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インドの安全とインドの危険(2)

コラム「違いは前向きに考えてみる」vol.5

 インドの安全とインドの危険(2)
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2015年8月18日   

 昨年のこの時期(2014年夏)に日本で70年ぶりに感染者が発生し、感染源となった東京の代々木を中心に都内へ足を運ぶ人々に恐怖を植え付けた天・・・ではなく、デング熱。

 そんなデング熱はインドではモンスーンシーズンの後のメジャーな病気で、毎年万単位の感染者が出ており、日本人でも感染者が出ると輸血希望者を募って助け合いながら対処しています。ちなみになぜモンスーンの後かというと、モンスーン前の4~6月は気温(水温も)が40度を超えて媒介となる蚊の幼虫であるボウフラが水中で生きられなくなり、モンスーン中は多雨になって雨で流されてしまい、蚊にとって踏んだり蹴ったりな環境だからです。

 このデング熱は適切な治療を行えば、1回目の感染の死亡率は1%以下であり、蚊に刺されてから数日後に風邪やインフルエンザに似た症状が見られるようなら、自前の薬で治そうとせず、ちゃんと病院で検査を受けるようにすればインドで三途の川を渡らずに済みます。2回目以降は症状が重篤になるデング出血熱に発展する可能性があり、こちらは死亡率が跳ね上がりますので、やはり蚊に刺されないことが最大の予防です。

 Googleで「インド生活とデング熱20140914」のキーワードで検索しますと、デリー日本人会のホームページにインドでのデング熱に関する詳細な情報がありますので、興味がある方はぜひご一読ください。

 

 さて、前回と同じく、まだインドに行ったことのない方の気持ちを一方的に不安にさせるのではなく、少しでも不明な部分を解消できればと思います。

 前回、私の実体験を基に作った以下の表を掲載しましたが、色々な人の意見を反映し、「日本人におけるインドの安全度比較表」と補足させていただきます。

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 前回は都市部について記載しましたが、今回は観光地とその他を書こうと思います。

 まず、観光地の安全度が都市部に比べて低い理由はシンプルで、私たち外国人を騙そうとする悪い人々が集まってくるからです。悪い人達の視点に立って考えれば、お金を持っていて無防備な外国人が集まる世界遺産などの観光地を活動場所にしたほうが、効率よく目的が達成できるからです。しかも、旅行者は滞在日数が決まっており、多くの人々が嫌な目に遭っても諦めて帰国していきます。私たちは絶好のカモなのです。

 世界遺産でもあるアグラのタージマハル。入口までは車両では進めず、駐車場から歩いて行くことになる。道の途中で日本語で気軽に話しかけてくる人100%詐欺。

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昼の観光地はどんな状況なのでしょうか?

 

<観光地・日中帯>

 観光地は悪意がない危険が霞むほど悪意がある危険で満ちています。

 基本移動は車で、宿泊がちゃんとしたホテルであれば、遭遇する確率は低くなりますが、車から降りて歩かなければいけない場合、物乞いに始まり、法外な値段で商品を売りつける詐欺師、スリなど、インドに限ったことではないですが、次から次へと色々な人達がやってきます。

 「そんなの無視すればいいんだよ」と言われる方もいますが、実際に私が遭遇したある出来事を紹介します。極端な事例ではなく、他の人も遭遇している可能性が高いものですので、これから旅行に行かれる方もご注意を。

 それはデリーの中心部であり、観光名所でもあるコンノートプレースという場所で体験しました。例えるならば、インドの銀座のような場所で、高級レストランやブランドショップも建ち並びますが、古い建造物も残っており歴史ある場所です。また、華やかな表通りに比べて、細く視界が悪い裏路地もたくさんあります。

 デリー中心のコンノートプレースから車ですぐの場所には有名な観光名所のインディアンゲートやフマユーン廟などがある。

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 私はその当時は駐在員として赴任しており、会社で手配した運転手付きの車に乗って、この場所に打ち合わせに来ました。しかし、予定より早く着いてしまい、少しデリーの中心部を視察することにしました。「一緒に行きましょうか?」と言ったインド人の運転手に「すぐ戻るから」と言って車とともに駐車場で待たせ、多くの人々が往来する通りを歩いていました。暫く歩き、そろそろ帰ろうと来た道を戻っていると、ボロをまとったような初老の男性に「Sir! Sir!」と声を掛けられました。

