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世界が注目するインドのスタートアップ

コラム「ITスタートアップを活用したグローバル企業の21世紀型インド進出戦略」vol.1

 世界が注目するインドのスタートアップ
 リブライト・パートナーズ
 石崎 弘典
 2016年5月10日   


 インドはもはや先進国にとって単なるITアウトソーシング先ではありません。豊富なIT人材に支えられ、多くのテクノロジーが生み出されており、新しいビジネスの潮流がインドでは出来上がっています。日本とインドの経済的な連携は年々強まっており、このトレンドはしばらく継続されることが予想される中、日本の企業にとっても従来の海外事業戦略の枠に留まらない新しいアプローチがインド市場に対して求められています。

 本連載では、世界が注目するインドのITスタートアップについての記載をさせて頂き、そしてグローバル企業がこれらのスタートアップといかに連携をしながらオープンイノベーションや新規市場開拓を実施しているかについて紹介したいと思います。

●豊富なIT・マネージメント人材によるインドIT市場におけるニュー・ウェーブ

 インドは市場全体が成長期にあり、世界中から投資が集まってきている状態です。2015年におけるGDP成長率は世界で唯一7.5%を上回り、中国経済の低迷に派生した東南アジアでの経済成長の鈍化などと比較すると目を見張るものがあります。

 そんな中でも、IT市場における投資流入金額の伸び率は突出していると言えます。従来、インドは米国企業を中心に外国のIT企業のアウトソース先として多くのソフトウェア業務を受注していることが知られていますが、近年は単なるアウトソースの受託に留まらず、インドローカルにおけるオリジナル技術の生成、また数多くの優良スタートアップが現地インド人によって設立されています。インドのITスタートアップが2016年に調達した資金は約90億米国ドル(約1兆800億円)にも達するとされ、これは日本の約7倍にも及びます。

 これらのITスタートアップ業界の躍進は、優秀なIT・マネージメント人材によって実現されています。著名スタートアップの多くはインド理系最難関と称されるインド工科大学出身者によって設立されており、早くからの英語教育、プログラミング教育の賜物から、突出したスキルを有する人材が多く存在しています。国全体を見ても、インドには600万人近い英語を話すプログラマーがいるとされ、今後あらゆるビジネスにITが組み込まれてくることを踏まえると、インド経済の更なる成長は確度が高いと言えるでしょう。

 また、備考にはなりますが、世界的に見てもインドのIT・マネージメント人材の活躍するところは留まるところを知りません。最近大きな話題となったソフトバンクの次期CEOとされるニケッシュ・アローラに加え、GoogleのCEOであるスンダル・ピチャイ、マイクロソフトのCEOであるサディア・ナガラなど、グローバル企業のトップにはインド工科大学出身者がひしめいている状況です。

●ITスタートアップを活用した21世紀型インド進出戦略

 現在、1,200社以上の日系企業がインドに進出していますが、多くの企業が苦戦を強いられている状況です。コスト競争力の厳しく商習慣の異なるビジネス現場、不透明な法制度、整備されていないインフラ環境など、従来の手法で事業を構築するだけでは攻略が難しい市場になっています。

 そこで21世紀の環境に即した、新たなインド進出の事業戦略を講じる必要が出てきています。新時代のインドの現状を踏まえ、成長する市場、現地の人材、地場の技術といった3つを囲い込む戦略を実行していくことが、今後ますます重要になってくるかと考えられます。インドが世界で最も新興する市場であることは先の通りですし、更にITやマネージメントの領域で突出した人材がインドには豊富に存在し、更にシステム関係を中心とした技術も非常に進んでいます。以上より、インドのITスタートアップとの提携、または彼らへの投資を通して、新しい事業スキームを構築していくことは可能になると考えます。

 もちろん、業種や会社の規模などによって必ずしもITスタートアップへの投資が効果的なものになるかは断言できないところですが、製造業を含む様々なモノのIT化が進む中で、IT要素がどの会社にとっても切り離せないものになることは間違いありません。

