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インド人社員と働こう

コラム「インドでの起業への道」vol.6

 インド人社員と働こう
 Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役
 佐々木克仁
 2016年3月22日   

 コラムの第2期もついに最終回になりました。

 会社を作って、必要な登録・申請を終え、ビザも取得しました。ビジネスはいつでもスタートできる状態です。

 ビジネスは一人でもスタートできますが、なんでも一人でやるのは大変です。そして、自分が事故に遭ったら、病気になったら、家族に何かがあって日本に戻らなければならなくなったら、ビジネスは続けられるでしょうか?もし、続けられないとしたらお客様に迷惑をかけてしまうでしょう。斯(か)く言う私も家族の事情で日本に帰国し、今インドの仕事はほとんど社員に任せています。

●インド人と働く

 インド人と一緒に働く時にはいくつかの選択肢があります。

<インド人との働き方>
(1)インド人上司の下で働く。
(2)インド人を対等なパートナーにする。
(3)インド人の会社(職人)に外注として依頼する。
(4)インド人を部下として雇う。

 私の推奨は最後の(4)です。「自分の会社を持ったのだから当たり前」と思う方もいらっしゃると思いますが、インドに滞在し起業のための行動をしている内にその苦労からインド人に頼ってしまい、対等以上の関係でビジネスをスタートするパターンは少なくありません。そして、大体どこかのタイミングで上手くいかなくなります。

 大企業であってもその結果は起こりえます。2輪のヒーローホンダの合併解消、TATAdocomoからのドコモ撤退など、理由は様々ですが日本を代表する企業でも起こりえるのです。スペースの都合で(1)~(3)は割愛します。

●人材を探す

 インド人を雇用する場合、まず対象となる人材を探す必要があります。人材の探し方はいくつかあります。

<人材の探し方>
(1)人材会社から紹介してもらう。
(2)知人の紹介。
(3)人材が居そうな場所で声をかける。
(4)他から引き抜く。
(5)新聞などの媒体で募集告知を出す。

 (1)は日本では一般的な手法だと思います。メリットは自身が探す労力を減らせる、特殊な技術や経験を持った人を見つけられる、最低限の条件はクリアした人材である可能性が高いといったところでしょうか。デメリットはやはりお金がかかることです。

 (2)はインドでは一般的な人材確保の方法です。結果として(4)の引き抜きになるケースもあります。なお、日本では人を紹介する時にある種の責任感が発生し、紹介された側も紹介者の顔に泥を塗らないよう最善を尽くそうとする関係性が生まれやすいのですが、インドではそれを期待しないでください。例えば、どの会社に勤めてもすぐに問題を起こして辞めてしまう親戚がいるとします。親族は「外国の会社なら続くのでは」と思って紹介したりすることもあります(笑)

 日本食レストランでは私達と顔立ちが似ている東インド出身の人達を雇う傾向が強いです。理由は親近感を持ちやすいのと、宗教的な肉食禁止が比較的緩く、出稼ぎのため都心部出身者よりも安い賃金で雇えるためです。そういう出稼ぎの人達は都心部でも同じ出身州同士で集まって生活しているエリアがあり、(3)のようにそこに行って求人をすると見つかりやすいです。

 (5)は掲示範囲を特定のエリアに限定できることもあり、事務所に近い場所に住む人を探す以外にも、例えば英語新聞に載せることで、英語を理解し、新聞を読む習慣を持つ人材に絞って求人をできるという絞り込みの効果もあります。