 その男性は私の足元をしきりに指さすので私も視線を落とすと、私の靴にべったりと黒い味噌のようなものがこびりついていました。老人は手に持っていたボロ切れを私に見せると、すぐにその汚れを拭いました。そして、拭ったボロ切れを私の顔の高さまで持ち上げて見せてきました。その汚れは酷い悪臭を放っており、私は顔を背けましたが、教えてくれて拭ってくれた行為に感謝して「Thank you」と言って立ち去ろうとしました。すると、その男性は私の前に回り込み手を差し出して「Money! Money!」と言ってきます。いくらか英語で聞いてみると、すぐに2,000Rs(当時のレートで4,600円相当)と言ってきました。

 私はぼったくられていると気付き、無視して歩き出そうとすると、男性は片手で私の腕を掴み、片方の手に持っていたボロ切れを掲げながら、ヒンディー語で叫び始めました。すると、周りに居たインド人達が集まってきて、私とその男性を取り囲みました。取り囲んだ、若い男性の一人が英語で「どうしたんだい?」と話しかけてきたので事情を説明すると、彼は「この人は悪い人だ。ただ、君も彼に仕事をさせてしまった。だからお金を払うしかない」と言いました。すると、周りの人達も「そうだ、この人は悪いインド人だ。でも、あなたはお金を払わないといけない」と口々に言ってきたのです。

 私は怒り心頭で、囲んでいる人をかき分けて出ようとしましたが、囲んでいる人々は私を押さえつけました。「払わないと君はもっと悪いことになるぞ!」と言われ、納得できないまま仕方なくお金を払うと、私を取り囲んでいたインド人達も騒いでいた初老の男性も蜘蛛の子を散らしたようにいなくなりました。

 呆然としていた、私に「あなたはどこから来ましたか?」と痩せたインド人の青年が英語で声を掛けてきました。私は日本から来たと答えると、その青年は日本語で「この場所は危ない。私が安全な場所まで連れて行ってあげます。私の彼女は日本人です。安心してください」と言ってきました。私は日本語で「ありがとう」と言って、彼が案内する方へ暫く歩いて行きましたが、表通りから薄暗い裏通りに連れて行こうとした時におかしいと思い、「ドライバーが待っているからもう帰らないと」と言って、引き返すことにしました。すると、青年は私の腕を掴み、「私を信じて下さい。旅に役立つマップがあります」と言いました。私は「No!」と言って腕を振りほどくと、駐車場まで全速力で駆けました。

 駐車場には物乞いの少女が何人かいて、私を見るなり集まってきて、全員が手を出しながら、今でも鮮明に覚えているのですが、「Sir, Money. Mommy no good. Money, give me. Mommy no good…」と言ってきました。私は発狂しそうになる気持ちを抑えて、車に駆け込むとドライバーにすぐ出発するように伝え、(待機中はエアコンをつけてはいけないため、風通しを良くするために)開いていた車の窓ガラスを急いで閉じました。閉じたガラスに低い打撃音とともに少女達の手垢が増えていくのが今も忘れられません。

 ドライバーに一連の出来事を話すと、彼は靴に汚れをつけたのも、靴を拭いたのも、周りを取り囲んだのも、親切に声を掛けてきたのも、みんな同じグループで外国人を騙す悪い人達だと言いました。そして、一人は危ないから、次からは私も一緒に行くと言ってくれました。そして、最後に「ご主人、あなたの靴が臭いから窓を開けて良いか?」と尋ねてきて、私はやっと笑顔になりました。ちなみに私はその後も何度かその場所へ行くことがあり、更に1回汚物をつけられましたがそのまま逃げだし、3回目にしてやっと汚物をつけようとした男性の攻撃をかわすことに成功しました。

 このように観光地での犯罪者はグループでの計画的犯行が行われやすいです。

 その他、観光地で日中に遭遇したグループでの犯行ではスマートフォン泥棒などが定期的に耳にします。私の場合、幸い盗まれてすぐに気付き、インド人友人が一緒に居て、私の電話番号に電話をかけて、着信音を鳴らしてくれたので、誰が盗んだのか分かり、近くの善意あるインド人が犯人を取り押さえて取り戻すことができましたが、状況を整理すると最低でも4人はいないとできない犯行でした。詳しく書くとまた長文になりますので、対策だけ書きますと、シャツの胸ポケットに貴重品は入れておかないということです。

