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【経済】外資系企業のインド市場進出:製品の現地化と現地文化への適応がポイント

  • Kellogg社のインド進出の失敗と成功
    Kellogg社は1994年、インドに完全子会社を設立し市場に参入したが、同社は当時「郷に入れば郷に従え」の重要性を十分認識していなかった。 Kellogg社は、健康食品として栄養価の高さを強調し、インドの朝食が健康的でないというメッセージを広告で打ち出したところ、インドの伝統的な朝食を作り続けてきた主婦にとって衝撃的なメッセージとして受け止められインドの家庭に大きな影響を与えた。その結果、同社の1995年4月の売上は、前月比25%減少した。いくら健康食品として栄養価の高さを強調しても、当時のインドの消費者は冷たい牛乳と共にシリアルを食べることに興味を示さなかった。

    同社はマーケティング調査を行った結果、シリアルを買う金銭的余裕がある大部分の家庭では、朝食では温かい牛乳が好まれており、冷たい牛乳にシリアルを混ぜて食べることに抵抗があったことがわかった。

    Kellogg社は市場展開の過ちに気付き、インド独自のブランド構築に向けて手を打ち始めた。

    同社は多くの消費者の需要を満たすために様々なサイズの製品を揃えた。インド消費者の金銭感覚を踏まえ小型パック10ルピーで発売し、ハリウッドを好む消費者向けに映画「スパイダーマン2」とタイアップした製品を発売した。新製品を展開する際に、“Iron Shakti”、“Calcium Shakti”等のヒンディー語も使用することで、よりインド現地のローカル色を強めた。

    また女性層への浸透を図るために新製品“Special K”を発売し、ボリウッド女優Lara Dutta氏を起用することで同製品ブランドのスリムなイメージを打ち出した。

    このような様々な施策を通じて、同社は“おいしく栄養価の高い食品“としてのポジションを再び位置付け、甘い製品を導入することでインド向け製品を拡大した。

    “Kellogg Health Week”等のイベントや、学校や主婦層向けの無料サンプル配布等のプロモーション活動も進めた結果、Kellogg社は2011年のシリアル市場でシェア60%を獲得するに至った。

    同社は更なるブランド構築に向け、自社を“社会的責任のある市民”として認識し、材料のリサイクルやリユースを積極的に取り入れた。また地域社会に向けても、健康・人的サービスが行き届くように配置しており、全ての活動がインド市場向けにカスタマイズされている。

    マーケティング・広告企業Aidem Ventures社のブランドマネージャーであるAmit Bhalla氏は、ブランドマーケティングにパラダイムシフトが起きていると見ている。「消費者は従来のような方法よりもネット情報に注目している」(同氏)といい、製品の品質だけでなく、企業の方針や倫理、生産プロセス等のより詳細な情報を求めていると考えている。

 

  • 消費者が購入可能な価格設定 ~携帯電話市場
    インド食品業界だけではなく、インド市場で展開するためには提供する製品価格も重要だ。

    インドの携帯電話市場ではiPhone発売を期待する声が高かったが、発売当初の価格は35,000ルピーを超えており、多くの消費者には手が届かないほど高価格であった。iPhoneは想定顧客として経済的にゆとりのある消費者を対象にしていたものの価格設定に失敗し、市場規模の大きいインド・スマートフォン製品分野において現地の消費者の応える形だとは言い切れない状態だ。

    2013年4月、Apple社は古いスマートフォンを引き取る代わりにiPhone4を割引き販売したところ、わずか5日間で3倍もの販売台数を記録した。インド小売業者の中では、同社のこの施策について、まだ使用可能な中古の携帯電話を確保するための作戦だと見る向きもある。いずれにしろiPhone4は現在、Sumsung社のGalaxy Grand、Note IIと共に販売トップ3に入っている。

 

  • インド風土・文化に根ざした製品開発 ~(1)携帯電話市場
    インドで展開する携帯電話メーカー各社は、製品価格の他にもインド独自の製品開発を進めている。

    携帯電話会社Nokia社は、インドで大量の砂埃から携帯電話の損傷を防ぐために、インド市場向けに特別な防塵キーパッドを提供している。

    ソニーモバイルコミュニケーション社は、2013年3月にXperiaを発売したが、同社で初めて防水・防塵・傷がつきにくい製品を開発・提供している。また、同社の新型スマートフォンXperia Zは、水中下でも最長30分稼働できる。シャワー中の使用や遊びで水中に入れることが可能だ。

    インド市場で展開するグローバル企業の中には、世界的名統一規格を行わずにインド独自の製品開発を行う企業もある。 全世界統一で事業を展開していたマクドナルドも、インド人の味覚や食文化に対応しマーケティング戦略を適応しなければならなかった。地域の文化に合わせることで、インドはマクドナルドで初めて牛肉や豚肉を使用しない国となった。同社は羊肉や鶏肉を使用した商品を販売しているが、インド食文化に対応し “Maharaja Mac”、“Veggie McNuggets”といった商品を開発し市場に投入した。新商品“Masala Grill Burger”は幅広くインド人の味覚に対応するように開発された。

  • インド風土・文化に根ざした製品開発 ~(2)外食市場
    マクドナルドのインド西部・南部のフランチャイズ企業であるHardcastle Restaurants社Senior Director (Menu Management and Marketing) のRameet Arora氏は「香料の特別なブレンドとスパイスの効いたパティは、インドのケバブとスパイシーなソースに共通するものがある。インド向けのバーガーに使用される、典型的なインドのハーブの風味もする」と語る。なお同社では品質保証テストや消費者テストなど18ヶ月に及ぶ製品開発の後に市場に提供されているという。

    また各販売店舗でもベジタリアンの文化に対応するためにオペレーションの再構築も進めてきている。
    インド市場の消費者と強くつながるため、製品ブランドの再構築も行う企業もある。

  • インド風土・文化に根ざした製品開発 ~(3)食品市場
    世界5大陸全てに進出しているDanone社は、1992年にインドのコングロマリットWadiaグループと提携してインド市場に進出したが、インドで提供するブランドの知的財産権について対立し、2009年にWadiaグループとの関係が解消した。その後Danone社はインド市場でカード(凝乳)とフレーバーヨーグルトに注力すると決定した。

    同社は4つの事業、チルド乳製品・乳幼児向け食品・飲料水・医療用栄養食を通じて、健康食品事業を展開している。Danone Food and Beverages India社のゼネラルマネージャー、Jochen Ebert氏は「ダノンの使命は、食品を通じて健康をもたらすことだ」と語り、同社は天然成分を用いた食品とブランドの再構築を進めている。

    同社が展開する製品は凝乳やフレーバーヨーグルト、ラッシー、牛乳などであり、価格設定もインド人にとって手の届く価格帯だ。製品は主にインドの主要都市、ムンバイ・プネー・バンガロール・ハイデラバード・デリー首都圏に展開し、ハリヤナ州Rai(Sonepat)に新たな設備も設立している。

 

  • 外資系企業がインド市場に参入するにあたり、世界各地で展開しているグローバル企業とはいえ、インド市場独自の製品開発や消費者の手が届かない価格設定を行わない場合は、インド市場で成功することは大変難しい。インド市場に参入する際には、これまで成功した既存市場と差異があることを認識し、インド現地の独特な文化を取り混ぜた製品開発や販売施策を検討することが必要になると思われる。

 

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