投資は、100%のFDIが認められている。

保全・修理機関、飛行訓練学校、技術訓練学校
・100%までのFDIが自動承認ルートで認められている。

航空会社
・外国航空会社は定期または非定期の空輸サービスを行うインドの会社に 49%まで投資することが許可されているが、政府ルートの認可が必要となる。

 

投資動向

 インド商工省産業政策促進局(DIPP)の公表データによると、航空産業に対する外国直接投資(FDI)の流入額は、2000年4月から2015年4月までの累計で5億7,017万ドルであった。1993年に民間航空会社の参入が認められて以降、同国の航空産業では民間セクターの拡大が急速に進んでいる。今後も同産業には2012年から2017年の間に総額121億ドルが投資され、その内の93億ドルが民間セクターからの投資になる見込みである。

  • アジア最大LLCのエア・アジアは、2014年6月にインド最大の財閥タタ・グループと合弁会社を設立しインドの各地を結ぶ国内便の運航を開始した。
  • さらに、タタ・グループは2014年8月にシンガポール航空とフルサービスキャリアを展開する合弁会社を設立し、2015年1月に「ビスタラ(Vistara)」の運航を開始した。現在はデリーやムンバイ、プネ、ハイデラバード等の主要都市に拠点を設けており、今後も他都市に展開していく予定だ。
  • インドのMROサービス企業Air Works India Engineeringは、ネパールのYaksa Investmentと合弁会社を設立し、国内および海外のエアライン会社に航空機メンテナンスのサービス提供を開始する。
  • インドの大手航空機製造のヒンドスタン航空機(Hindustan Aeronautics Limited)と仏チュルボメカは、20億ルピーを投じバンガロールにMRO施設を設立すると発表している。
  • グーグルは、航空券の価格やフライトのスケジュールを検索できるサービス「フライトサーチ(Flight Search)」をインドで提供開始した。

 

航空機産業

航空機産業の概要

 航空旅客需要や国防支出の拡大に伴い、インドでは航空機の需要も急速に伸びると予測されている。世界最大手の航空機メーカーであるエア・バスは、インドの航空市場が今後10年間において、年平均10%以上という世界平均の2倍以上に及ぶ急成長を遂げると予測している。

 インドの航空会社各社は、2020年までに全体の航空機数を800機まで増やすことを計画している。また、今後5年間では300機のビジネスジェット、300 機の小型飛行機、250機のヘリコプターが新たに必要となると予測されている。

 米国の大手航空機ボーイング社は、今後20年でインドの航空機需要は約2,050億ドル相当の1,600機になる見通しであると2015年に発表している。また、欧州エア・バスも2014年に向こう20年におけるインドの航空機需要を1,291機と予測しているが、航空旅客数の急速な成長に伴い、同社はこの需要予測を上方修正する見通しを発表している。また、同社はインドの航空旅行客数について、20年後に現在の6倍に急増すると予測している。

 インドにおける商業航空機の市場は今後5年間で250億であると予測されている。また、インド政府の軍事予算では、全体の約15~20%に相当する約150~200億ドルが軍用航空機に割り当てられている。

 

投資動向

 インドの航空機産業では、世界的メーカー米ボーイングや欧州エア・バス、および国内大手のヒンドスタン航空機やマヒンドラ・エアロスペースなどのメーカーが国内エアライン会社およびインド軍に航空機を納入している。また、航空機部品に関しては市場が発展しており、大手ボーイングやエア・バスもインドの国内メーカーからの部品調達を拡大させる計画を発表している。

  • エア・バスは、今後インドを航空機部品の生産拠点として確立させるために、今後5年でインドから総額20億ドルの部品調達を行うと発表している。その一環として、同社は既にバンガロール本拠の部品メーカーDynamitic TechnologiesとAirbus A330機型の構造品を調達する契約を締結している。
  • 大手航空機メーカーであるボーイングは、メイク・イン・インディア政策のもと、インドに航空機の製造拠点を設立する計画を発表している。
  • GEの航空事業GEアビエーションは、インドの複合企業マヒンドラ・グループ傘下マヒンドラ・エアロスペースと航空機の構造体の製造において技術提携する計画を発表した。マヒンドラ・エアロスペースは欧州エア・バスから航空機部品の大型契約を受注している。
  • インドのヒンドスタン航空機は、仏エンジンメーカーのチュルボメカとの提携により、インド軍向けのヘリコプターエンジンの生産を手掛けている。
  • ドイツ鉄鋼大手のティッセンクルップ・エアロスペースは、インドの航空業に参入しバンガロールに生産拠点を設立する計画を発表している。
  • バンガロールに本拠を置く航空機部品メーカーUTC Aerospace Systemは、米連邦航空局による部品製造承認を取得した。これにより、インドで生産された航空機部品を米国の航空機メーカーに直接納入することが初めて可能となった。

産業政策

  • 航空機の保全、修理、オーバーホールに使用される部品 やテスト装置に関しては、基礎関税控除が適用される。
  • エアライン会社により使用される航空機の修理や、保全に使用される航空機エンジン・部品に関しては、関税が免除される。
  • Tamil Nadu industrial Development Corporation(タミル・ナドゥ州産業開発公社)は、航空機部品製造クラスター専用の工業団地を設立し、同産業の発展を推進している。

 

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著者プロフィール

Saurabh

 

Saurabh Srivastava
株式会社チェンジ  
プリンシパル・コンサルタント

 

これまで数多くの民間企業や国際機関に対し、新興国市場における事業戦略の策定やマーケット主導型の製品開発を支援。3年前から東京に在住し、日本企業がインドやその他各国で事業展開する際の戦略策定支援や現地調査の設計・実施などの幅広いサポートを行っている。

 

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