 

<観光地・夜間帯>

 都市部と違い、夜になれば人通りは極端に減ります。インド人は夕食を取る時間が遅いので、レストランだけは10時頃でも人が居たりしますが、そこに居る人達は地元の歩いてすぐの住人です。

日が沈むと危険な時間の始まり

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 また、私の実体験ですが、ムンバイに電車で行く予定があり、その発車時刻は深夜の時間(確か午前1時台)でした。私はニューデリー駅までタクシーで向かい、駅に入りました。
駅の改札前はホームレス以外人がほとんどおらず、(日本と違って切符などを見せなくてもホームまで行け、乗ってから車掌にチケットを見せる)私は周囲に気を配りながら乗る電車が到着するホームを調べるため、電光掲示板を眺めていました。

昼のニューデリー駅

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 夜。ニューデリー駅の電光掲示板。電車が来るまで待つ人々

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 すると、駅員の格好と思われる背の高い男性が私に乗車する電車の番号を質問してきました。私は印刷したチケットを見せると、駅員らしき男性は「すいません。その電車は来ません。途中で事故になってしまいました」と謝りました。私ががっかりしていると、「デリー鉄道の公式な窓口がありますので、そこで替わりのチケットを手配します」と言いました。私はどの窓口か聞くと、彼は「深夜のため通常の窓口は全て閉まっており、少し離れた場所になる」と言いました。その場所までは駅のタクシーで送ってくれるとのこと。急がないと、ムンバイでの予定に間に合わないと思った私は彼に従って一度駅を出ました。彼が電話をすると一台の公営の塗装をしたタクシーがやってきました。

 そこで、タクシー料金がかかり、深夜料金だから高いが500Rs(ルピー)すると言われました。すぐ近くなら歩いて行くと言うと、「歩いて行くのは遠い」と言われ、仕方なく乗ることにしました。私は自宅で私が電車に乗る連絡を寝ないで待ってくれている妻にそのことを電話すると、妻は「ちゃんと電光掲示板で欠便になっているか確認したの?話しがおかしくない?」と言いました。私も落ち着いて考えてみると、おかしいことに気付き、タクシーのドライバーに「戻ってくれ」と言いました。

 しかし、ドライバーは「もうすぐつく。何故帰る?安心しろデリーの公式のチケット窓口だ」と引き返してくれません。私が強めの言葉で「戻れ!」と言うと、「ダメだ。お前はチケットを買うんだ!」と怒鳴り返してきました。私は「戻らないなら、今ドアを開けて飛び降りるぞ!」と言うと、ドライバーは「分かった。引き返す。ただし、お金は倍の1000Rs払え」と言いました。

 私はドライバーの肩を掴み「それはおかしい。500Rsも払わないぞ!」と言い返すと、ドライバーは「Don’t say No! Pay money. If not…」の後に「Kill you」と低い声で言いました。私は恐怖を感じ、「最初の約束と同じ500Rsを払う。あなたはチケットカウンターまで行っていないから、時間も距離も短くなったメリットがある」と説得しました。私は財布から細かいお札をかき集めました。

 ドライバーはその後無言で運転を続け、ニューデリー駅へ着きました。私はドライバーに握りしめた札の固まり(約500Rs)をドライバーの手から零れるよう渡し、それを拾おうと彼が視線を落とした隙に運転席側と反対のドアを開けて走り出しました。すぐにタクシーは追ってきましたが、駅の建物内に入ったため、それ以上は追いかけてきませんでした。私は一度、駅の構内で息を整えると、怪しい駅員にまた捕まらないよう一気に改札を抜け、階段を駆け上がり、複数の線路の上を目もくれず渡り、駅の反対に移動しました。そして、そこにあった電光掲示板を注視し、自分が乗るべき電車がちゃんとあることを確認しました。電車が止まるホームにまた駆けていくと、そこには電車を待つ人々が沢山いて、私はホームに貼り出されている列車の座席表を確認した後、彼らの近くで電車を待ちました。 

