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インドで起業する前に悩むこと

コラム「インドでの起業への道」vol.1

 インドで起業する前に悩むこと
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2015年10月27日   

 全6回ということでチェンジ様よりインドについてのコラム執筆の提案を受け、2015年9月になんとか最終回となる第6回のコラムを書き上げることができ、ほっと胸を撫で下ろしていたところに担当の方からコラム継続の相談がありました。

 第2期と言うことで「さて、次は何を書けば良いだろうか?」と自問し、チェンジ様と打ち合わせをした結果、これからインドで会社を作りビジネスを始める方が少しでも具体的なイメージをできるような内容を書いてみようということに決めました。

 私は会社設立の専門家ではありませんので、経営者の視点からインドで自分の会社を作りビジネスを進めることについて書いていけたらと思います。また、息抜き程度にビジネスに絡めたインドのちょっとした情報も書ければと考えています。

 2012年5月にインドで会社の登記を終え、私は経営者としてインドでのビジネスをスタートしました。お客様やパートナー、社員のおかげで4年目を迎えています。

 毎年インド関係で起業した日本人の話を耳にしたり、実際にお会いしたりしますが、インドで会社を作り、現地で納税しながらビジネスを続けられる方は少数派かなぁと感じています。

 理由は色々とお金がかかるからです。「日本に比べて物価の安い新興国での起業だから、用意するお金(日本円)は少なくてよい」と思っていると、インドでも苦労します。

 例えば、自分の給料です。日本でなら自営業の場合、利益がないなら自分の給料は我慢することもできますが、インドから見ると私たち日本人は外国人です。可能であれば、国民であるインド人の仕事を増やしたいというのがインド政府の気持ちです(本音かどうかは別として国民に向けては)。

 外国人がインドで働くということは、インドにあるインド人の就ける仕事が減ることになります。そのため、インド政府はインドの就労ビザ(Employment VISA)を取得する外国人に対して様々な条件を設けています。細かい内容はVISAセンターのホームページに記載されていますが、就労ビザ取得のポイントとしては、インドのためになる以下の4つに集約されると思います。

<就労ビザ取得のポイント>
(1)インドにはない、優れたもの(技術/ノウハウ)をインドに導入する。
 =インドの発展に貢献する。
(2)インドで新しい事業を始める。
 =インド人の仕事を増やしてくれる。
(3)その国特有の文化を伝える。
 =国際交流に寄与する。
(4)インドで高額な納税をしてくれる。
 =インドの財政を支えてくれる。


 (4)が例えに挙げた、自分の給料に”お金がかかる”理由です。通称「2万5千ドルルール」とも言われ、外国人が就労ビザを得るためには、給料を最低でも年間2万5千米ドル(≒300万円)もらい、日本における所得税にあたる税金を納めることになるからです。なお、インドで2万5千米ドルの年収は高額になります。

就労ビザをスムーズに取得するためには、 (1)~(3)のいずれかと(4)をいかにビザオフィサーに認めてもらうかが重要です。正直、どんな理由があろうとこちらの都合なんて二の次です。

 就労ビザを取るには、インドでの受け入れ先(就労先)の会社も必要となります。会社を作るにもお金がかかりますし、会社を維持するためにもお金がかかります。

 そのため、日本人を含む外国人の中には、会社を作らず、雇用ビザを持たずに(雇用ビザ以外のビザで)渡印し、インド政府から隠れて非合法にインドでビジネスを始める方がいます。寧(むし)ろ、個人起業家の場合は上記のビジネススタートの方が多いような気もします。

 そういうスタートをした方が倒産せずにビジネスを続けた場合、だいたい以下の3つのいずれかに落ち着きます。

<非合法なビジネスの進む先>
(1)ビジネスが軌道に乗った段階で、
会社を設立、就労ビザを取得、各種納税なども以後は行う。

(2)政府に見つからない限り、非合法な状態のままビジネスを続ける。
(見つかった段階で、お金で解決すれば良いと思っている)

(3)ビジネスが軌道に乗った段階で、
合法なビジネススタイルに変えようとするが失敗する。

 (1)は「ビジネスが成功するか分からない」「今はお金がないから厳しい」「とにかくやってみて手応えを確かめたい」そういう気持ちから、リスクヘッジのつもりで非合法という最悪のリスクを選びますが、最終的には合法な形でビジネスをしたいというのが多くの個人起業家の気持ちです。インド駐在の日本人の中には、合法ではないと知っていながら、こういった起業家がいつかは合法なビジネスをして欲しいという応援の気持ちでサービスや製品を利用する状況は良く目にします。

 (2)は「インド自体が賄賂や汚職などで合法なビジネスができない」「儲けたお金を少しでも多く全部自分のものにしたい」「インドのビジネスの始め方はよく分からないけど、ビジネスアイデアはある」というような方が陥りやすい状態です。最後の方以外はお近づきになりたくありませんが、私のような起業家にビジネスの声をかけてくるのはこういう方の比率が高いです。「個人起業家は少なからず非合法なことに手を染めているはず」という考えを持っているのか、こちらが提携のために提示した条件に困った表情をされます。

 (3)は起業家としてお天道様の下を堂々と歩くための決断でしたが、会社設立費用、会計費用、各種納税など、次々と発生する今までにない支出に耐えられなくなった悲しい結末です。酷い言い方をすると、そもそも非合法じゃないと利益を生み出せないビジネススタイルを合法なスタイルに変えたら、このようなことになる可能性は高いはずです。

 私はインドで起業したい、ビジネスをしたいという人からお声がけをいただいた時は、合法な手段を説明し、金銭的な部分などで困っていたり相手が望んだとしても非合法な手段は教えないようにします。結果、そのまま疎遠になった人もいますし、インドでのビジネス自体を諦めた方もいますが、私と会う前と比べてインドでビジネスをすることについてより真剣に向き合ってくれたのであれば目的は達成できたと思っています。

 色々書きましたが、私は運が良かっただけなのかもしれません。日本の企業の駐在員としてインドに赴任し、支社設立を経験し、インドの会社に勤めながら新しいビジネスを試すことができ、会社設立の準備もできたのです。

「佐々木さんは事前に他人のお金で色々経験できて、運が良いからそういうことが言えるんだ」

 そう言われたらその通りです。でも、それがこれからインドで起業する日本人が、インドでのビジネスの正しい始め方を、続け方を学ばないで、実行しないで良い理由にはなりません。インドの就労ビザの取得の時にも書きましたが、インド政府は私たちの都合など二の次なのです。

 インドでビジネスをしようと考えている方は、なぜ、”インドで”ビジネスをしたいのか、起業する前に今一度考えていただけたら幸いです。

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著者プロフィール

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佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

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