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インドの安全とインドの危険(1)

コラム「違いは前向きに考えてみる」vol.4

 インドの安全とインドの危険(1)
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2015年7月21日   

 

 「インド人って毎日カレー食べているの?」の次くらいに聞かれるのが「インドで暮らすのって危なくない?」という内容です。私見としては、日本より安全な国を探す方が難しいと思います。

 だからといって、インドは危険な国と一言で言い切ってしまうのも安直過ぎます。まだインドに行ったことのない方の気持ちを一方的に不安にさせるのではなく、少しでも不明な部分を解消できればと思います。

 

 日本人がインドで住んだり、出かけたりすることが多いのは、基本的に都市部か、観光地です。デリーやムンバイのように都市部かつ観光地である場所もありますが、イメージ的には広い都市部の中に観光エリアが点在する感じです。都市部なのか、あるいは観光地なのかで安全性は異なり、日中帯と夜間帯でも状況が変わってきます。

 説明は後でするとして、私の実体験を基に表を作ってみました。

image 1

 

 上記の表を見ていただいて、色々な意見が出てきて当然だと思いますし、私が知らない情報が更に共有されることになれば、より良いことだと思います。

 各項目を説明する前にもう一つ区分したいのは、「悪意のある危険」と「悪意のない危険」です。悪意のない危険は自分の対応次第で比較的回避可能ですが、悪意のある危険は自分がいくら用心しても巻き込まれてしまう可能性があります。

 

<都市部・日中帯>

 デリーなど都市部の日中はかなり安全です。そもそも、都市の日中でさえも危険な場所なら、外務省が渡航に関してなんらかの勧告を出しているはずです。

 悪意がある危険として注意が必要なのは、宗教紛争に関係する裁判結果発表日などの爆破テロや暴動です。滅多にないのですが、そういう時は予告やインド政府からの注意喚起がありますので、インドに長期滞在する方は大使館へ在留届けを出して、情報をメールで受け取れるようにしましょう。

 悪意がない危険としては、交通事故やインフラ不備によるトラブル(穴に落下、大雨による道路冠水など)でしょうか。その他、敢えて書くなら衛生管理の基準が違うので、道端の屋台などでの食中毒なども危険ですね。

モンスーンシーズンに大雨で冠水する主要道路
image

道路には穴が開いていたり、マンホールの高さが道路より高かったりするところもあり、
地理を知らない人間が運転する時は細心の注意が必要である。

 

 なお、交通事故ですが、デリー近郊で数年車を運転していて気付いたのですが、日中は大事故が起こりにくいです。

 理由は3点あります。1点目は、大型車両のデリー通過時間帯が制限されていることです。交通渋滞緩和のための朝と夕方の通勤帰宅ラッシュ時には、大型車両はデリーを移動できないルールになっています。2点目は、先ほど記載しましたが、都市部での大渋滞です。大渋滞により、スピードを出すことができないため、ぶつかっても擦れたり、軽く凹んだりする程度で済みます。そして3点目ですが、渋滞の原因でもある脆弱な道路インフラです。道路に穴が開いていたり、道に突然木が生えていたり(切ってはいけない木らしいです)、道路工事のために急に道が封鎖されていたりと、道路は毎日姿を変え、ドライバーを慎重にさせます(慎重=ルールをちゃんと守るということではないようですが)。

 デリー駐在の日本人の方が、車で移動中に事故に遭い、その写真をfacebookなどでアップして実況したりしますが、それができるのも都市部の日中の交通事情が大きな怪我をするような大事故に繋がりにくい状況だからです。

 

<都市部・夜間帯>

 夜間になると状況は一変してきます。

 まず、女性は仕事が終わったらすぐに帰りますし、一人では出歩きません。私の会社の社員やその家族のインド人が言っていましたが、「夜は悪い人間が街に出てくる」そうです。

 悪意ある危険としては、金品を狙った強盗や女性を狙った強姦です。その前後関係からその人の人間性や会社のイメージが悪化するので、日本のニュースやSNSなどではあまり表に出てきませんが、日本人も巻き込まれた事件は最近でも起きています。正直、インド人が「夜は危ない」と言っているのに、そういうことをする人の考えはよく分かりませんが。
また、駅や長距離バス乗り場などでの詐欺(その電車は事故で来ない、新しいチケットを手配してあげよう等)も、場合によっては怪我をさせられるような危険の可能性があります。(特に日本語で)気軽に話しかけてくる人にははっきりNoと言いましょう。

