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インドそして世界に羽ばたくためには

コラム「インドのビジネスを構築するにあたって」 vol.6

 インドそして世界に羽ばたくためには
 元アメリカ住商シアトル支店長
 加納 恭夫
 2015年9月24日


 日本の素晴らしい商品をインドで販売する最初の関門は「高い安い」の議論に落とし込まれることでしょう。

 例えば、商品の寿命が圧倒的に長いことを保証したとしても、簡単に壊れてしまう韓国や中国製の製品と値段で比較されてしまいがちです。その品質の本当の良さを理解し高くても買ってくれるという話になるには、よほどの努力あるいは縁がなければ難しいといえましょう。

 私は「組み合わせの妙」という表現を使わせてもらっています。
(ちょっとビッグマウスですが1+1=3というよりは1+1+1=5と言いたいところです)

 日本の技術を競争力の源泉にした商品は、例えばモーターの様にその機能や使いやすさといったところに匠の心が反映されています。しかし、インドの人たちはモーターだけの性能を理解したとしても、それが組み込まれた商品を使って初めてそのモーターの良さを評価するといったところがあります。従って、モーターの品質が良いといって売り込んでみても商売は成り立ちません。

 以前ご紹介したコマツの考え方であるアフターマーケット戦略(「インドビジネスの原点を考える中で団塊世代が次世代に残したいもの」 第一話参照)を例にあげましょう。顧客の機械が故障した際に迅速な対応と修理の予見を実現することにより、顧客の工事中断に伴う期待利益の損失を防ぐことができるといった考えがベースにあります。

 かかる考え方を具体的に実行しているのがCSSNETという、機械の修理マニュアルやパーツマニュアルなどを電子化し、ネットワーク上で閲覧できる顧客向けのクラウド型ソリューションです。ただ機械が高品質で故障が少ないなど機械だけの良さもさることながら、このようなソフトウエアでサポート・メンテナンスを行うことにより、初めて高品質な性能や実際のメリットがユーザーに理解されるわけです。

 総合商社と呼ばれる機能は、単に単品のセメントを販売するにしても他の商品を運ぶ船に視点を当て、他の商品の輸送と組み合わせて競争力や付加価値をうみだしてきました。また、不動産部が建築物をゼネコンに発注することを利用して、その建築物に使われる生コンや鉄鋼建材等をゼネコン(もしくはその下請けとなる材工一式業者)に販売し、その生コン会社や鉄鋼建材メーカーに対してもその原料になるセメントあるいは鉄筋などを販売してきました。

 もともとの建築物の発注をベースにいわば「ありがたく思えと言って押し売りをする」というように見えるところもありますが、その根底には皆がwin-winになるよう汗水流して
こうした仕組みを構築したといえましょう。

 このような仕組みを考えて行くには、一つの担当部署だけで問題意識を持ちコンセプトを作ったとしても、実行の段階では他の部署との組み合わせが必要となってきます。

しかしながら今の日本の企業はアメリカ式な考え方(MBA的発想)が浸透し、例えば経費を削減するためにそれぞれの部署を子会社化し、本社の部署はそれを管理しているだけであるとか、今日の成績だけを考え(結果論的分析に基づく経営―MBA的経営)中期的な視点でものを考え全社を挙げて、あるいは種々の部署の英知を結集しかかるコンセプトを考えることが評価されなくなってきている、といった問題等があると思います。

 ある大手家電メーカーさんの部署に、せっかく種々のものを作っているのだからそれぞれの部署がwin-winになる新しいコンセプトを考えてはどうですかと持ち掛けたことがあります。彼らはつらい顔をして、部署間に川が流れていてその間に橋が架かっていないという表現で横串が入っていないことを説明しようとしてくれました。

 我々の世代が本当に残念に思っていることを少なくとも問題意識として次の世代の方々が持っていたことを知り、少し嬉しかった思いをしたことがありますが、結果的には橋が架かっていない現実は否定できません。

 インドのお客さんに対して日本の匠の心に立脚したものの販売を考えるにあたって、まずは日本側の立っている位置を再検証することが必要であると思います。

 インド市場への戦略構築を一つの切り口として一つの企業の種々の部署が、あるいは日本の種々の会社が協力し合って、自分たちの商品を理解してもらい、真にユーザーの理解を求める組み合わせを作っていってはどうでしょうか。我々の時代は商社がそれを先導してきましたが、今や商社も本来の機能を発揮しているとは思えません。現在は結果どころかその前提になる戦略の構築すらできていないというのが我々の世代の思うところです。現在、製造業は自ら国際化を図りそのいろんな組み合わせの妙を実現する実力があると思いますが、その実力を発揮する前提となる基本的考え方を再度熟慮する必要があると思います。

 先輩からいつも加納君は上から目線でものを考えそれを説明するが、確かに中身はそれなりに評価できるものの、相手の気持ちになってものを語りなさいといまだに薫陶を受けることがあります。最後になってそれが出てきたのではとちょっと心配ですが、私そして今日の日本を担ってきた世代の一人としてお話する次第です。

以上

                  

<御社のインドビジネスをお手伝いします>
株式会社 インダストリー (顧問 加納恭夫)
info@industree.asia

 

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著者プロフィール

 


加納 恭夫
元アメリカ住商シアトル支店長

 

 

 前52歳まで大手総合商社に勤務し、最後の職責は米国法人の物資不動産部門長兼シアトル支店長。同社を退職後、IT企業の社長、ベンチャー企業の社長等を歴任し、現在中堅鉄鋼商社の顧問等を行っています。
 40年以上の歴史の中で、中近東へのセメントの輸出、三国間貿易において新規な物流方法をあみだし(袋ものセメントからバラセメントでの輸送等)世界の貿易量の7%のシェアーを握るまでのレベルに成長させ、その後、台湾、米国に駐在し、合弁事業の立ち上げ、企業の買収、また、中堅鉄鋼商社のインドでの独立法人設立等、多岐にわたる分野において経験を積んできています。(65国に出張)
 現在の日本をそうした経験から見てみると、結果論だけで物事の判断を行ったりといった、あるいは人のせいにしながら自分を守るとかといった風潮が見られ、ちょっと寂しい感じを抱きます。我々の世代は大いなる問題意識をもってそれこそ汗と涙を流し、そして仕入先、販売先の人たちそして社会に貢献したいとの愛をもって取り組んできていたと思います。そうしたわれわれの世代の経験を次代に引き継ぎたいという思いで今回の執筆を行いたいと思います。

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