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Make in India:耐久消費財産業

コラム「Make in India(メイク・イン・インディア)」vol.6

 Make in India:耐久消費財産業
 株式会社チェンジ プリンシパル・コンサルタント
 Saurabh Srivastava 
 2015年9月10日   

   

 

make in india

 

耐久消費財産業の概要

 インドの家電製品及び耐久消費財市場は、過去数年間で著しい成長を遂げてきた。同市場はインド国内の経済にとって重要な役割を果たし、何百万人もの雇用を創出している。インドではテレビ及び耐久消費財の市場が輸入品によって主導され、急速な成長を遂げている。マクロ経済の要因やインド政府が推進する”Make in India”の取り組みにより、インド国内に耐久消費財の製造拠点が整備されつつある。多くの企業がインドに投資し、国内市場向けだけでなく、SAARC(南アジア地域協力連合)や中東・アフリカ地域への輸出拠点としてインドの製造拠点を強化させることを検討している。

 インドの消費者信頼感指数は世界で最も高いと評価されており、好調な経済環境やインフレの低下により2015年度第2四半期ではさらに上昇した。多くのグローバル企業がインドを将来的な成長が見込める重点市場の一つとして位置付けている。インドの消費財市場は、市場の成長にとって望ましい人口構成や可処分所得の増加が主因となり、ますます拡大していく見通しだ。

インドにおける一人当たりの所得額の推移
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(出所:国際通貨基金(IMF)”World Economic Outlook” 2015年4月)


 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)とインド工業連盟(CII)による共同調査によると、インドにおける消費支出は2020年までに総額3兆6,000億ドルに到達すると予測されている。主な消費分野は、食料品や住宅、消費財、交通、通信分野である。また、同調査によると、世界の消費支出額におけるインドのシェアは2020年までに現在の約2倍にあたる5.8%になる見通しだ。

 インドの耐久消費財市場は、2015年時点で125億ドル(約1.5兆円)、世界第12位であるが、今後10年間、年平均成長率10%以上で拡大し、2025年までには世界第5位の市場になると予測されている。

  

市場規模

 インドの耐久消費財市場は大きく分けて黒物家電またはブラウングッズ(AV機器等の娯楽関連の家電)と白物家電(生活家電)の2つのカテゴリーに分類される。

インドの耐久消費財市場の分類
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 近年のインド消費者の購買力の増加やソーシャルメディアの普及は、インドの消費者の購買活動を活性化させている。国内の耐久消費財市場は2012年度の73億ドル(約8,760億円)から年率19%で成長し、2015年度には125億ドル(約1.5兆円)に到達した。

 インドの耐久消費財市場の成長要因としては、所得の向上や都市化、低価格製品やインド向け製品の導入、革新的な製品開発や製品ラインナップの増加、モダンリテール(近代的小売業)の発展、消費者向け金融のアクセス向上等が挙げられる。

インド耐久消費財市場の規模
image 3(出所:インド電子産業協会 (Electronic Association of India))

 

 一方、インドの耐久消費財の普及率は世界の普及率と比較して未だ低く、その他の有利的な成長要因も踏まえると潜在市場は非常に大きい。

インドにおける耐久消費財製品の普及率
image 4(出所:インド商工会議所連合会(FICCI))

 

インドにおける耐久消費財製品の市場規模
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(出所:インド商工会議所連合会(FICCI))

 

 耐久消費財市場では、都市部の支出額がインド全体の約65%を占めている。今後、都市部における需要はLEDテレビやノートパソコン、スプリット型エアコン、美容・ウェルネス製品等の生活必需品でないぜいたく品を中心に拡大する見通しだ。一方、農村部では、インド政府が農村地域の電化促進に多額の投資を行うと計画を発表していることもあり、冷蔵庫等の耐久消費財や家電製品の需要が増加すると予測される。