●面接をする

 Interview(インタビュー)というと、テレビなどでの著名人への会見のイメージが日本では強いですが、面接という意味です。

 面接でのポイントは仕事の内容や待遇面など、曖昧な部分を残さないようにしっかり説明することです。

<説明しておきたいこと>

  • 仕事の内容、ポジション
  • 給与額、交通費、ボーナスの有無、残業の考え方、計算方法
    特にボーナスはインドの祭事シーズンである、春のHoli(ホーリー)と秋のDiwali(ディワリ)の前に支給するのが
    一般的なので、
    支給しない場合は必ず事前説明が必要。
  • 給与等の支払い方法
    授受の履歴を確実に残すために銀行口座への振込やチェック支払いが一番だが、現金手渡しの場合も必ず受領サイン
    をもらうなどする。
  • 勤務場所、異動や転勤の可能性
  • 通勤方法(徒歩、メトロ、バス、電車、オートリキシャ、社用車、自家用車など)
  • 勤務時間、曜日、シフト
  • 休日、祝日のルール、有給ルール
    インドは州毎に宗教毎に祝日が違う。全てを採用していると毎週祝日があるような状況になってしまうため、インド
    の銀行や商工会などが発表している主要祝日カレンダーなどを採用し明確にしておく。
  • 解雇条件
  • 雇用期間、試用期間
    どんなに優秀そうな人材がいたとしても、管理職採用(成果報酬制)でない場合は試用期間を必ず設定してくださ
    い。6ヶ月ぐらいが一般的です。

 労働条件について、少し古い資料になりますが、インドの労働法について日本貿易振興機構(ジェトロ)が和訳したものがありますので紹介します。製造業であればFactories Act(工場法)、小売やサービス業ならLocal Shop and Establishments Act(=S&E法:各地域における店舗および施設法)で別れています。なお、S&E法は州によって違ってきますが、祝日や有給日数の考え方などが主な差異です。(https://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000147/india091208.pdf


 説明後に面接者に確認しておくべき事はどんなことでしょうか?
インド人からすれば当たり前のことですが、日本人からすると想像できないこともあります。それらを知ることで、仕事の割り振りやシフト、スケジュールなどを決めやすくなります。

<確認しておくべきポイント>

  • 説明した就労条件について変更はできないが問題はないか?
    人材の中には条件に問題がありながらも、お金目当てで最初は全て受け入れて採用を狙い、就労後に色々な理由を
    付けて条件を覆そうとする人がいます。
  • 家族が近くに住んでいるか、遠くに住んでいるか(出稼ぎか)?
    出稼ぎや家族が他州に住んでいる場合、日本の盆正月と同じように実家帰省が発生します。そして、その期間は日本
    よりも長く、1~2ヶ月という場合もあります。また、実家の知り合いの結婚式があれば、招集がか
    かりやはり長期
    で休むことになります。複数名を雇い、ローテーションできるなら良いですが、最初の1名だけ
    といった場合、業務
    がストップしてしまうリスクがあります。逆にそのリスクを承知の上で安い賃金で契約す
    るという方法もあります。
  • 結婚や出産した場合、仕事を続けられるか?
    インドの場合、女性は結婚したら仕事を辞めて、家事と育児に専念する慣習がまだ強く残っています。そのため優秀
    な人材が結婚や妊娠で急に退職するというリスクがあります。男性でも家族を養わなくてはいけなくなるため結婚を
    機に給与が高い会社に転職するパターンがあります。もちろん、実際にどうなるかはその時にならないと分かりませ
    んが、
    初めから結婚=退職という条件が分かっているのであれば、仕事の割り振りなども工夫ができます。
  • ベジタリアンか、ノンベジタリアン(肉食可)か、どんな肉が食べられるか?
    ベジタリアンの中には、私達が肉料理を近くで食べていて、その匂いで気分が悪くなる人もいます。また、ノンベジ
    タリアンでも、インドの場合は基本卵と鶏肉までという人が多く、宗教上の理由から牛や豚、魚などは食べられない
    もいて、例え洗った食器でも一度肉が触れたものは利用できないなどの制限を持っている場合もあります。
  • 家族の健康状態、病気の有無
    家族が病気になったり、怪我をしたりすると仕事よりも家族のケアを優先するため、家族に介護や通院に付き添いが
    必要な人がいると、出勤率が不安定になるリスクがあります。ただし、本人の病歴などは隠す傾向がありますので
    参考
    程度に。
  • こちらの話に耳を傾けているか?
    こちらの話を聞かず一方的に自分のことを話したり、こちらが尋ねたことと違うことを答えたり、誤魔化したりする
    人は
    例え知識や経験が豊富だったり、その話の内容が論理的であってもトラブルメーカーになる可能性があります。
    自分の英語
    に自信がなくても、会話が通じなかったり、こちらに合わせようとしないと感じたら、それは今の自分に
    とって合わない人材です。