ニューデリー駅のプラットホーム
列車のドアの横にも印刷した座席表が貼り出され、それを確認して乗車する

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 電車に乗ると私の席と同じ席番号を持っているインド人が居て、車掌が私に「お前はあっちの席にいけ」と言ったので、そっちの席に居たら次の駅でその席の乗客が来て、車掌に話したら「空いている席に座れ」と言われて、空いている席がなくて呆然としていたら、同じ席番号だった若いインド人の男性が一緒に座ろうと声を掛けてくれました。寝台席なのに横になれずに二人で体育座りをしながら、色々な話をしました。駅の出来事を話すと、彼は私にこうアドバイスしてくれました。

「君の国では知らない人に親切する人はいるのかい?家族や友達には親切にするけど、僕は知らない人にそんなことはしないよ。だから、これからは知らない人に親切に声を掛けられたら疑うんだ」

 私は「それならば、君は何故私に親切にしてくれるんだい?」と質問したら、彼は「それは、君もお金を払ってこの席を使う権利を持っているからだよ。それと、僕は外国人にこの国を嫌いになって欲しくないんだ」と答えてくれました。

 上記の事例は列車の駅でしたが、空港でもホテルや旅行業者になりすました偽の待ち合わせ人が同じようなことをします。

 正直、私が間の抜けているところもありますが、ギリギリのところでいつも助かっていました。知人の話、特に旅行関係の方の話しは私の遙か上を行きます(お客様が安全な旅行を得られるための努力の結果でもありますが)。

<番外編・夜の越境>

 昼の安全さに比べ夜は本当に危険です。最後に私と私のインド人社員がアドバイスを受けた2つの可能性について記載します。

 私はお客様のネットワーク不調の原因調査のために、デリーから西に州境を超えてハリアナ州のある都市に出張に出かけました。そのお客様へはいつも日中に訪問し、夕方にはデリーに戻って来ていたのですが、今回は事象が発生するのが夜とのことで、夕方に訪問しました。一通り状況を確認し、原因の切り分けを行って、お客様への説明を終えると日も暮れて、デリーに帰る頃には日付が変わるぐらいの時間でした。

 私は翌日にデリーで仕事があるため、帰ろうとしたところ、お客様より「佐々木さん、今日は泊まっていってください。部屋も用意してあります」と言われました。私は「大丈夫です、今の時間なら道も空いているし、速く帰宅できると思います」と答えると、「佐々木さんを帰すわけにはいかないのです」と真剣な表情で説明をしてくれました。

 お客様が居る都市からデリーに行くには、人が住んでいないエリアをいくつか通ります。特に州境は何もなく、そこに夜間は盗賊が現れて通行人を襲うと言うのです。お客様も最初、ドライバーが夜に走りたくないと言い出した時は、訝しんで近所のインド人に聞いたところ、同じ答えが返ってきて、それからはデリー近郊に駐在のお客様も日が暮れるまでの対応になった場合は、ここで1泊しているそうです。

 さて、次は私の社員のお母様が重い病気にかかり、その治療のため夜間に隣の州の病院に連れて行くことになった時のことです。母親と家族を乗せて、社員が運転する車がデリー側の州境の手前で警察の検問に合い、その時警察から以下のようなアドバイスを受けたそうです。

「ここから先は何もない場所だ。警察もいない。もしも、警察の格好をした人が車を止めようとしても絶対に止まるな。銃を向けても、大きな石が道にあってもブレーキを踏むな。轢いてしまっても構わない。彼らは山賊だ」

 夜のインドはインド人も恐れる危険な時間帯です。そして、安全に関してはそのインド人のアドバイスをちゃんと聞くことが最大の対策なのです。たまにインドに滞在している日本人がSNSなどで、「夜に一人で出歩いて大丈夫だった」「夜に乗り合いの非合法バスに乗ったが何もなかった」というような書き込みをしていたりすると、インド人の友達やインドに長く住む知人の日本人は心配してこう諭します。

「たまたま運が良かっただけ。危ないから次は絶対しないでください」

 前回も記載しましたが、被害に遭った人は色々な事情があり、SNSなどで書くことはできません。だから、SNSで書かれるのは被害に遭ってない人の書き込みが大半の偏った情報なのです。日中生活しているインド人達はみんなこう言います。「夜は悪い人々が出てくるから、私達は家に居なければいけない」

 次回はついに最終回です。

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著者プロフィール

佐々木様写真

佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

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ブログ:http://ch.nicovideo.jp/sasaki

 

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