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インドの減価償却費にかかる3つの法規定とその経理実務について理解する

コラム 「事件は現場で起きている!複雑難解なインド法規制の実態に迫る」vol.8

インドの減価償却費にかかる3つの法規定とその経理実務について理解する
 Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.
 田中 啓介
 2016年2月26   


 南インドのチェンナイは自動車産業を中心とした製造産業が集積しており、多くの日系メーカーが進出しています。製造業者の経理実務において特に注目されるひとつの論点に「減価償却費」というものがあります。“減価償却”とは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産を、その資産を取得した年度にまとめて費用に一括計上するのではなく、その資産の耐用年数にわたって少しずつ費用計上していく会計処理のことを指します。例えば、30万円で購入したパソコンの耐用年数が3年だと仮定すると、買った年に30万円の経費を一気に計上してしまうのではなく、3年間かけて毎年10万円ずつ経費を計上していく、この会計処理のことを“減価償却”といい、毎年計上する10万円の経費のことを「減価償却費」といいます。

 

まずは基礎編。減価償却費を理解するための3つの側面とは?

 さて、インドの法規定をご紹介する前に、まずは「減価償却費」をより理解するための3つの側面についてご紹介したいと思います。具体的には(1)損益計算に影響を与える「費用配分」の側面、(2)保有資産価値に影響を与える「資産評価」の側面、(3)キャッシュフローに影響を与える「資金回収」の側面、の3つです。

(1)費用配分の側面

 こちらはすでに序章でご紹介をしたとおり、30万円のパソコンを3年間にわたって少しずつ費用計上をしていく(費用を毎年10万円ずつ3年間に配分する)ことで、買ったときに一度に費用計上をしないようにする、というものです。

(2)資産評価の側面

 会社は、保有している資産の価値を“貸借対照表”という決算書の中で明確に示す必要があります。例えば、30万円で購入したパソコンという資産の価値は、購入したときは30万円ですが、1年後も2年後もずっと30万円のままではありません。1年後の価値はきっとある程度は下がっている、と考えるのが自然です。つまり、(1)で配分した減価償却費を差し引いた残りの金額30万円-10万円=20万円が1年後のパソコンの価値であると考える、というのが資産評価の側面です。

(3)資金回収の側面

 会社は、30万円で購入したパソコンを使って、いろいろな経費を使いながら顧客からの売上を得て、そして、利益を稼ぎます。例えば、パソコンを購入した翌年、年間売上が100万円、年間費用が60万円だったと仮定します。つまり、2年目の利益は100万円-60万円=40万円です。ところが、「利益である40万円」=「手元に残ったキャッシュ」ではない点に注意する必要があります。経費60万円の中には(1)で配分したパソコンの減価償却費である10万円が含まれています。パソコンの費用は1年目にすでに全額支払ってしまっていますので、2年目に計上されている減価償却費は、費用が計上されているにもかかわらず実際には10万円のお金が支払われているわけではありません。つまり、2年目は手元に40万円+10万円=50万円のキャッシュが残っていることになります。会計上の利益は40万円ですが、キャッシュフローとしては毎年追加で10万円の資金が回収されていくという風に考えることができます。

 

最初に抑えるべきインドの減価償却費にかかる3つの法規定とは?

  インドの減価償却費は、会計上の規定である、(1)「インド会計基準(AS6)」と(2)「インド新会社法」、そして、税務上の規定である(3)「インド所得税法(Section 32およびIncome Tax Rule, 1962 New Appendix 1)」の主に3つの法規定によって取り扱いが定められています。(1)の「インド会計基準」では、経済的耐用年数(=資産を中長期的に使用して経済的に耐えうる実務的な年数)を考慮することのみが規定されているため、あまり気にする必要はありませんが、注意が必要なのは(2)「インド新会社法」と(3)「インド所得税法」です。今回は、大きく分けて「会計上の減価償却費」と、「税務上の減価償却費」についてそれぞれ注意すべき点をご紹介したいと思います。

  

インド新会社法における減価償却費について(=会計上の取り扱い)

 インド新会社法では、定額法(Straight Line Method)もしくは、定率法(Written Down Value Method)のいずれの償却方法も認められています。そして、新会社法の“SCHEDULE II”において、資産グループごとに耐用年数が規定されており、これらの耐用年数に基づき計算される減価償却費を“最低償却額”(=最低限計上すべき減価償却費)として規定しています。

