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ちょっとした工夫から生まれる大きなビジネス

コラム「インドのビジネスを構築するにあたって」 vol.5

 ちょっとした工夫から生まれる大きなビジネス
 元アメリカ住商シアトル支店長
 加納 恭夫
 2015年8月27日


 40数年前、ノルウェーのセメントメーカーと共同で日本からサウジアラビアにバラセメントを供給するために種々の契約を行いました。

 その内の一つには、ノルウェーの会社が用船する船に日本のセメントをFOB(*1)(本船甲板渡し条件)で販売する契約があったのですが、年間契約の船積に関する条項を設定するのに夜中の二時まで交渉が続いていました。

 長い議論を経て私は用船契約をベースとした売買の基本を学び、FOB契約ではなく自ら用船を行うCIF契約(*2)(運賃・保険料込み条件)の方がメーカーさんをスムーズにリードできるという結論にたどり着きました。この交渉には時間がかかりましたが、結果的には我々で用船することになりました。

 先方が用船する船は、船側と船底が直角のボックス形で船にクレーンが装着している「タンカー」のような船であり、確かにバラセメントを積んだり揚げたりするには最適な船でした。しかしながら運賃が高いためセメントのような低価格商品のものを船済みする船ではなく、日本から長期的かつ定期的に運んでいくことは難しいとも判断されました。そこでよく日本でよく使われるバラ積船に船積することをメーカーさんと考え、日本の船会社にも実験してもらい完成することができました。

 その際、こうした要望を普通の船で対応できるかどうかを検討するだけではなく、さらに競争力のある運賃を引っ張り出すにはどうしたらいいものか徹底的に考えた末、以下の結論となりました。

 これは、A-B-A論と私が勝手に名前を付けました。
 南アフリカの石炭や鉄鉱石を日本に運んでくる船は、通常日本から南アフリカに戻る時は空で帰っていたのですが、帰りがけの駄賃の運賃でセメントをサウジアラビアまで運ぶという発想がこの考えのべースでした。しかしこれは割とわかりやすい方法でマネされやすいため、A-B-C-A論に拡大しました。その結果、フィンランドからエジプト、ルーマニアからサウジアラビア、フランスからアメリカ等に半製品のクリンカー、袋物セメント等の供給を競争力のある運賃で取得できることをアピールし、多数成約することができました。

 大前研一氏がグローバリゼーションという言葉を使う前に、同じ言葉を使って説明していた記憶があります。

 当時一緒に頑張っていた船会社の方と(今は社長さんになっておられました)数年前久しぶりに話をした時、彼からこのA-B-C-A論の話が出てきました。彼曰く、今の時代にはただ既存のカーゴの動きを見ながら運ばれていないカーゴを類推し攻めていくのではなく、業界の変化を考慮に入れたA-B-C-A論が必要であるとのことでした。

 例えば、今までは北欧から欧州に出ていた車(完成車)を運ぶ船を考えておけばよかったのが、欧州から南アフリカに部品が出荷されそこで組立完成車として欧州に戻ってくるといった流通が生まれてきている点等、我々が考えたA-B-C-A論にかかる質の変化を加えたものを考えるべきであるとの話をいただきました。

 こうした若手(当時20代の中ごろ)の発想は、日頃の物流にも口を出しました。

 どうして一つの商品を種々のお客さんにデリバリーするのですか。ここにあるいろんな商品をピックアップして一つのお客さんにデリバリーしないのですか。倉庫を見てみると一種類の製品がコンテナー単位で入庫し保管されていました。その製品をトラック一台に積んで運んでいました。そしてそのトラックは2-3社のお客さんにデリバリーしていました。よく見てみると他の商品も同じように扱われていましたが、仕入先のお客さんはほとんど同じでした。ある一社のお客さん専用のトラックに数種類の商品を積んでデリバリーした方がよっぽど廉価ではないですかとの問題意識を持ちました。去年シンガポールの倉庫を見たら細かく商品をお客さん毎に整理し一台で一つのお客さんに種々の商品をデリバリーしていました。彼らはそれを物流加工と呼んでいました。何とも言えない感慨を覚えました。

 長々と過去の経験談を書きましたが、インドのビジネスを考えるにあたって世界の大きな需要国でありかつ生産国になるインドを上記のような考え方で工夫をしてみることが大切ではないかと思います。ただ“高い安い”の議論が多いだけでなく、工夫することが極めて少ないと言わざるを得ないビジネスセンスが今のところ大半を占めていますが、日本のリードで彼らの発想を転換することは今まで種々述べてきた文化的背景などから可能であると信じています。
(例えば、農産物が必要な場所に届く比率が極めて低いとの話を聞いているので、冷凍倉庫も含め種々工夫してはどうかという問題意識を持っています。)

 最近インドでは保税の扱いも大幅に変更され、政府の考え方も柔軟になってきています。こうした背景を利用して、新たなるチャレンジを次世代のみなさんにお願いしたいと思います。

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*1:FOBとは「本船甲板渡し条件(本船渡条件、本船渡し、本船積込渡し)」のことを示す。これは、輸出契約を結んだ輸出業者(売主)が貨物を積み地の港(輸出港)で本船に積み込むまでの費用(国内輸送費、輸出検査費、輸出梱包費、輸出通関費、船積費等)とリスクを負担し、一方でそれ以降の費用(運賃、海上保険料、輸入関税、通関手数料等)とリスクは輸入業者(買主)が負担するという取引条件である。

*2:CIFとは「運賃・保険料込み条件」のことを示す。これは、輸出契約を結んだ輸出業者(売主)が貨物を荷揚げ地の港(輸入港)で荷揚げするまでの費用(輸出梱包費、輸出通関費、運賃、海上保険料等)を負担し、一方で荷揚げした以降の費用(輸入関税、通関手数料等)は輸入業者(買主)が負担するという取引条件である。これには、売主が契約期間内に船積みする義務や、完全な船荷証券(BL)を取得して提供する義務を負わせるなどの条件も含まれている。

 

以上

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 


加納 恭夫
元アメリカ住商シアトル支店長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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