 午後9時を過ぎ、帰宅ラッシュも落ち着くと、道も空いてきて車もスピードを出し始めます。悪意がない危険と言えるか微妙ですが、スピードの出し過ぎや飲酒による大事故が夜には頻発します。朝早く遠くのお客様のところまで行く途中に、何台クラッシュしている車があるかを数えていた時もありました。冬になると内陸部のデリーは気温が1桁台にまで下がり、夜間にアルコールを常用するオートリキシャやタクシードライバーが増えます。夜間にどうしてもそれらを利用する場合は、交渉時に酒臭くないか、シャツの胸ポケットに小瓶が入っていないか気をつけましょう。

日本人も多く住むデリー空港に近いグルガオン市の高速NH8上での炎上車

image 3NH8はデリー西部を南北に走り、デリー国際空港への入口となる近代的に整備された高速道路。
それ故に速いスピードを出せてしまい、深夜には飲酒と組み合わさってこういった事故が起きやすい。

 

 ちなみに日本人の駐在員が住むような住宅地の場合、その周りを塀で囲み、夜間もゲートには門番が居るコロニーと呼ばれるエリアか、日本の高層マンションのように売店やジムなどを施設内に持つタワー型アパートなどはやはりガードマンが居て、夜間でも安全でジョギングや散歩をしている人などもいます。

高級住宅地エリア(コロニー)入口
image 4

ゲートの右奥にガードマン待機所がある。夜間はゲートを閉めて、
開けるためには訪問先の住所を聞かれたり、車のナンバーを控えられたりすることもある。

コロニーエリアとビレッジエリア
image 5

コロニー(奥)には比較的裕福な人が住み、ビレッジエリアと呼ばれる地域は低所得者層が多い。
コロニーの住人はビレッジエリアの住人を使用人として雇うため隣接している。

 

 ここでひとつ取り上げたい話題があります。2012年12月の夜間に首都デリーで起きた違法バス内での若いインド人女性への集団レイプと、恋人も含めたカップルへの激しい暴力事件です。このニュースは日本でも大きく報道されました。この事件によりインドへの旅行者が翌年の2013年には25%も減少したとインド商工会議所連合が発表するほど、世界的に衝撃な事件でした。

 この事件から暫くの間、日本からいらした人と話しをすると必ずと言っていいほど話題になりました。そして、その話を聞きながら日本のメディアに対して残念だなと思ったのが、事件を大きく取り上げたのに、その後に何が起きたかを伝えていないことです。インターネットの発達によって、この事件のことは瞬く間にインド中へ広がり、都市部を中心に大規模な抗議デモが行われました。特に事件が起きたデリーでは、市の中心部に多くの人が集まりました。被害者の女性はシンガポールで治療を受けるも亡くなり、その遺体がインドに戻る際には当時首相であったシン氏とソニア・ガンジー総裁が空港で出迎えたのです。事件から約2ヶ月後にはムカジー大統領が強姦罪の罰則を強化する署名を行い、加害者へ最高で死刑を適用できるようになりました。

 事件後のこの出来事は私たちに何を教えてくれるのでしょうか?宗教的な背景などから女性への差別的な環境が当たり前と思われていたインドでも、レイプ事件は悪いことだと多くの国民が訴え、国のトップクラスの人間が動き、国のルールを変えたのです。私は、このインドが国としてとった大事な一歩までを知って、初めてこの悲惨を過去の物にできると思っています。もちろん、この危険を回避するには”夜間”に”女性”が”繁華街”で”違法な”バスに乗らないことです。

 

 さて、都市部についてどんな危険があるか原因も含めて少しでもイメージができたのであれば幸いです。そして、昼の都市部はインド人が「行ってはいけない」という地域でもなければ、普段は足元と車に気をつければ本当に安全だと思います。日用品の買い物であれば変に値段を高くして売ろうとする人も少ないですし、カフェやレストランで鞄を忘れて1時間後に戻っても店員が確保していてくれたこともあります。正直、私たちが正しい知識を持って、ちゃんと対処できていれば、インドでもほとんどの危険は回避できます。

 次回ではインドの観光地と番外編について書きたいと思います。

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著者プロフィール

佐々木様写真

佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

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ブログ:http://ch.nicovideo.jp/sasaki

 

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