固定資産大区分

耐用年数

建物(工場)

30年

機械設備(一般)

15年

機械設備(継続的加工)

8年

什器備品

10年

車両

8年

オフィス家具備品

5年

コンピューター

3年

 機械装置などの製造設備については、1シフトから3シフトまでの稼働時間に基づいて償却額が決定され、1シフトによる減価償却費を基準として、2シフトの場合には50%割増、3シフトの場合には100%割増することによって償却額を計算します(※建物や車両、什器備品といったその他の固定資産はシフト計算対象外)。

 なお、新会社法に規定されている耐用年数よりも短い耐用年数を採用する(“最低償却額”を超える減価償却費を計上する)ことは可能ですが、その場合には、決算書の注記にて規定とは違う耐用年数を適用している旨の開示が必要となり、また、規定よりも短い耐用年数が合理的であることを示す証明書(=Technical Evaluation Certificateなど)の文書を整備しておくことも求められる可能性があるため、会計監査人に事前に相談しておくことをおすすめいたします。

 

インド所得税法における減価償却費について(=税務上の取り扱い)

 インド所得税法では、定率法(Written Down Value Method)のみ採用することが認められており、所得税規則(Income Tax Rule, 1962)の“New Appendix 1”において、資産グループごとの償却率が規定されています。

 

固定資産区分

償却率(定率法)

住居以外の建物

10%

機械設備

15%

什器備品

10%

車両

30%

コンピューター

60%

その他無形固定資産

25%

 

 インドには、日本にあるような少額資産等の規定はないため、原則、固定資産であればすべての資産が減価償却対象となります。インド特有の税務上の取り扱いとして挙げられる、(1)ブロック単位償却、(2)期中取得資産の180日ルール、の2点について、簡単にご紹介したいと思います。

(1) ブロック単位償却

インドの税務上では、減価償却費の計算の際に、「建物」や「機械設備」、「什器備品」などの資産区分を「ひとつのブロック」として認識するユニークな考え方を採用しており、固定資産ひとつひとつの個々の価値を考慮しません。したがって、個々の除売却損益も認識しないため、例えば、ある特定の固定資産を除却したとしても、税務上では除却損を認識せずに(=当該固定資産の簿価を残したまま)償却費の計算をします。(※一部の産業を除いてすべての産業において適用されます。)

(2) 期中取得資産の180日ルール

インドの税務上では、期中に新規取得した資産については、取得日から期末までに180日以上を経過している場合には、一律1年分の減価償却費の計上が認められ、期末までに180日未満しか経過しない場合には、一律6か月分の償却費が認められます。(※つまり、期末最終日3月31日に資産を取得したとしても、6か月分の減価償却費を計上することが可能)

  以上のことから、インドでは会計上の固定資産台帳と、税務上の固定資産台帳は全く別物として作成・管理しておく必要があります。設備投資が大きければ大きいほど、減価償却費が事業計画や実際の損益、キャッシュフローに与える影響は大きく、これらの会計上および税務上の取り扱いおよびその違いについて事前に正しく理解をした上で検討をしておくことがとても大切になります。


以上

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著者プロフィール

 Global Japan_田中様

田中 啓介
Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd. 代表取締役

当社ホームページ:http://g-japan.com/
個人ブログ   :http://tanakkei.com/

 

京都工芸繊維大学工芸学部卒業。米国公認会計士。
税理士法人で中小企業に対して会計記帳代行・税務申告支援、及び、税務アドバイザリー業務、NASDAQ上場米系企業の経理部門にて本社への財務報告業務や国際税務、ERP会計システムを利用した経理部門シェアード・サービス導入プロジェクトを含む10年超の経験。2012年から南インドのチェンナイに移住し、在印日系企業や新規進出企業向けに会社設立支援や会計・税務アウトソーシング、会社法コンプライアンス支援サービス等を提供している。日系企業のインド進出が着実に増えている中で、インド実務を深く理解している経験豊富なコンサルタントが求められていることを強く感じ、現地にて中長期的に日系企業の支援をするべく2014年12月にGlobal Japan AAP Consulting Private Limitedを南インド・チェンナイに設立、
同社代表取締役に就任。

 

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