図3

 
 <21世紀型インド進出戦略>
 ①市場:世界で最も成長している新興市場
 ②人材:世界トップクラスのIT・マネージメント人材
 ③技術:ソフトウェアを中心に洗練されたテクノロジー

  …以上をITスタートアップとのビジネス(投資・提携)
  によって
実現していく三位一体型の戦略。

 

 既に、米国やドイツの企業を中心に、グローバル企業は上記のインド市場戦略、つまりITスタートアップへの投資を通しての事業構築を実施しています。IBMはインドにおいて100社にも達するといわれるスタートアップと事業提携を実施しており、Googleは米国以外で唯一インドにCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の独自オフィスを設置しています。その他、Ciscoは3桁億円規模の投資をインドのスタートアップ業界に今後実施していくことを発表し、既にエネルギーやIoT分野におけるスタートアップへ出資を行っています。ドイツの企業も、BoscheやSiemensを中心として製造業の大企業がインドには大変注視をしており、積極的に現地スタートアップに提携や投資を実施しています。

 本連載では次回以降、IoTやヘルスケアなどの事業セクターにおけるグローバル企業とインドITスタートアップの連携事例をピックアップし、具体的な提携・投資のスキームなどについて記載しながら、日本企業へ向けて新しいインド市場戦略のエッセンスを紹介していきます。

 

●最後に、インド市場でこそスタートアップが注目される理由

 既に記載させてもらった通り、新興国では法規制から道路まであらゆるインフラが未整備であることから、外国企業はこのインフラ不足を避けるような事業戦略を取ってきました。しかし、ハーバード・ビジネススクール教授のTarun Khana氏によると、新興市場ではインフラ不足にこそ新しいビジネスチャンスが存在するとも主張されており、そういった「制度の隙間」を埋めるビジネスモデルを駆使して新たな市場を創造していくスタイルが強く奨励されていると言えます。まさに、インドのスタートアップのビジネスモデルはこういった課題を解決するためものが多く、彼らとの共同事業を敢行していく中で、こうした社会インフラの新たな構築を実現し、しかるべき価値を生み出していくことが可能になります。

 グローバル企業のビジネスリソースと現地のスタートアップが連携することで、経済的な価値のみならず、社会的な基盤創造され、そこにこそ大きな意義があると言えるでしょう。

 
 <リブライト・パートナーズ>

 シンガポールを拠点にインド、東南アジアのスタートアップへ投資をするベンチャー・キャピタル。
 日本のIT系上場企業を中心に出資を受け、単なるアジアのベンチャー投資に収まらず、日系企業の
 アジア進出のためのゲートウェイファンドとして、各種市場・企業調査から、日系企業との共同
 投資の実施、更にはM&A実行支援まで幅広い業務を提供する。近年は、政府機関や各種経済連盟
 などとも連携をし、インド投資促進のためのプロジェクトにも従事している。

 URL:http://rebrightpartners.com

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著者プロフィール

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石崎 弘典(いしざき ひろのり)
リブライト・パートナーズ
Senior Analyst

 


東京大学文学部フランス語フランス文学専修卒業、米国公認会計士試験合格。 在学中は休学して、パリ大学ソルボンヌに留学、音楽を中心にフランス文化を学ぶ。 2013年からインドの大手会計事務所に勤務し、日系ほか外資企業のインド市場進出支援を、税務・法務・財務の観点から支援。2014年度西インド地域の政府系機関専属アドバイザーも歴任。インドビジネスに関する知識を活かし、メガバンクなど(みずほ、政策投資銀行)が発行するビジネスジャーナルへの寄稿、また政府系機関(JETRO)や外資系銀行(HSBC)などが主催するセミナーへもスピーカーとして登壇。

9月よりシンガポールベースのベンチャーキャピタルRebright Partnersに入社し、インドを中心にアジアのスタートアップスタートアップへ投資を実施。

  

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