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インドで新規ビジネスを考えるために:過去に学ぶ重要性

コラム「インドのビジネスを構築するにあたって」 vol.4

 インドで新規ビジネスを考えるために:過去に学ぶ重要性
 元アメリカ住商シアトル支店長
 加納 恭夫
 2015年7月30日

 5年前に久しぶりに台湾を訪問した時のことです。

 28年前、私は約5年間台北に駐在していたのですが、台北から新竹までの新幹線に乗ったのはその時が初めてでした。駐在当時はまだ新幹線ができておらず、近い将来の新幹線導入を見据えて種々のグループが考え方を整理していたと思います。

 新幹線に乗ってまず驚いたことは、車両間のドアが自動ではなく、ボタン式になっていたことです。どうしてボタン式なのかと友人に聞いてみたところ、彼曰く台湾の新幹線はあらゆる点で日本の新幹線を勉強し、自分たちにふさわしいものを考えた結果ボタン式のものに決めたそうです。その主な理由は、自動ドアは小さい子供にとって危ないとの判断があったそうです。彼らは、きめ細かく日本の方式を分析したうえで自分たちにふさわしいものを導入したわけです。

 そして次に驚いたのは、新竹駅に着いてからのことでした。なんとエスカレーターが日本の何倍もの距離で設置されていたのです。そして、エスカレーターを利用している人たちは手すりにつかまり、エスカレーター内では誰一人も歩いていませんでした。何とも言えない感動を覚えました。先進国が導入したものを分析し、自分たちにふさわしいものを選択するといった台湾の真の力を感じたといえるでしょう。

 次に台北の市内でのことです。40歳過ぎの女性達は背筋が伸び姿勢がとてもよく、何とも言えない美しさを感じました。そしてみんな同じようなスタイルで、同じような美しさでした。

 なぜみんな似たような外見なのかと疑問に思い、また友人に聞いてみました。彼女曰く、当時台北では無印良品が初めて開店したのですが、台北の女性の間では、無印が販売しているブラジャーがあっという間に大人気の商品となりました。そこでみなさん同じブラジャーを買っているから同じスタイルに見えるのではないでしょうか、との答えが返ってきました。

 そして今年の初めに私がまた台北を訪問した時は、みんなが必ずしも同じスタイルではありませんでした。

 どうして変化したのだろうかと質問をしたところ、ユニクロ等他の小売店も展開し、様々な選択肢の中から選んで購入するといったレベルに人々の生活水準が向上していることに気付くことができました。

 私が駐在していた時は、一人当たりのGNPが最初3,000ドルだったのが、5年後帰国するころは10,000ドルを超える勢いであったことを思い出しました。当時は、中間層の拡大の中、どういったビジネスモデルが時代に合うであろうかと必死に考え、種々の事業を立ち上げてきました。(遊園地の設立やフランス料理店風の中華レストラン(大勢で分けて食べるのではなく、一人ひとりに料理が出て来るので一人でも二人でも中華料理を食べることができる)、カレーショップのフランチャイズ展開等を実現してきました)

 ちょっと早すぎた面もあり、必ずしもすべて成功したわけではありませんでした。(私が立ち上げたカレーショップは今やトンカツ屋さんに代わっています。ただカツカレーだけは当時のメニュー通りですが・・・)

 しかしこの話を聞くにつれ、中間層の拡大とその収入レベルの向上(今や20,000ドルを超えていると思います)により消費行動が変化していくといった、駐在当時考えていたことが実際に実現していることをも確認することになり、何とも言えない感慨を覚えました。(我々団塊の世代は、若いころきっとこれはいけると考えていたことがいかに実現しているかを目で確かめることができる点が強みと自負しています。若い世代の方々はぜひかかる世代の方々に議論を吹っ掛け、自分が考えついたビジネスアイディアを整理してみてはどうでしょうかと考える次第です。)

 

 さてインドの経済も大きく伸び始めてきましたが、20年後の姿を予見し、今その姿にふさわしいビジネスを考えて行きたいものです。

 インフラ関連、発電関連、リサイクル、環境保全、それこそ新幹線とその関連事業等、すでに発展した国々の現状(あえて言えば、中間層が伸びて消費がバブルも含めて拡大した後の現状も意識したうえで)を分析し、それをインドの文化に照らし合わせたうえで考えるといったプロセスを大切にしてはどうかと思います。

 たとえば日本食の繊細なありようをベジタリアンにふさわしい加工食品に生かす(たとえば柿の種)、送電線を設置するのは巨額なインフラが必要ですが、風力、太陽光等とLED照明を組み合わせたパッケージ照明。フィリピンは7,000もの島があり送電は不可能です。従って夜は暗いのが当り前であるとの現状ではあるものの、こうしたパッケージ照明の市場性は高いといわれています。インドのような巨大な地域を送電線で電気を賄うことは無駄の極限ではないかと思いますので、日本の技術が活かされることを期待したいです。

 また、ゴミの焼却は環境汚染から脱却する基本中の基本です。環境を保全しながらごみを焼却することによって神様から電気をプレゼントされるといった発想で焼却炉発電を行うことも十分なビジネスチャンスがあると思います(山の神様(第一話をご参照ください))。

 このように、ただ良いものだから高い安いだけで判断せず買ってくださいでは、インドの人々の心はつかめないと思います。先述の台湾の例や、明治維新後に日本が先進国の考え方を参考に、日本にふさわしいものを作り上げていった歴史をたどったうえで、インド市場にふさわしい新しいビジネスモデルを考えてほしいというのが我々の世代の思いといえましょう。

以上

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 


加納 恭夫
元アメリカ住商シアトル支店長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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