インドにおける耐久消費財の都市部・農村部別の割合
image 6(出所:インド合同商工会議所(ASSOCHAM)、インド電気器具製造業協会(CEAMA))

 黒物家電市場は現在91億ドル(約1.1兆円)であり、2020年度までに290億ドル(約3.5兆円)に拡大すると予測されている。現在はその65%が輸入品でまかなわれている。現在インドでは需要に対し供給が不足しており、中国や東南アジア諸国等、自由貿易協定の提携国であり、インドよりも製造コストが安い国から輸入が増えている。

 しかし、国内の需要やインド周辺国への輸出需要が増えていることから、多くの企業がインドで製造拠点を設立し、輸出拠点として確立させる計画を発表している。

 

投資動向

インドの耐久消費財市場における代表的な投資事例を紹介する。

  • インド政府が2015年7月から8月の間に受領した家電製造に関する投資計画は総額9,000億ルピー(約1.74兆円)に達した。インド国内及び海外企業ともに、特に携帯電話の製造拠点設立への関心が高かった。
  • 中国のハイアールは、2015年に対前年比約30%増となる215億ルピーの売上目標を目指し、36億ルピー(約69.5億円)を投じプネ工場の生産能力を現在の2倍に拡大させると発表した。これにより、プネ工場では冷蔵庫を年間200万台、及びエアコンや洗濯機、湯沸器、テレビパネルをそれぞれ年間50万台製造する能力を有する。
  • ドイツのボッシュは、チェンナイの洗濯機製造工場に40億ルピー(約77.2億円)を投資すると発表した。
  • iPhoneやiPadの製造を手掛ける台湾のフォックスコンは、今後5年間でマハラシュトラ州に総額50億ドル(約6,000億円)投資すると発表した。
  • インドのResolute Electronics Indiaは、テランガナ州のMedchal工場に30億ルピー(約57.9億円)を投資し、ThomsonブランドのLEDテレビや大型家電製品を製造・販売すると発表した。
  • 中国のスマホメーカー、シャオミは、フォックスコンとの提携によりインドで携帯電話の組立製造を開始し、世界第3位のスマホ市場であるインドでシェア拡大を狙うと発表した。
  • ソニーはフォックスコンとの提携により、Braviaシリーズのテレビをフォックスコンのチェンナイ近辺の工場で製造すると発表した。
  • インド大手二輪のヒーローグループは自社の子会社Hero Electronixを通じ、デジタルDTHデバイスを製造するMybox Technologiesの過半数株式を50億ルピー(約96.5億円)で取得すると発表した。ヒーローグループは幅広い事業を展開しているが、家電市場に参入するのは今回が初となる。
  • 中国のファーウェイは、インドでブロードバンド通信事業に参入し、一般家庭やSOHO向けのデバイスを展開していく。
  • アリババが支援する新興スマホメーカーのメイズは、これから6か月後にはインドでスマホの製造を開始すると発表した。
  • インド通信情報技術省下の電子・情報技術局が統括する改訂特別奨励パッケージスキーム(MSIPS: Modified Special Incentive Package Scheme)のもと、インドでは2015年5月までに合計2,082億5,000万ルピー(約4,019億2,250万円)の投資計画が提出され、その内、950億ルピー(約1,833.5億円)が承認された。承認された40件の投資計画の中には、サムスンやボッシュ、日本電産、テジャス・ネットワークス、マザーソン・スミ・システムズ、ニッポン・オーディオトロニクス等がある。
  • パナソニックやインドの家電大手ビデオコンも、”Make in India”キャンペーンにおける投資を強化するためにいくつかの投資計画を申請しており、現在審査中である。
  • グジャラートを本拠とするアダニ・グループはフォックスコンと合弁会社を設立し、家電製造事業に参入すると発表している。合計投資金額は50億ドル(約6,000億円)と推定される。
  • 現在Sterlite Technologiesはマディヤ・プラデシュ州でテレビのLCDパネルや携帯電話、その他の家電製品の製造拠点を設立するため、工場の用地を探している。合計投資金額は4,000億ルピー(約7,720億円)と推定される。

