インドの最新業界ニュース、2500社のインド企業情報を提供するポータルサイト

インド法人設立初年度に気をつけるべき経理実務の実態を理解する

コラム 「事件は現場で起きている!複雑難解なインド法規制の実態に迫る」vol.2

インド法人設立初年度に気をつけるべき経理実務の実態を理解する
  Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.
 田中 啓介
 2015年9月1   


 今回は、インドに進出したばかりの日系企業が初年度に直面する経理実務の実態をご紹介したいと思います。インド法人設立後は、各種税金やライセンスの申請・登録手続、申告・納税義務、インド準備銀行(RBI:Reserve Bank of India)への報告義務、取締役会の開催やインド登記局(ROC:Register of Companies)への決議内容の登記義務など、さまざまなコンプライアンスに適時に対応していくことが求められます。

 しかしながら、具体的な事業が開始していない状況下では顧客との取引が一切なく、単に家賃や給与、ベンダー等への支払しか発生していない場合が多いため、ついつい経理業務がおろそかになりがちです。しかしながら、インドでは日々の支払をする際、源泉所得税(TDS:Tax Deducted at Source)やサービス税の面で特に注意が必要となりますので、今回はTDSおよびサービス税の概要について、そして、初年度においてよく見うけられる税務上の経費に関するインド特有の取り扱いについてご紹介をしたいと思います。

支払をするときに気を付けるべきポイント(1)源泉所得税(TDS)編

 法人設立後は、日々さまざまな支払を行っていくことになります。アパートや事務所の家賃、コンサルタントや弁護士への報酬、ブローカーへの手数料、駐在員やインド人への給与、レンタカー会社への支払などなど、これらは立ち上げ当初にごく当たり前に発生する費用です。

 日本では何てこともない単なる支払業務ですが、インドではこれらひとつひとつの支払の性質カテゴリーごとに一定の税率にもとづいた源泉所得税(TDS)の控除義務が規定されており、例えば、事務所の家賃を支払う場合には、原則、支払先には10%のTDSを控除した後の金額(90%部分)を支払い、控除したTDS(10%部分)はインド税務当局に翌月7日までに納税する必要があります。よくあるケースとしてTDS控除義務が規定されている項目を以下にまとめておきます。

適用条文

支払の性質

免税金額
(インドルピー)

支払先
法人

支払先
個人

192

給与
(Salary)

N/A

N/A

累進課税

194C

業務請負
(Contractor)

取引単位:30,000
年間総額:75,000

2%

1%

194H

コミッションや仲介手数料
(Commission or brokerage)

年間総額:5,000

10%

10%

194I

地代家賃・家具レンタル
(Rent for land, building etc…)

年間総額:180,000

10%

10%

194J

専門家や技術的役務提供
(Professional or technical service)

年間総額:30,000

10%

10%

 なお、ここに規定されている免税金額を超えない場合には源泉徴収をする必要はありませんが、同課税年度内に同じ支払先に対する支払合計金額がこの免税金額を結果的に超えてしまった場合には遡って源泉徴収を行い、納税する必要があります。

支払をするときに気を付けるべきポイント(2)サービス税編

 上記に挙げたような支払をする際には、その費用がサービスの課税対象である場合、原則、サービス税(2015年6月1日以降税率14%)が課税されます。通常は、このサービス税をサービスプロバイダーに支払い、支払ったサービス税は支払先が代わりに税務当局へ納税する仕組みです。なお、この支払ったサービス税は、当該サービスが関連する自社の製造行為やサービス提供によって稼いだ売上に付随して受け取る物品税やサービス税と相殺をすることができます。(※CENVAT Creditとして利用できる。詳細は省略いたしますが、原則論としては日本のように、預かった仮受消費税から、支払った仮払消費税を差し引くことができ、残りの預かり消費税額を税務当局へ納付する日本の消費税の仕組みと同じです。)

 しかしながら、①リバースチャージメカニズム(RCM:Reverse Charge Mechanism)と②軽減税率(Abatement Rate)という仕組みがあるために、必ずしも14%のサービス税を全て支払先に払わなければならないわけではありません。

