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インドで健康に暮らすために

コラム「違いは前向きに考えてみる」vol.6

 インドで健康に暮らすために
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2015年9月15日   

 
 日本国内でも度々社会問題として取り上げられる”自殺”・”鬱病”。海外、特に新興国に駐在する日本人はその生活環境と文化習慣の違いによるストレスと責任の重さから、国内よりも発生率が高いという話もよく耳にします。何をするにも健康であることが一番の近道です。最終回となる第6回は”健康”について書いてみようと思います。

 少し回り道をします。私がインドに赴任し、最初に始めた業務はインドに進出している日系企業へのアポイントメント(以後、アポ)と訪問でした。アポを取る際は赴任のご挨拶という名目ですが、実際はインドでの支店設立の準備をする間に顧客の話の中からビジネスのニーズを探っていくのが大きな目的でした。交流イベントなどにも積極的に参加して名刺交換を行い、お礼のメールとともにアポを重ねて、駐在されている方々から色々な話しを伺いました。

 営業経験をされたことがある方であれば想像できると思いますが、日本だと知名度のない会社の一般社員が新規アポを取るのは容易ではありません。それがインドでは好意を持って、日本では一部上場の一流や大企業と呼ばれる会社に所属する経営層の方々とも直接お会いし、お話を伺えるのです。

<睡眠>

 私は当時1日6件(午前1件、午後4件、夕食1件)ほどアポを取り、時差の関係で日本とのやり取りは早朝、社内の業務は移動中の車の中か、夜自宅に戻ってから対応という日々でした。疲れが顔に出ていたのでしょう。

 ある時、工場建設のため一時的に都心部のレンタルオフィスに事務所を構えている大手企業のダイレクターとのアポで、「佐々木さん、ちゃんと寝ている?」と訊かれました。私は素直に寝不足であることを伝えると、その方は「今は海外赴任をしたばかりで、全てが新しく刺激的で興奮している状態なんだよ。だから多少無理しても気付かないんだよね。でも、どこかでその興奮が切れたり、身体が限界を超えた時、突然体中にトラブルが起き始める。そうなってからだと、元に戻るのは難しいんだよね。だから、無理して働くのではなく、無理してでもちゃんと休むことをしなくちゃ。デリーは日本と比べて空気も悪いし、水も不安、食べ物の素材や味付けも全然違うし、目に見えない身体へのストレスはたくさんある。何より畳に布団で寝ていた人間が急にベッドで寝るとなると今までと同じ睡眠時間じゃ疲れが取れないよ(笑)だから、僕は海外赴任の間は日本に居た時より1時間から2時間は多く睡眠時間を取るようにしているよ」とアドバイスをくださいました。

 実際、私はベッドで寝る習慣がない人間でしたので、インドのベッドで寝ることは不慣れで、夜はなかなか寝付けず、朝起きても疲れが取れていないどころか、身体のあちこちが痛むことも多々あり、長く私を苦しめました。

 駐在員時代は家具付きのアパートのため、勝手にベッドなどを替えることはできませんでしたが、起業後、家賃を低く抑えるために(日本の一般的な)家具無しのアパートに引っ越した際、私は思いきってマットレスだけは高級なものを購入し、快適な睡眠環境に近づきました。

・ポイント(1)睡眠時間は日本に居た時以上に十分取る
・ポイント(2)寝具はこだわる

 

<アパート>

 話は駐在前のインド出張に戻ります。私は日本に居る間、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)から紹介していただいたインドで日本人向けの不動産ビジネスをしている代表の方と一緒に駐在時に住むアパート探しをしていました。

 その方は予算の関係でなるべく家賃の安い物件を希望する私に流暢な日本語でこうアドバイスしてくれました。
「佐々木さんはこれからインドでビジネスを通してたくさんの苦労をします。それは毎日たくさんの疲れとなって佐々木さんに溜まります。佐々木さんが毎日その疲れを取る場所は、これから選ぶアパートです。安くて我慢すれば住めるアパートに佐々木さんは疲れて帰ってきて、その日の内にその疲れを取ることは難しいでしょう。すると疲れはどんどん溜まっていき、いつか病気になります。アパートは佐々木さんを守る城だと思ってください。会社は安い家賃を喜びますが、これからインドに住むのは佐々木さんなのです」