  

産業政策

電子製品製造産業においては、インド政府は100%のFDIが自動承認ルートで認められている。

  • 防衛関連の電子製品においては、49%までのFDIが政府ルートで認められており、49%を超えるFDIについては内閣安全保障委員会の認可を必要とする。
  • 国家電子産業政策(National Policy on Electronics)では、インド政府はグローバルな競争力を持った電子機器設計・製造産業を創出させ、国内の需要を満たすだけでなく、世界市場に製品を供給することを目指している。グローバルな競争力の高い電子システム設計製造産業を創出するために、政府は1,000億ドルの投資を呼び込み、2,800万人の雇用を投じてエコシステムを構築することを目標としている。
  • 2014年度の国家予算では、19インチより小さいテレビ用のLCD・LEDパネルの基本関税が10%から0%に軽減された。
  • 同様に、テレビ用LCD・LEDパネルの製造に使用される特定の部品についても基本関税が免税される。また、ブラウン管テレビの製造に使用されるカラー受像管の関税も10%から0%に軽減された。
  • パソコンの製造に使用されるすべての輸入品や構成部品に課税される特別追加関税が免税された。
  • 電子書籍端末の基本関税も7.5%から0%に軽減された。
  • 改訂特別奨励パッケージスキーム(MSIPS: Modified Special Incentive Package Scheme)では、資本支出に対して20-25%までの資本補助金が10年間認められている。
  • 経済特区(SEZ)以外で操業する企業の資本的設備に対して、相殺税 (CVD) /物品税の払い戻しが認められている。
  • インド政府は、政府調達に関しては国内の電子機器製造企業を優先する方針を発表している。また、政府調達全体に占める国産品の割合は30%以上でなければなら
  • ないと規定されている。
  • インド政府は電子製造業クラスター(EMC: Electronic Manufacturing Clusters)のスキームもと、土地 100 エーカーにつき50-75%の補助金(最大1,000 万ドル)を提供している。これは新規プロジェクト及び既存プロジェクトに適用することが可能。
  • 輸出優遇装置については、重点品目について2~5%の税控除券が適用される。
  • 経済特区(SEZ)、国家投資製造地帯 (NIMZ) 内の企業や、北東地方、ジャンム・カシミール州、ヒマーチャル・プラデッシュ州、ウッタラカンド州などの特別地域内にプロジェクトを設立する企業に対しては優遇措置が設けられている。
  • 電子製造業クラスター(EMC: Electronic Manufacturing Clusters)の発展において、零細中小企業の活躍が促進されている。

 

今後の動向

 どの先進国においても、電子機器製造産業はGDPに大きく貢献している。しかし、現在インドでは電子機器製造産業がGDPに占める割合はわずか1.7%であり、台湾の15.5%、韓国の15.1%や中国の12.7%と比較しても低水準である。今後、インドがさらなる経済成長を遂げるためには、電子機器製造産業を早期に発展させる必要があるだろう。また、現在国内で生じている需給ギャップには、製造業を拡大させる潜在性がある。さらに、南アジア諸国や中東地域で急増するインド製製品の需要に伴い、インドにおいて輸出産業が発展する可能性もあるだろう。電子機器製造産業は、ビジネスフレンドリーを目指す政権や各種優遇政策の導入によって、インド国内及び国外の企業が投資し市場開拓できる大きな潜在性を秘めている。

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著者プロフィール

Saurabh

 

Saurabh Srivastava
株式会社チェンジ  
プリンシパル・コンサルタント

 

これまで数多くの民間企業や国際機関に対し、新興国市場における事業戦略の策定やマーケット主導型の製品開発を支援。3年前から東京に在住し、日本企業がインドやその他各国で事業展開する際の戦略策定支援や現地調査の設計・実施などの幅広いサポートを行っている。

 

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