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インドIT産業と技術者

コラム「インド拠点におけるITインフラの構築と活用」vol.1

 インドIT産業と技術者
 Sanzo Infotech India Private Limited, Managing Director
 山田 則光
 2016年5月17日   


 私は2010年にインドの首都であるニューデリー市で会社を設立し、在インドの日系企業様向けにTally等のERP(業務システム)を導入する仕事に従事しています。

 このたび記事を掲載する機会を頂戴しましたので、インド既進出企業の駐在員様、またはこれから進出を検討されている本社担当者様が、インド拠点のIT活用を考えるうえで役立つであろうポイントをお伝えいたします。オフショア開発拠点としてインドをどう活用するかといった話ではなく、インドでビジネスをする上で現地法人を運営していく際のITですので、その点あらかじめご了承ください。その本題に入る前に、まず第一回でインドのIT事情をお伝えした後、第二回以降でITインフラおよび業務システムの解説を進めていく予定です。

 さて、この記事をお読みの皆さんは「インドはIT大国」と思われていませんか。しかしながら、筆者の見立てからいえば、それは同地の実情からすれば大きなずれを伴っています。なぜならインド国内のITをとりまく環境は日本と比べて偏在性が高く、押しなべてIT大国と呼ぶには無理があるからです。今回は業界と技術者の両面における偏りについて説明します。

 まず産業界全般においては、システム化はもちろんのこと、先行して行われるべき直接業務の機械化そのものがまだまだこれからといった状況にあります。それは人件費の低さに基づく、人手に頼った業務が一般的だからです。とはいえ、一部の分野ではシステムの導入が進んでいて、民間では銀行、航空会社、通信会社といった設備投資の大きいサービス業が、政府部門では納税(さすが!)と税務申告が挙げられます。

 航空会社のサイトにおけるエアチケットの予約・支払は、日本を含め世界どこへ行っても大差ないと思いますが、ネットバンキングとデビットカードを軸にした決済、さらに携帯電話のSMS通知への連動などは非常によく出来ています。

 納税に関しては、直接税の源泉徴収や間接税の納付ともにネットバンキングで支払ができ、申告もWeb上のシステムで行われますので、活用という点では日本のe-Taxよりも進んでいると思います。

 上記の民間業界でIT投資が進む背景にはいくつかの要因があります。
・システム化が直接的に競争優位へつながる。
・末端の従業員の流動性が高く、仕事ぶりも低水準なため、型に嵌めなければならない。
・民営企業として様々な方法で資金が集められ、IT投資資金がある。

 ところが、システム化の進んだ業種であっても、唯一残念なのは実際に店舗に足を運ばなければならない各種手続きです。店員の働きぶりや提出する書類には、利用者としてうんざりすることしきりです。もっとも後者は政府の指導も影響しているので、一概に企業の責任にはできませんが。

 それから、新しい流れとしては、近年ネット通販のFlipkartや配車サイトのOla、ホテル予約サイトのOyo、不動産売買賃貸情報のHousing.comなど、新興ネット企業が存在感を高めています。彼らは海外で流行っているビジネスモデルを持ち込んで、既存業者と対立しあるいは巻き込みながら、利用者を増やしています。この分野には日本のソフトバンク社も盛んに投資しているので、ご存知の方も多いでしょう。投資拡大のおかげで人材の流入も過熱気味になっており、弊社のような地味な裏方仕事では採用に困ってしまいます。冒頭で国内ITはまだまだと申しましたが、このようなインターネットビジネスの普及や経済規模全体の拡大、人件費の高騰とともにIT普及は進むはずです。

 

 次に技術者ですが、能力的にもピンキリで、彼らには失礼ながら、筆者は以下のように一軍から三軍までを分けて考えています。

 一軍は海外に行っている、もしくは海外企業向けのビジネスに携わっている人たちです。会社としてはTCS(Tata Consultancy Services)やインフォシスなどの最大手IT企業、外国企業のソフトウェア開発子会社などが当たります。日本のみなさんが目にして、あるいは伝え聞いて「優秀」と言われているのは、おおかたこの方たちと思います。それは巨大な人口のなかでも学歴的、能力的にトップクラスですから、当たり前でしょう。また言うまでもなく海外案件は金額が大きく、したがって給与も高いです。

 次に二軍ですが、国内の大手企業や外資企業向けに仕事をしている人たちです。彼らは何らか仕事の型を持っていて、たとえば営業がネクタイを着用し、プロジェクトマネジャーはMOM(議事録)を書いたりします。ただし、海外案件と比べてコスト的に厳しく、個別案件それぞれに手間をかけられないので、状況を踏まえて応用することや、きめ細かい対応は期待しにくいです。したがって大企業の場合は、他所に頼みたくないので自らの企業グループ内にシステム子会社を抱えつつ、外販活動をすることもあります。

 そして三軍は、地場中小企業向けの仕事をしている人たちです。簡単にいえば技術屋のあんちゃん、個人事業主たちですが、彼らがやっているのは作業であって、プロの仕事とは言い難い印象を持ちます。つまり基本的には受け身のスタイルをとり、言われたことに対して知りうる範囲で操作するだけだからです。相手に分かるような説明や適切な提案はできませんので、依頼する側において状況を把握し、1から10まで細かい指示を出す能力が求められます。ただし、提示してくるサービス単価は非常に安いです(それでも肉体労働者と比べるとはるかに差があります)。

 日本からインドへ来られている駐在員の方々は、ときに三軍クラスの技術者に会われて、驚かれるようですが、このような実情をご理解いただければと思います。なお弊社の場合、三軍をなんとか二軍に引き上げ、お客様現地法人の予算に合わせて仕事をしている、といったところです。

 

 以上がインドのIT概況です。次回以降は、現地拠点にITインフラを構築するケースを述べていきます。

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著者プロフィール


山田 則光(やまだ のりみつ)
Sanzo Infotech India Private Limited
Managing Director(代表取締役)

日本の情報システム会社にてプログラマーと経営企画を経験した後、経済成長するアジアに興味を持ち、海外の日系企業に転職する。中国・上海市、ベトナム・ホーチミン市にて日系企業向けシステム導入業務に携わる。ベトナム在勤中に、インドでは業務システムについて相談する相手もなく困っているとの話を聞き、現地行きを決意。2010年2月にSanzo Infotech India Private Limitedをインド・ニューデリーに設立、同社代表取締役に就任。インド独自のERPソフトであるTallyの導入、SAPやMSなどのグローバルERP導入を行う。

URL:http://www.sanzoinfotech.in/

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