 ①リバースチャージメカニズムとは、支払先にサービス税を支払う代わりに、一部もしくは全部のサービス税を自ら税務当局に直接納税しなければならない仕組みです。分かりやすい一例としてはサービスの輸入があります。例えば、インド子会社が日本親会社から何らかのサービス提供を受けた場合、インド子会社は日本親会社からサービスを輸入したことになります。日本の親会社が発行する請求書上にはサービス税が請求されてきませんが、インド子会社は日本親会社にサービス税を支払う代わりに、インド税務当局に14%のサービス税を直接納税する必要があります。

 このリバースチャージメカニズムに該当するサービスの提供が行われた場合には、支払時に誰がサービス税の納税義務者であるのか、納税義務者と納税額に基づいて正しく請求書が発行されているか等を確認した上で、支払処理を行う必要があります。支払先が発行した請求書がそもそも間違っているケースも散見されるため、注意が必要です。リバースチャージメカニズムの対象となる主なサービスは以下のとおりです。

No.

サービスの種類

納税義務者 と 負担割合

サービス提供者

サービス受領者

1.

サービスの輸入

Nill

100%

2.

弁護士等による法務サービス

Nill

100%

3.

個人事業主等が提供する人材派遣や警備サービス等

Nill

100%

4.

一定の物流サービス等

Nill

100%

5.

個人事業主等が提供する請負業務

50%

50%

 

 ②軽減税率とは、その名の通りサービスの性質によってサービス税率に一定の軽減が規定されており、例えば、レストランでは60%の軽減(食事代金の40%部分のみに課税)、物流サービスでは70%の軽減(30%部分のみに課税)といった具合です。軽減税率が適用されている場合には、この支払ったサービス税は、売上に付随して受け取る物品税やサービス税とは相殺できない(CENVAT Creditとして利用できない)ケースも多々あります。

 

設立初年度は税務上経費にできない費用が多い?

 さて、通常インド法人設立前後にはさまざまな費用が発生します。一般的に、法人設立までに必要となる費用を「創業費」、法人設立後、事業を開始するまでに必要な費用を「開業費」などと言ったりしますが、これらの費用は通常、日本では初年度に全額損金算入もしくは5年以内に任意償却することができます。一方で、インドでは一定の条件を満たす創業費(Preliminary expense)のみ会計上一括費用計上が求められ、税務上は5年で均等償却をすることになりますが、開業費については税務上一切損金算入が認められていません。

 ここで注意が必要なのは、いつのタイミングをもって「事業の開始(Commencement of Business)」とみなされるのかの認識があいまいになっている点です。なぜなら、インドではこの「事業の開始日」以降に発生した費用から税務上の損金算入が認められているからです。つまり、インド税務当局は納税額を増やすために「事業の開始日」の認識を遅らせようと指摘をしてくる傾向にあり、これに対して会社側は納税額を減らすために「事業の開始日」の認識を早めようとする傾向にあります。金額的な影響力が大きい場合や特に製造業の場合などでは初年度の経費をほとんど損金算入できない可能性もありますので、事前に十分な検討をしておく必要があります。

個別のご相談はこちらへ ≫≫ お問い合わせフォーム

———————————————————————————————————————————-

コラム記事に関するご意見・ご感想はこちらからお問い合わせください(メーラーが起動します)

 

バックナンバー

 

>>インドビジネスコラム一覧へ

 

著者プロフィール

 Global Japan_田中様

田中 啓介
Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd. 代表取締役

当社ホームページ:http://g-japan.com/
個人ブログ   :http://tanakkei.com/

京都工芸繊維大学工芸学部卒業。米国公認会計士。
税理士法人で中小企業に対して会計記帳代行・税務申告支援、及び、税務アドバイザリー業務、NASDAQ上場米系企業の経理部門にて本社への財務報告業務や国際税務、ERP会計システムを利用した経理部門シェアード・サービス導入プロジェクトを含む10年超の経験。2012年から南インドのチェンナイに移住し、在印日系企業や新規進出企業向けに会社設立支援や会計・税務アウトソーシング、会社法コンプライアンス支援サービス等を提供している。日系企業のインド進出が着実に増えている中で、インド実務を深く理解している経験豊富なコンサルタントが求められていることを強く感じ、現地にて中長期的に日系企業の支援をするべく2014年12月にGlobal Japan AAP Consulting Private Limitedを南インド・チェンナイに設立、
同社代表取締役に就任。

 

一覧に戻る