 もちろん、高い家賃のアパートの契約が決まれば、アパートオーナーから彼の会社への報酬も高くなるので、利益目的もあるかもしれませんが、その言葉に私はとても納得しました。ただ、やっぱり予算の関係で実際に契約したのは、平均的な駐在員の選ぶアパートの半分の家賃で、住み始めてから騒音やゴミの焼却煙と異臭など生活に困ることになりますが。

 なお、インドのアパート選びについて過去にブログに書いていますので、参考にしていただけると幸いです。
http://ch.nicovideo.jp/sasaki/blomaga/ar544981

・ポイント(3)アパート選びは長期生活を前提に

 

<食事>

 もともと私は味の濃い食事が好きでしたが、歳を取ってきたせいか、元妻の食事のおかげか、インドに駐在する前には味付けが薄く、素材の本来の風味を楽しむようにもなってきました。ですが、インドの食事はファーストフードに限らず味付けが濃く、油が多く使われ、極端に辛いか甘い物が多く、慣れるというレベルではありませんでした。

 そもそもインドの野菜は日本に比べて非常に味が濃く、日本のように全体の味付けを薄くすると個々の主張が強すぎてしまうため、料理人は香辛料と油を使い、それ以上の強さで味を支配するという料理スタイルのように見えます。

 私は辛いのが苦手なので、レストランなどではいつも「辛くしないで、塩は半分で、油は少なく」と頼んでいましたが、店側も宗教上の理由などで食事に注文が入ることが普通なのか、いつも快く受けてくれました(実際に注文通りのものが出てくるかは別ですが)。

 ちなみに常連のレストランだと、私の味の注文を覚えていてくれて、「Sir, zero chili, half salt, little oil, OK?」と先に言ってくれます。
一度、ある飲み会の後に酷い腹痛と嘔吐に襲われ、半月寝たきり、3ヶ月間も体調不調が続いたことがあり、食事には非常に気を使うようになりました(それ以降、インドの韓国料理屋はトラウマになっています)。
もちろん、珍しい食べ物が路上で売られていても気軽には食べません(特に食べ物が汚染されやすい夏季は)。レストランや訪問先の会社で出された水も目の前でドリンキングウォーターのボトルから移されたものではない場合は、極力飲みません(飲むように促された時は、グラスに口をつけ、唇を濡らす程度にしています)。

 そして、知人のプレゼントや招待された食事会で出されたものでも、口にして違和感を覚えたらそれ以上は食べないようにしています。日本だと「せっかく用意されたものなのに失礼にあたるのでは」と思いますが、インドではYes/Noははっきり言っても良いので、「私には苦手な味です」と言えば、外国人ということもあり無理に勧められることもありません(その替わり好きなものであれば、私は沢山いただくようにしています)。

・ポイント(4)食事は受け身にならず自分主導で選ぶ

 

<休日>

 インドでは日本人が楽しめる娯楽が日本より少なく、メジャーなところではゴルフやテニスなどのスポーツ以外だと、旅行、デリー近郊ならカラオケぐらいでしょうか。そのため、日本から本やゲーム、DVDなどを持込み、休日は自宅でそれらを楽しむ方も多いようです。ちなみにアニメ・マンガ好きが高じて私はデリー南部に日本のマンガを置いたカフェ(Mangaful Cafe:マンガフルカフェ)を仲間の日本人起業家達と一緒に作り、日本人、および日本の文化に興味がある人々への娯楽として提供しています。

 私はインドでも自分で車を運転しますので、ドライブに行くことがありましたが、デリー近郊は渋滞が酷いので、空気が良い場所でのんびり運転するにはかなり遠くまで行かねばならず、結果数時間運転して疲れるはめに・・・。

 同世代の集まりで知り合った方には、自宅に友達を呼んでもてなすのが好きで、ワインセラーに加え、ついにはお酒を飲む用のカウンターまで自宅に設置してしまいました。飲み会も日本人の交流やストレス発散の場として良く開かれています。和食レストランで日本人だけで集まって飲み会をしていると、「せっかく海外に来ているのに、現地の人と現地の料理を楽しまず、日本に籠もっているようで情けない」と言う方もいますが、だいたいそういう方は、出張単位で短期滞在の方か、日本嫌い(日本で嫌なことがあって飛び差してきた方)か、自分はグローバル人材ということを意識しすぎている方です。

 大体、和食レストランで日本人だけで集まったという一部分だけを切り取って、そこに居た参加者をグローバルじゃないと見下していますが、私たちは普段はインド人との付き合いもあるし、和食以外の料理も食べているのです。でも、やっぱり日本人だから、日本の味が恋しいし、同じ共通体験(文化・習慣)を持った人だけで集まって、母国の言葉で語り合うことも、息抜きという意味では私はあって良いと思います。