●採用する

 面接が終わり、人材の中から誰を採用するか判断します。ただし、条件を満たす人材がいない場合、全員採用しないという判断も重要です。変に妥協して問題がある人材が社内に入ってきて、会社にマイナスを及ぼす可能はあるからです。

 採用条件が高すぎてまったく採用できないのも困りますが、どんな結果になろうとも後悔しないと思える人を採用しましょう。採用したら必ず説明した条件を全て含めた雇用契約書を2部作成し、両者がそれぞれにサインをして互いに保管するようにしましょう。書面に残すことで、後から「あの時はこう言っていた」というような相手を疑ったり、無駄な時間を過ごすことを避けられます。

●一緒に働く

 私が新しく入った社員と一緒に働く時に意識していることをいくつか書きます。これは国籍関係なくしていることです。

(1)イメージを合わせる
 同じインド人同士でも育った環境で価値観が大きく違う人達です。一方通行で話しているだけでは、自分も相手も分かったつもりになってしまいますので、相手の理解度も確認しつつ、お互いに意見や感想を述べながら、明確なイメージに収束させていきましょう。このイメージは最初に自分が思っていたものと違っていても構いません。

(2)ルールを作り、誰でも同じ結果になるようにする
 (1)で作ったイメージをルール化し、主観に頼った判断方法で仕事を進めず、客観的に判断できる基準を作ることは、組織が大きくなった時に非常に効率的になります。

(3)ルールを守らせる
 ルールを守る文化を作ることが、安定した業務を行うことの近道です。まずは自分が守ること、そして社員にも守ってもらうこと、ルールに従ったことによる良い結果を褒めてあげる。

(4)例外を作らず、新しいルールで対応する
 例外を作るとそこを足場にどんどん例外を拡張され、気付けばルールが崩壊しているということもあります。例外を作るのよりも、今までのルールで対応できない場合は、新しいルールを作って適用し、周知するようにしましょう。

(1)~(2)までは大体実施できるのですが、(3)~(4)がなかなかできなかったりします。それはトップである自分が例外と心の弱さからルールを守らないからです。
社員は私達のことを良く見ています。そこに誠実で正しい対応がされていなければ、不満にもなり、ルールが守れなくなる原因にもなります。そして、その時に社員だけを責めるのは負のスパイラルになります。

 また、日本と大きく違う環境だからこそ、日本人とインド人で差をつけることはあってもよいと思います。ですが、その理由をちゃんと説明して理解してもらう努力を怠ると、勘違いから悲しい結末になることもあることを忘れないようにしましょう。

●雑談

 1期、2期と合計12回のコラム掲載を通して、私自身インドに対する自分の知識や経験、考えを整理する良い機会になりました。そして、整理し切れていないことがまだまだあることに気付かされました。社員が育ってきたことで、インドから離れていても昔のような苦労をせずにビジネスは回るようになり、それによって新たなことにもチャレンジできるようになりました。

 日本人もインド人も仕事において変わらないなぁと思うことは、「給料がたくさん欲しい」「自分の望む(自分がすべき)仕事がしたい」「プライベート(家族)も大切にしたい」といった3点です。そして、日本人とインド人の違いは、どれかを実現するために他を我慢するか、我慢しないかという点です。

 私は社員にインドと日本の違いを話しながら、こう言っています。
「私達は日本人と、インド人の良いところを取って、(会社名の)クロスロード人になりましょう!」


 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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著者プロフィール

佐々木様写真

佐々木克仁(ささきかつひと)
Xroad Solutions Private Limited
Managing Director(代表取締役)

 

 

Xroad Solutions Private Limitedの代表取締役。インド駐在時代に人材事業、インド企業在籍中に教育事業に携わり、2012年5月にインドで会社を設立。インドの首都デリーで日本人の特に個人向けのサービスを提供している。ドライバー付きの運転手が一般的なインドでも自身で車を運転して移動するなど、日本視点だけでなく、インド視点からも出来事を分析し、より深い日印の相互理解を目指している。2014年10月より日本在住。

Facebook:https://www.facebook.com/sasaki0
ブログ:http://ch.nicovideo.jp/sasaki

 

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