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地図が読めない12億人に地図を売る

コラム「天竺からの手紙」vol.2

 地図が読めない12億人に地図を売る
 株式会社ゼンリン  インド支店長(Country Manager)
 二宮 祐
 2016年1月26日   

 

 インドの拠点を立ち上げる前、出張で訪れたデリー郊外グルガオンにある在印日系メーカーの営業会議に参加させて頂いた。東京から来たての邦人営業部長はデリー市街図を壁に貼り、インド人営業所長に担当エリアを説明させようとした。デリー北部をカバーする所長はあろうことか地図の東部を眺め、押し黙ってしまった。部下が商品を日々、売り歩いている場所が示せないのだ。

 外資系企業の幹部ともなると大卒レベル以上である。借りた車の運転手が地図を解さないのには慣れっこになっていたが…。どうやら教育レベルの問題ではなさそうだ。

 インド人はだれでも地図が読めないのだろうか。企業の要望や疑問を調べる為にインドでBOP(Bottom of Pyramid:年間所得が購買力平価(PPP)ベースで3,000ドル以下の低所得層)の調査活動を実施している旧知の学生団体に調査を頼んだ。彼らは教育水準の高さで知られるインド南部タミルナドゥ州にあるティンドゥッカル県でアンケートを実施した。

 その中で「自分の住んでいる場所をかいてみてください」と問い、紙と鉛筆を渡した。大卒の男性が描いたのが<回答者1>、大卒でない社会人の描いたのが<回答者2><回答者3>である。ご覧のように幼稚園児レベルである。小学校では「地図(の読み方)を教える科目がない」とのことだった。さらに彼らから話を聞いたところ、初めての場所に行くのに迷う事が多く、何度も人に聞いてもたどり着くことができないことが多々ある、という声も多かった。

地図を使わ(え)ない習慣

 
 <回答者1>大学卒 男性 

図1

 

<回答者2>街の住人1(成人)

図2

 

<回答者3> 街の住人2(成人)

図3

 

 日本では小学校から白地図を使い、地元の街並みを書くような授業もある。幼いころから「位置情報を2次元で俯瞰する力」を養う訓練をしているということになる。

 なぜ、インドでは地図教育がないのだろうか。知り合った文化人類学系専門の大学教授によれば「1940年代までの英国の植民地政策」に由来するという。「地図が読めると反乱を起こしやすくなる」からだという。

 私たちは地図の読めない12億人に地図を売ろうと決断した。成功するか、否か。「9割、無理に決まっている」と言う人もいる。私はこう返そう。「12億人が地図を駆使するようになったら…」。インドは眠っている宝の山だらけである。たとえ難しくても掘り起こす。10%の可能性にかけて、私たちはこの地を踏んだのだ。

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著者プロフィール

インド進出ポータル(プロフィール.写真) 

二宮 祐
株式会社ゼンリン 
インド支店長(Country Manager)

1985年 21歳の時にバックパッカーとしてインド放浪。(2か月で10キロ体重が減る)
ソニー入社後、1990年代4年間インドに駐在、同社のインド事業黎明期に関わり国内マーケティング、人事総務部門を経て21年間勤務後、同社退職、日本電産に移り同社インド現地法人の立ち上げに従事 。2013年3月よりゼンリン インド支店長(COUNTRY MANAGER)に就任

インドビジネス立ち上げを現地で担当、「『インドの地図の向上』を通し『インドの発展に貢献』」をスローガンに、
◎エリアマーケティング、

◎GPSを用いた車両管理、安全管理(女性、子供等)、
◎カーナビゲーション コンテンツ、
等位置情報と地図に関するソリューションを用い課題抽出及び解決を在印日系企業を中心に提案、現在に至る。

出身地:鳥取県
鳥取県境港市F.I.S.H(フィッシュ)大使、山陰インド協会 インド支部長として休日は故郷のPRもインドで担当。

 

 

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