 上手い例えか分かりませんが、たまに実家に帰って、母親の味を堪能しながら、地元の言葉で家族と昔話に花を咲かせるのに似ていると思います。

・ポイント(5)その国でできる息抜きを見つける

 

<職場で>

 日本では当たり前のことが、海外では当たり前ではないことは多々あります。私の日本人の知り合いから聞いた事例をいくつか紹介したいと思います。

 日本から本社の偉い方がインドにいらっしゃることになったが、その方は英語が苦手であったため、打ち合わせでは通訳を用意することにしました。しかし、通訳は打ち合わせの時間になっても現れず、電話をすると「すぐ着く」とのこと。それから、彼が打ち合わせの場に現れたのは1時間後でした。しかも、通訳も上手くできず、打ち合わせはやり直すことに。通訳者を叱責すると、彼は「本当は今日来る人は別の人だった。だけど、その人がここよりもっとお金を出す通訳の仕事が今日入ったから、急に私が行くことになった。私は休みだったのにわざわざ来てあげたのに怒るなんて酷い」と言われました。

 1週間前に余裕を持ってプレゼン用の資料を作るよう部下に指示し、前日の夜に進捗を聞いたところ、「ほぼ出来上がっているので明日の朝には最終版を渡せる」と答えたので帰宅しました。翌日、部下は出社せず、電話も出ず、プレゼンの資料も送られてこず、結局プレゼンは口頭だけの説明で先方は不満なようでした。プレゼンが終わってほどなく、部下から電話が来ました。

「自分はあの後帰宅して家でも朝まで資料を作っていたが、そこで体調が悪くなり倒れてしまった。仕事はしていたのでその分の残業代が発生する。そして、体調を悪くして休んだのでSick leave(傷病休暇=有給休暇)を使用したい」

 上司は怒り、「今できている所までで良いからプレゼンの資料をメールしろ」と言うと、「間違えてデータを消してしまった」と返事が、上司は「データを復旧するソフトを使って復元するから、パソコンを会社に持ってこい」というと、「パソコンが壊れて今は起動しない。あなたが無理な仕事を私に与えたから、パソコンも使いすぎて壊れたのだ」と反論される始末。

 インドで製造した商品の不良品発生の原因確認で日本からビジネスパートナーが来るのですが、前日になってもパートナーに見せる不具合報告書ができていませんでした。部下にこのまま任せるのは不安と思い、自分で作ろうと朝から外出している部下に連絡をするも部下は出ず、折り返しもありません。夕方に別の部下から、報告書を作る予定だった部下が会社に戻らず直帰すると連絡があったと報告があったので、その部下にもう一度電話をするも電話に出ない。

 その日は仕方なく帰宅し、翌朝目を覚ますと、携帯電話には深夜にいくつかの着信とメッセージが届いていました。メッセージには「着信があったので折り返したがあなたが出なかった。家族に不幸があって、今日の報告会には参加できない。報告書は完成しているが、自宅にインターネットがないから送れない。事前連絡したので今日は有給休暇になる」と書かれていた。

これらは私が聞いた多くの愚痴の中の3つです。断っておきますが、これらは非常にダメな例でして、インド人全般がこういう人という話ではありません。
私がこの上司の立場だったら、胃が痛くてストレスで倒れてしまいそうです。

 ただ、私はこのような話を聞きながら、仕事の進め方を改良し、特に初めてのことには「任せきりにしない」「途中経過を確認する」「バックアップを用意する」ということを心掛けています。

・ポイント(6)実績がないことに期待しない

 

 インドにいることに対して「どうして住み慣れた日本を出て、そんなところで生活するの?」と聞かれると、会社の命令であったり、ビジネスチャンスを信じてだったり、ヨガを学ぶためだったり、刺激的な人生を求めてだったり、理由は色々あると思いますが、不健康になりたいという理由はないと思います。

 それは不健康になると、生活が困難になるからです。

 心と体、それぞれを上手くケアして健康に生きることは、家族にも友人にも会社にもお客様にも安心を与えます。

 日本でも、インドでも、その他の国でも日本人が元気に活躍し続けることを願っています。

 最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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デリーのマンガカフェにてスタッフの誕生日会を実施。
パートナーの経営者や友人、日本からのインターン生も集まりお祝いをした。

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著者プロフィール

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佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

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